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10.ゴブリンさんありがとう

俺は再びゴードンさんに小さなナイフを借りると、ゴブリンの胸を開き中から魔石を取り出した。


自分で倒したゴブリンからも魔石を取り出す。


胸を開かれたゴブリンの目からは生気が失われており否が応にも自分が一つの命を奪ったのだと思ってしまう。


だが、これから先冒険者として活動していくためにはこれは避けては通れない。


俺はゴブリンに感謝しながら魔石を革袋の中にしまった。



「よし、じゃあどんどん繰り返すぞ。

繰り返し倒して慣れるんだ。

それが強くなるための一番の近道だ。」


ゴードンさんはそう言うと次のゴブリンを探し始めた。



その後も何度かゴブリンとの戦闘を行った。


俺が相手をするのはゴードンさんが残した1匹だけであったが、それでもスライムと戦うときよりも数倍は疲れるように感じた。



「よし、今日はこの辺で終わりだ。

ギルドに帰ろう。」


「はい。」


お昼を少し過ぎた頃だろうか。


俺たちは狩りを終えて街に戻った。


戻る途中で俺はゴードンさんに気になっていたことを聞いてみた。

「ゴードンさん、魔石を抜いたゴブリンはあのまま放置していて大丈夫なんですか?」


「ああ、ゴブリンなら大丈夫だ。

あいつらは常に飢えているうえに雑食だから自分たちの同種であろうと死んでいれば食ってしまう。

そうやって数を増やしているんだ。」


他のモンスターでは処理の方法が違うそうだが、ゴブリンの死骸は基本的に放置されるのだそうだ。


それからスライムも基本的には放置らしい。

スライムの身体は大部分が水分であり、そのうち勝手に消えてしまうらしい。


他のモンスターも中には埋めたり焼いたりする処理が必要になる場合があるが、多くは素材としての価値があるためそのまま持って帰るらしい。


ゴブリンはあまり素材としての利用価値がないというのも理由の一つだそうだ。



街に帰ると、そのままギルドに向かった。


「よし、んじゃあ魔石を売ってこい。」


「はい。」


俺は今日取ったゴブリンの魔石、計5個とスライムの魔石を受付で提出した。


ゴブリンの魔石は1個銅貨3枚。

合わせて銀貨2枚を手に入れた。


スライムと比べてもそれほど多くなってはいないが、それでも成長した気がして嬉しかった。



「今日もありがとうございました。」


「おう、しっかりと体を休めておけよ。

明日もまた森に入るからな。」


ゴードンさんはそう言ってカウンターの中に入っていった。



緊張から解放されたせいか急におなかがすいてきた。


俺はギルドに併設された食堂で、冒険者向けの大盛のランチを平らげてから宿に戻った。


宿に入る前に井戸で汗を流した。

ゴードンさんに『浄化』できれいにしてもらっていたが、やはり気分的な問題で、水を浴びると気持ちがいい。


それから部屋に入ってしばし休憩をした。


目が覚めるとすでに日が傾き始めていた。


夜ご飯まではもう少し時間がありそうだったので、ストレッチをしたり、足をマッサージしたりして過ごした。


夜ご飯もしっかりと食べ、腹ごなしに訓練所で軽く汗を流した。



宿に戻って寝る前に『ステータス』を見てみる。



セイタ

年齢:20

レベル:4

恩恵:異世界の才能

スキル:剣術レベル1


レベルが上がっている。

やはりゴブリンはスライムよりも経験値が多いのだろうか。


まあ経験値が固定で入っているのか、同じモンスターでも何度も戦うと少なくなってしまうのかは分からないが、ここは素直に以前よりも成長したのだと喜んでおこう。



今日は中々しんどかったが、同時に成長することもできた。


少しではあるが自分がこの世界で冒険者としてやっていく自信もついた。


この先もどこかで悩むことがあるかもしれないが、それがこの世界でセイタが成長していくために必要なことなんだろう。


そんなことを考えているうちにいつしか眠っていた。



次の日からもゴードンさんと森に入りゴブリン討伐に勤しんだ。


決してゴブリンの命を蔑ろにしているわけではないが、だんだんと命をいただくという行為にも折り合いをつけられるようになった。


何も感じないわけではないが、最初の頃のように気が動転するようなことはなかった。


それからゴードンさんが一緒に行動できないときには、一人でスライム討伐を行った。


一応はゴブリンを狩れるようにはなったが、森には決して一人では近付かなかった。


俺が勝てるのは1匹になったゴブリンであるし、森の歩き方もまだままならない。


そんな状態で森に突っ込めるほどの無鉄砲さはあいにく親から譲られていなかった。


それでも調子のいいときには銀貨4枚を収入として得られた。


ギルド直営宿以外では生活できないが、今の宿であれば少しずつ余裕ができるようになった。


ゴブリンとの戦闘にも少し慣れてきた。


初めは1匹のみを相手にしていたが、1匹目の首に一撃を決めれるようになってからは2匹を相手にすることもあった。


ただ、その場合はもしも1匹目を一撃で仕留められなかった時のために近くにゴードンさんが控えているのだが。


それでも少しずつ自分が成長していることを感じることができ、それがさらに頑張るモチベーションになっていた。


そんな暮らしを続けて早一か月。


ちなみに今のステータスはこんな感じだ。


__

セイタ

年齢:20

レベル:4→8

恩恵:異世界の才能

スキル:剣術 レベル1→2

__


レベルが上がり、剣術のレベルも上がった。

そろそろ他のスキルも見てみたいが、何か練習してみるべきだろうか。



今日は一度もゴードンさんの手を借りずにゴブリンの討伐を終えることができた。


4匹の群れが出てきたときには少し焦ったが、それでも一匹づつ確実に倒すことで乗り切ることができた。


これは剣に慣れてきてしっかりと首を狙えるようになったことが大きいのだと思う。


ゴブリンの弱点はやはりその細い首であり、ゴードンさんのように刎ねることは出来なくても、強い力で一撃を加えることで無力化することができる。


それにゴブリンはほとんどの場合攻撃方法が単調であるため動きを読みやすいということも要因であるだろう。



「よし、これでゴブリンは大丈夫そうだな。

呑み込みも早いし、よく考えて行動で来ている。

このままオークに向けて頑張ってくれよ。」


「はい。ありがとうございます。」


今日も訓練は午前中で終わり、ギルドに帰ってきた。


今日の収入はゴブリンの魔石15個で銀貨4枚と銅貨5枚。


ゴードンさんはお昼からはギルドで仕事があるそうなので、俺は午後は一人で行動することになる。


昼からはどうしようか。


一人でスライムを倒しに行くか、それとも訓練所で自主練習をするか。


とはいえ、スライムを倒すのも単調な作業になっては意味がないし、訓練所でただ素振りをするというのも芸がないように思う。


そんなことを考えているとゴードンさんがやってきた。


「おい、セイタ。

これ渡してやるから、ちょっとスライム相手にでも練習しとけ。」


そう言って渡されたのは金属製の盾であった。


「もう少しゴブリンに慣れたら次はオークになる。

オークの攻撃は直撃すると危ないからな。

それに備えて練習しとけ。

持ち方なんかは簡単に教えてやる。」


そう言ってゴードンさんは盾の持ち方を教えてくれた。


「あとはモンスターを相手にして慣れろ。

といっても相手はスライムにしとけ。」


「はい。わかりました。」


俺はゴードンさんにお礼を言うと剣と盾を持って再び街の外に向かった。


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