第8話 在りし日の唐菖蒲の物語
斑目です。
今回は病院で眠っている楓のお話です。
彼女が眠っている間、彼女は一体何をしていたのでしょうか。
(…ここは……どこ…?)
周辺を見渡すとそこはどこか見覚えがある場所だった。
(…とりあえず誰かに聞いてみないと…!)
「あ、あの、私、秋野楓って言います。実は今、ちょっと迷子で…。ここらへんってどこだかわかります?」
通行人に話しかけるが、反応がない。まるで私が見えていない無い様子だ。
(…どうしよう…。そうだっ! スマホで現在位置を調べれば…!!)
急いでポケットに入ったスマホを取り出す。
何度も電源ボタンを押すが、反応がない。
(…なんで!なんで反応しないの!?)
全てに絶望した時、目に涙が溢れてきた。
(私は…どうしたらいいの…。助けてよ、お兄ちゃん…。)
全てを諦め、少し休息をとるために公園に向かおうとした時だった。
「…おねーちゃんは……なんでないてるの?」
「…え…?君には、わ、私が見えるの…?」
―――そこには、幼い少年の姿があった。
「ぼくのなまえは、あきのもみじ。こまったひとをたすけるせいぎのヒーローだよ!」
(…今、秋野椛って…!?)
椛という名を聞いて確信した。
(ここは私の過去の記憶の中。でも、なんで私が見えているの…?)
「…おねーちゃんどうかしたの?」
「ううん。なんでもないの。まさか正義のヒーローさんに会えるなんて思ってなかったから、びっくりしちゃって!」
(正義のヒーロー…か。お兄ちゃんらしいや…。)
「へへーん。こまったことがあったらぼくがかいけつしてあげる!!」
幼い椛は太陽よりも眩しいくらいの笑顔でこう言った。
「そっ、か〜。それはすごく頼もしいや。さすが正義のヒーローだね!」
その笑顔につられていつのまにか溢れていた涙も止まっていた。
「おにいちゃーーん!!かってにどこかにいったらだめなんだよーー!!」
と、叫びながらこちらに近づいてくる少女がいる。
多分。この子が昔の私なのだろう。
「はぁ…はぁ…さがしたよ、おにいちゃん…。」
必死だったのだろうか、息切れが激しい様子だ。
姿は幼く、とても可憐な少女だ。これが私だったとは思えない。
「ごめんな〜かえで。でも、ないてるひとがいたらたすけるしかないだろ?」
「はぁ…。まったく、おにいちゃんらしいや…。」
少女は大きなため息をつく。
(昔の私はこんな子だったんだ…。)
「はじめまして。わたしは、あきのかえでです。おねーちゃんのおなまえは?」
「わっ、私!?私は…私は春田雪子!!」
…嘘をつく気は全くなかった。でも、仕方がなかった。今同じ名前で名乗ると不思議に思われるから…。
「ゆきこおねーちゃん!うんっ。いいおなまえ!!」
ニッコリと笑顔でこちらを見ている。
(明るく元気な性格。まるで向日葵だ。)
「ありがとう。楓ちゃんも可愛い名前だね。椛くんもっ!」
「べ、べつにぼくは…かわいくなんか、ないよ!」
「あっ、おにーちゃん、てれてるー!」
「てっ、てれてない!」
椛は顔を赤らめている。
(か、可愛い…。)
「って、そうだおにいちゃん、そろそろおばあちゃんのおうちにかえらないと!」
「パパとママ、きょうからふたりでしんこうりょこうだもんね。うらやましいよねー」
「そうだねー」
(…旅行…?っ!!まさかその旅行って!?)
「ね、ねぇ、今日って何日だっけ?」
まさかと思って念の為日付を聞いてみたが…。
「きょうはねー。しがつのよっかだよ!」
(旅客機の事故は確か……。4月7日…!!)
…なんてこった。このあとこの子達にとって最悪の出来事が……。
「じゃあ、ぼくたちそろそろいくね。またあそぼうね!ゆきこおねーちゃん!」
「待って!!わ、私もおばあちゃんの家に連れて行って欲しいの!」
…夢でもいいから、少しでもこの子達の力になりたい。そばにいてあげたい。
ーーーーそして、私自身を救いたい。
こんにちは。
さて、いきなり解説から入るのですが今回のタイトルにある唐菖蒲という花を選んだ理由から。
唐菖蒲はグラジオラスの別名で、花言葉は【記憶】。
つまり楓の記憶の中の物語なんです。
もちろん次回もつづきます。
お楽しみに。
追加で書くのですが、新キャラの件です。
えーっと、新キャラは多分2話後?になると思います。ほんとにごめんなさい!!




