悪者
久し振りにルカが学校に来た。
教室の皆はこれまでとは打って変わって、ルカをこわれものを扱うような空気で迎え入れた。
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「葉山さん。ルカさんを気遣ってあげてね。」
先生は私の肩を掴んでそう言った。
仕事を託されたように感じた。
ールカの相手にするのはあなたの役目だよー
そんなふうに感じてしまうのは、私の性格が悪いのかな
ルカは一人で弁当を食べていた。
これを放置したら私は先生やクラスメイトに責められるだろう。
ルカのことより、周りの目を気にして、私はルカにまた話しかけようとした。
無言でルカの隣に座る。すごい気まずかった。
「ルカ…一緒にお昼食べていい?」
私の口から出たのは、泣きそうな、消え入りそうな声だった。
ルカは私を睨めつけると、何も言わずに席を立って向こうへ言ってしまった。
どうしようもなかった。それ以上話しかける勇気がなかった。
ルカが一人で食事しているところを認めた何人かのクラスメイトが、非難の目を私に向けてきた。
いじめられていた友達を傍観し続けている、悪者。
葉山ユイナは最低だ。
「葉山さん。何で小屋敷さんと一緒にいないの?」
嫌だな……どうしよう……。
クラスの皆には、私がルカを避けてるみたいに見られてるんだ。
いや、実際に避けてるか。
「葉山さん。酷くない?小屋敷さんの友だちでしょ。
少し前から、小屋敷さん一人にして、他の子たちとばっか絡んで。」
今、ルカの立場は被害者。彼女を傷付ける者は悪者。
それが今、この教室を覆う空気感。
でも、ルカは私が近づくのを許してくれない。
いじめられていた友達を傍観し続けている、悪者。
ユイナは暫くそこで苦しんでればいいよ。
ルカにそう言われているように感じた。
いや、実際ルカはそんなこと考えられるほど空気読める子じゃないんだけど...…。
放課後
私はルカと一緒に帰る……べきなのだろう。
ルカに近づくのが怖くて、でも、ルカを一人にしてる自分を他の子に見られるのはもっと怖くて、
私はルカの少し後ろをひっそりと歩いた。
ときどきルカは私の気配を感じて振り返る。
目が合うと「ついてこないでよ」と言いたげに睨めつけてきた。
何なんだろう。この時間。
一人で帰りたい。
……こう感じてしまうのは、やっぱり私の性格が悪いのだろうか。