第20話 夕凪夏葵は突然に
第3章始まりました。また、よろしくお願いします。
梅雨のシーズンはとっくに過ぎて、一学期の終わりが近づいてきた。
つまり、テストがあるということだ。
テスト自体に何か問題があるという訳では無いのだが……
「え? なんでこの答えになるん? あきのん、ヘルプ!」
彼女の名前は夕凪夏葵。
中学がたまたま同じの同級生である。
現在時刻は16時を過ぎたばかり。
教室にいるのは僕と夕凪だけ。
……このテスト、夕凪の赤点回避が大変なのである。
「……ちゃんと授業聞いてた?」
「もちもちのお餅! 夢の中でだけどね!!」
こいつがなんでこの学校に入学できたのか不思議だ。
なに? 裏口から入ってきたとかそんな感じ?
「バカ野郎、このままだと楓と一緒の学年になる可能性だってあるんだけど!?」
「アハッ! それもありかもね〜!」
……冗談なのか本気なのか分からないから恐ろしい。
「とりあえず、暗記科目やっといて。量をこなせば力になるはずだから」
「オッケー! あっ、扇町呼んどくね〜」
「了解。じゃ、ちょっとロッカーに教科書取ってくるから」
「ほいほーいっ」
夕凪は黙々と参考までに配られたテスト対策用紙(生物)を解き始めた。
*
現在時刻は17時前。そろそろ日が暮れる頃だ。
空には、まだまだがんばれると言わんばかりの太陽。
教室には、もう無理だと疲れ果てる夕凪。
……いや、逆だろ。
「だぁぁ〜もう疲れたぁぁぁ! 扇町まだ来ないのぉぉ!?」
静寂の中、ただ一人夕凪の声だけが響く。
もうすぐ彼は来る。
そう僕の中の僕が伝えている。
……あっそれ、アキノだ。てか、最近アキノと話してないな。
「わりぃ、遅れた!」
勘(?)は見事に的中。それと同時に夕凪が声がする方を見る。
教室のドアをガラガラと開き、息を切らせたヒーローの登場だ。
彼の名前は扇町 一夏。
小中高が同じのレジェンド・幼なじみ。
面倒見が良く、ルックス良し、成績良し。
もはや僕達のオカンと言っても過言でなはい。
「部活……はテスト前だから休みか。そしたらなんで遅れたんだ?」
問題集を解くペンを置き、一夏の方をみる。
すると、2冊のノートを持っていた。
「……例のアレだ。」
「あぁ、例のアレか。」 「うげぇ!? またアレやるの!?」
中学の頃からしていたいつも通りに、絶望する声と確信した声が入り混じった。
「扇町特製! テスト前対策ノートだっ!!」
こう言うと、一夏は僕と夕凪にノートを渡した。
1ページ目を開くと、目次が書いてある。
1〜6 第1回用テスト対策
「相変わらず凄いな、これ。」
「今後も使うから、テストが終わったら返してくれよな」
100点満点の笑顔で一夏は笑う。
「嫌だぁぁぁ……帰りたいよぉぉぉ……」
……それに対して100点満点の絶望した顔の夕凪。
「大丈夫。わからない所は俺が教えるからさ。 な?」
「あっ、僕も聞いてもいい?」
なんかムードをぶち壊したような気がしたが、気のせいだろう。
「オッケー。分からなくなったら聞いてくれ!」
その後、一夏が夕凪に教えることを苦戦したのは言うまでもない。




