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マイナス同士は惹かれ合う  作者: 斑目紫音
第3章 日は常にノボリクダリを繰り返す
28/33

第23.5話 ideal

今回は、アキノと呼ばれるキャラクターの物語です。

(第三章とはあまり関係がありませんので、ご了承ください。)

 ……アイツが何を考えてるか、俺はわからない。


 アイツだけじゃない。人間は何を考えて生きているんだ?


 毎日死にそうな顔をしたヤツは、何故死なないんだ?


 何故アイツはあの女の言うことを聞いているんだ。


 ……アイツに聞くのが一番手っ取り早いのだが、人間に干渉しすぎるなと言われている以上俺は何もできない。


 やはりすべての原因は、人間の『感情』によるものなのだろうか。


 俺が存在している理由も、人間の謎の力も。


 ……仮にそうだとしたら俺はいったい何なんだ。



 わからない…………()()()()()()()()()()()()()


 *


 俺が最初に見たのは地獄だった。


 視界の中がすべてが炎に包まれていて、あちこちから聞こえる悲鳴や子どもが泣く声。



 あれが恐怖という感情なのだろうか。


 ただ、見ていることしかできなかった。


 そもそも動くということができなかった。



 目を閉じ、耳をふさぐ。

 瞳から紅い色が消えるまで。声が聞こえなくなるまで。




 その後、そんな地獄を見たことを誰かに伝えるため俺はやっと動いた。

 でも誰もいないし、焼け落ちた後もない。


 見えるのは薄っすらと見える影。


 人かどうかすらわからない。


 ……でも、それでも。


 人であることに賭けて、声をかける。


「……おい」


 影は動きを止め、こちらに近づいてくる。



「貴方は、誰?」


 近くには来たが、姿は見えない。




「……わからない。 そういうお前は誰だ?」




「私は名前はアイディアル。全てを知る者といわれている」


 自己紹介なんてどうでもいい。

 俺はあの光景を誰かに伝えるために……!



「し、信じてもらえないだろうけどよ、俺は地獄を見たんだ」



「知っています。私は全てを知る者。貴方が聞いた声も、その見た光景がその後どうなったかも知っていますから」


 影の中からは碧い本を持った真っ白な人物が出てきた。

 その姿はどこかの姫かと疑うほどである。


「じゃああの光景は、いったいどうなったんだ?」




「……見ますか?」


「…………もちろん」


 するとアイディアルは碧い本を開き、いくつか(ページ)をめくりピンクの景色が広がっ光景を見せた。



 ……その光景を見て、言葉を失った。

 あの地獄のようだった場所がこんなに美しくなるなんて……。


「……人間はすごいですよね。

 あんなに焼け落ちた所からこんなに美しくするなんて」


「……わからない、まったくわからない。

 なんであんな地獄をここまで……」



「クスッ、貴方は何もわからないんですね」


 彼女は碧い本を閉じ、笑う。


「……悪いか」


「いえ、全然。

 私でも知らないこともあるんですね」


「あぁ? 何が分からないんだ?」



()()()()()()()()


 アイディアルは少し悔しそうな顔をしている。

 全てを知るって言ってるのにわからないことがあるんだもんな……。


「俺のこと? たしかに俺は名前もわからないが……」


「なら、名前をつけましょう! そして、いろんなことを知っていけばいいじゃないですか」


「そういうものなのか……?」



「……ジョンはどうです?」


「ジョン……。由来は?」


Jonh.doe(ジョン・ドゥ)。人間が身元不明の人物に使う名前です。」


「身元不明……ね」


 正直、俺がなにかもわからない。

 だから、名前としては大体はあってるんだろう。


「あんたはそう呼んでくれ。

 人によって呼び方は変えてもらうさ」


「そうですか……私も通称みたいなものだから別にいいですが」


 そう言うと、アイディアルは悩んだ表情でこちらを見てきた。


「……何? 俺の顔になんかついてるのか?」


「いえ。 ジョンの未来を見ていただけなのですが……」


「そうかよ。 で、どんな未来だった?」


「内緒」


「チッ、ケチだな、あんたは」


時間の逆説(タイムパラドックス)が起きちゃいますから」


「なるほど。 そりゃ仕方ないか」


「……でも、私についてくれば、未来は変わるかもしれません」


 アイディアルは俺の手を取り、そういった。



そして、今の俺はアイツの身体の中に住み着いているということだ。


アイディアルにやれといわれたからやったが、正直この行動の意味も分からない。


『干渉しすぎるのも良くない』


なんだそれ。


……まったく、この世界はわからないことだらけで困る。
















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