表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

オカ研に入部

 田所浩次は机にある入部とどけと睨めっこしていた。その入部届には柔道部と書かれていて、その他のすべての記入個所もすべて記入がされている。


浩次は小学校以前より父親に無理やり柔道をやらされてきた。それゆえ父親は当然高校でも浩次に柔道部に入ることを求めていた。


「おーい浩次。聞いてるか?」


 目の前の青年がそう声をかけてきた。浩次の数少ない友人、鈴木博人である。髪を金色に染めており、ピアスをしたりしているので、外見的に周りから「チャラい」や「女遊びをしている」という評価を受けることが多い。


「ああすまん。何も聞いてなかった」


「はぁ聞いとけよなぁ。俺がオカ研に入るって話だよ」


「オカ研?オカルト研究部か?」


「そうそう。誘われちゃってさ」


「お前そういうの苦手だったろう。昔お化け屋敷で漏らして俺にしょんべんかけたこともあったし」


 浩次は馬鹿にするように笑った。


「あー!声がおっきい。やめろって」


「すまんすまん」


「はぁ。その部活にめっちゃ可愛い人がいてさぁ。その人と仲良くなるためにね入るんだよ」


「へー、積極的だね」


「そうそう。でも一人だと寂しいだろ」


 なるほど、言いたいことは分かった。


「あー俺は無理だぞ柔道部に入らなきゃいけないから」


「いやいや。もう昨日俺の入部届と一緒にお前の分出しちゃった」


「は、いや意味わからんのだけど」


 浩次は突然のことであったので少し威圧的な声を出してしまった。


「だからお前も、もうすでにオカ研の一員だよろしくな」


「いやいやいやいやいや。え、だってあれハンコいるだろどうしたんだよ」


「近所の文具屋に普通に田所ってハンコ売ってたぞ」


「えぇー、まぁ売ってるかもしれないけどさぁ……」


「まぁまぁ、いいじゃん。お前柔道嫌いだったろ」


「……」


 博人の言う通り浩次は柔道が嫌いだった。親に無理やり入れられたことが原因でもないし。いじめられたとかそういうトラウマがあるわけではない。練習がきついがそれも本質的理由ではない。理由は柔道という競技が所詮暴力を競うもので、暴力に対して嫌悪感があるというものである。しかしそれを博人に言った記憶はなかった。


「ほらな。それにオカ研お前と俺を含めて4人しかいないから。お前含めても最低部員数に達しないんだよ。お願いこの通り」


 そういって博人は机に脚を乗っけた。


「……お願いする気0じゃねぇか」


「んじゃぁ行こうぜ、オカ研」


 博人は立ち上がり浩次を急かした。


「断りにな……」


「まぁ……本当に嫌ならやめてもいいさ」


 浩次は博人についていった。




オカ研の部室は凝った装飾をされていた。金属の骸骨のマークを縫い付けた飾りとか……一言で表すならそれはまるで部室がゴスロリファッションをしているようであった。


 部室には3人の女がいた。


 一人の女性が読書をしていて、二人の女の子が談笑していた。


読書をしている女性は、すらりとした体格をしていて、長く青い髪で目じりがやや吊り上がりややきつそうな印象を与えるもシュッと通った鼻筋によって全体としては大人っぽく、人間の美しさの一つの完成であると評価できるであろう女性であった。


談笑している女の子の一方は短い黒髪で、背が低く眼帯と包帯をしている。に眼帯のないほうの大きく見開かれた黒い瞳がひどく印象的な子であった。包帯の隙間から見える肌は病的なまでに白くそして唇はその白さによって際立つ鮮やかな朱色であった。


もう一方の女の子はふわふわとした柔らかなピンク色の髪に女性的な体つきをしている。そして何より印象的なのが笑顔である。優しい笑顔で、母性を感じさせた。――特に浩次には。


三人とも方向性は異なるが魅力的であると浩次は思った。そして誰が博人の好きな人なのかと考えた。


「こんにちわ!麗奈さん。あれもしかして5人目ですか」


 博人が3人の会話に割って入った。


「あらー、博人君。そうよー」


「よろしく、ええっと名前はなんていうのかな」


 博人が黒髪の少女に挨拶をした。


彼女は新しく入ってきたということはほかの二人が博人が好きな女の子だってことか。


「よ、よろしく……。あ、えっと青葉です……」


 黒い髪の少女は博人と距離を取りながら挨拶した。


「あれぇ?俺嫌われるようなことしたっけ」


「ううんー。青葉ちゃんはね小中と女子だけだったから男の子に耐性がないのよー」


「あっそうなんすか。安心してくれよ。俺ホモだから全然青葉ちゃんストライクゾーンじゃないよ」


 そんなこと初めて聞いたなぁ。


「えっ!、そ、そうなんですか」


「あれー、昨日は私のことあんなに口説いてきたのにー。嘘だったのー」


 博人が好きなのはピンクの女なのだろうか。


「そうでしたっけ」


「どっちなんですか……」


「どっとだと思う?」


「あ、あなたは信用できません!あっち行ってください!」


 青葉は博人を押して、自分のそばから遠ざけた。


「あらあらー博人君嫌われちゃったねー」


「あははは。大丈夫ですよ。すぐに仲直りしますから」


「そいえば、後ろの子は昨日言ってた浩次君かしらー」


「ああそうですよ」


 皆の視線が浩次のもとに集まる。普段こんなに多くの人間の視線にさらされたことのない浩次は大変な不快感を覚えた。


「よろしくお願いします」


 浩次は無難そうなことをすればいいと思い頭を下げた。


「固くならなくてもいいのよー。昨日博人君からいろいろ聞いてるよー」


「ああ、昨日俺があることないこと話してたからさ。安心しろよ」


 博人が肘でこずいてくる。


「ないことを言ったのか」


 浩次は苦笑気味に言った。


「悪いことは言ってねぇよ」


「まぁ、いいけどさ」


 それは浩次に対するどのような侮蔑も等身大の浩次にとって誤ったものではないからである。


「はい、じゃあみんな自己紹介をしましょうねー」


 ピンクの髪の女がそう言った。


「私から自己紹介しますね」


 今までずっと本を読んでいた青髪の少女が口を開いた。


「琴音ちゃん、ありがとー、最初は皆緊張するから助かるわー。じゃあお願い!」


「分かってる。初めまして2年生の泉源寺 琴音です。趣味は読書、特に歴史と軍事系の本を読みます。あと、家は寺で温泉が出る。よろしくお願いします」


 淡々と情報だけを伝えるような話し方であった。


 田所は泉源寺という名前の寺が自分の住んでいる家の近くだったなと思った。


「はーい、拍手ー」


 その掛け声に合わせて皆が拍手をした。


「じゃあ年齢的に次は私ねー。私の名前は緑川 麗奈でー。趣味はお菓子作りと料理でー。あと、名前を覚えるのが苦手だから何回も聞いちゃうかもしれないごめんねー。よろしくお願いします。はい拍手―」


 自分から言っていくのか……と浩次は少し変な気がしたが、皆が拍手をするので、それに合わせて拍手をした。


「じゃぁ次は俺が行きますね」


 そういって博人が大きな声で話し始めた。


「俺の名前は鈴木 博人。趣味とか特技とかは特定のものはない。だけど遊ぶのが好きだから、遊ぶなら誘ってくれ。ワイワイ盛り上がるのが好きだ。よろしく」


「はい拍手―」


 皆拍手をした。


 博人はきっと自分の知らない友人たちと遊んでいるのであろうと思い、少し寂しくなった。まぁ当り前のことなのではあるが。


「次は浩次。お前が行けよ」


 博人が浩次に促す。


「え、ああ、分かった。田所浩次です。趣味とか特技はないですね……。よろしくお願いします」


 嘘である。趣味はある――ただそれは人に言えるものではなかった。


「あれー、柔道をずっとやってるんだから柔道が特技じゃないのー」


「いや、ずっとやってるだけで得意ではなかったので……」


 これは本当。


「あらー。そうなの。じゃあ拍手―」


 その拍手の音が先ほどまでに比べ小さいのは気のせいではないのであろう。


「はい、じゃあ、最後に青葉ちゃんの番だよー」


「ああ、はい……」


 青葉と呼ばれた少女がおどおどと話はじめる。


「佐々木 青葉です……。趣味は、えっとオカルトとかぁ。そんな感じです。よ、よ、よ、よろしくお願いしますぅぅ」


 小さな声で青葉は自己紹介を終えた。


 自己紹介が苦手なのか顔が真っ赤になっていた。


「拍手ー」


 この拍手はほかの人の自己紹介と同じ大きさであった。


「じゃあ、自己紹介も終わったし。何か聞きたいことあるかしら―」


 麗奈がそう言った。


「あの、この部活って何をする部活なんですか」


 田所が素朴な疑問をぶつけた。


「あらー、博人君から聞いてないのー」


「ああ、俺も聞きたいっす」


「ええー、博人君も分かってなかったのー」


「それは麗奈……昨日鈴木君は君を口説いてるだけだったからじゃないか」


 琴音がため息交じりに言った。


「そんなことないですよ、ただちょっと忘れちゃっただけで」


博人が笑いながら言った。


「オカルト系ねー」


オカルト系……それが分からないから聞いてるんだけどな。


「具体的には何をするんですか。あ、去年はどんなことをしたんですか」


 田所は目的の答えを吐き出させるために質問を改良した。


「そうねー。例えば噂のある廃墟に行ったり……」


「おお!楽しそうですね!この辺りだったら相川病院とかですよね。確か20年以上前につぶれた病院で、夜な夜な地下の手術室から悲鳴が聞こえるとか……あとは、泉州橋!別名自殺橋。ここ十数年で40人以上が自殺か事故で無くなってるっていう有名な橋で、最近はその噂のせいで新しく橋をかけなおす案が自治体で検討されていることでも有名ですよね、あとは……」


 青葉が突然口を開きマシンガンのように話し始めた。


「ええ、そういう所に行くのよ」


 麗奈がそれ以上話すのをやめさせようとしたの話の途中で割って入った。


「あ、す、すいません……私自分が好きな話になるといつもこんな感じになってしまって……」


 青葉は両手で顔を隠した。


「いいのよ。私のほうこそ話を切ってごめんね。佐々木ちゃん。私も自分の得意な分野ではあなたと同じように自分の好きな分野では急に饒舌になってしまうこと多いから、その気持ちわかるわ。でも今は私の話を聞いてほしいの」


 麗奈は綺麗な手で青葉を抱きしめた。


「麗奈先輩!何するんですか!」


「だってー。シュンとした青葉ちゃんが可愛かったんですもの」


「離してください!」


 青葉は麗奈の腕を振りほどいた。


「ああんー、いけず―。じゃあ話を戻すわね」


「お願いします」


「他には7不思議を作ったりすることもあるわね」


「7不思議を作る?」


「ええ、例えば去年は音楽室に音楽プレイヤーを置いて夜中音のなる音楽室の噂を流したり、トイレに赤い絵の具を流して血の流れるトイレを作ったりしたわねー」


「えぇー、怒られないんですか……」


「やる前に先生に連絡して、あとかたずけもしっかりやるから大丈夫よー。いたずらはあとかたずけも含めていたずらだからね」


「すっげー面白そうですね」


 博人が目を輝かせた。


浩次はそういえば自分は脅かされるのとかホラー苦手なくせに自分は脅かしたりするの好きだったなぁと思った。


「でしょう!」


 麗奈が悪ガキみたいに笑った。


「えー、それはちょっとオカルトとしてはずるい気がするんですけど。オカルトっていうのはですね……」


 青葉は先ほどの麗奈のハグで緊張が解けたのか、自分から積極的に会話に参加していった。


 その後青葉がオカルトについて持論を語ったり、麗奈がどうやって脅かすかを面白おかしく話したりして談笑していた。博人はそこでふざけているだけであったが。


 そして浩次はその様子を眺めていた。


 3人がもはや周りを意識しなくなった時浩次は琴音から耳打ちされた。


「浩次君。ちょっと話があるからついてきてくれないかな」


「大丈夫ですけど……」


「じゃあついてきてくれ」


 琴音は浩次の手をつかみ部室を出た。


「よし。ここなら大丈夫そうだ」


 そういって浩次が連れていかれたのは人気のない階段の踊り場で会った。


 浩次は少し期待して――そしてそれ以上に恐怖して心臓の鼓動を速めた。


「泉源寺先輩。なんですか話って」


「ああ、でもその前に泉源寺先輩ではなく、琴音と呼んでくれ」


「えぇ、その恥ずかしいんですけど……」


「私は自分の苗字があまり好きでないし。他人行儀だから」


「はぁ……、分かりました琴音先輩」


「……ああ、ありがとう」


 何か少し不服そうだなと浩次は思った。


「それで鈴木君のことなんだが、君は彼とどれくらいの付き合いなんだ」


 琴音は話の本題に入った。


浩次は自分の期待が間違っているのを悟り恥ずかしく、そして安心した。


「えーっと、最初は小学校3年、いや4年からですかね……小学校が違うんですけど、父親に無理やり入れられた柔道教室で会いました。まぁあいつはすぐにやめたんですけど……。その後は中学が同じだったのでそれから仲良くなった感じです」


「そうか、なら期待できるな」


「期待って何ですか」


「ああ、男で鈴木君の友人の浩次君には少し気分の悪い話になるかもしれないけれど……。正直私は男を信用出来なくてね。特に彼みたいな乗りの軽い男を。だからいくつか質問をさせてくれ」


 琴音は申し訳なさそうに目を伏せて言った。


「男云々はどうでもいいですが。それよりも僕は博人とは仲がいいの……少なくとも僕は博人に対して好意的な存在だと思っています。それに信用できないならあまりかかわらなければいい話ですよね。それをわざわざ僕に言う理由が分からないんですけど」


 浩次は少し嫌悪感をにじませた声で言った。


「ああ、君の言うとおりだ。けれども事情があって。彼はたぶん麗奈に気があるだろう。麗奈が悪い男に騙されてないか心配なんだ」


 浩次は人の恋路に口を出すのはどうかと思ったが、もし博人が露出度が多い女や、人の悪口でしか会話できない女に誑かされそうになったら心配にもなるかと思い直した。


「……まぁ、友達のことだったらそうなりますかね……」


 浩次はしぶしぶと思いその質問に答えることにした。


「ああ、ありがとう」


「じゃあ、何が聞きたいですか」


「ああ、まず彼の女性遍歴とかを教えてくれないか、できればどれくらいの長さ付き合ってたとかと、その時の彼の様子を教えてくれ」


「えーと、俺が知ってる中で2人ですね。両方とも1年以上付き合ってましたね。でもキスもしてないとか言ってましたね」


「……ヘタレなのか」


「さぁ」


 先ほどは軽いノリが信用できないと言っていたのにも関わらず、一方でキスもしたことをヘタレというのはじゃあどうすればいいんだよと、思うけれどそれはいわゆる中庸のなせる業でその中庸は人によって異なるのだからしょうがないのであろう――と理解している。


 しかしその中庸を感じることはできないし、これからもできることは無いであろうと思った。


「強姦まがいのこととかは?」


「するわけないでしょう!さすがに怒りますよ!」


浩次は声を荒げた。


「ああ、ごめん」


 琴音は頭を下げた。


「え、ああすいません。こちらこそ怒鳴ってしまって」


 浩次も頭を下げる。二人に微妙な空気が漂った。


「君の話を聞く限りでは博人君は少なくとも悪人ではないようであるな」


「まぁ、見た目の印象はあまり良くないのですけど、そう思いますよ」


「ああ、まあ君が本当のことを言っていることと、鈴木君が君に本当の自分を晒している前提ではあるが」


「後者の証明をすることはできないですけれど、前者は何ならもっと質問してあらさがしをしてもいいですよ」


「いや、いいよ。君は信用できるから」


 さっき男が信用できないとか言ってたのにと浩次は思ったけれど、その一方で自分は嘘をつけるほど賢く無いとか、あるいは何かの理由でなめられているのだろうと納得した。


「じゃぁ。戻ろうか」


「そうですね」


 二人はならんんで部室に戻ろうと歩み始める。


「あ、最後に一つ聞いてもいいかな」


「良いですよ。なんですか」


「君は本当にオカ研に入っていいのかい」


「えっ」


 思いがけない質問であった。


「昨日博人君が部長の私に入部届を提出したとき、君のも一緒に提出したんだけれど、彼は君が本当に嫌がったらやめれるようにしてくれと言っていたからまだ正式には届を受理していないんだよ。それでどっちかなと」


「入りますよ。博人がせっかく気を使ってくれたんですから。……それより琴音先輩が部長だったんですね。てっきり麗奈先輩が部長なのかと思ってましたよ」


「確かに麗奈は私より活発でそういう面では部長のように見えるかもしれないけれど、細かい書類とかが苦手だからね部長には向いてないんだ。まぁめんどくさい所を押し付けられたのかもしれないけれど」


 琴音はそう言ってニコッと微笑んだ。


「そうなんですか。大変ですね」


「何か他人行儀だな」


「えぇ……、じゃあ手伝います」


「いや、そうじゃなくてさ、たぶん私たちが卒業したら部長は君になるから」


「ああ、なるほど。その光景が目に浮かびますね」


 やはりなめられているようである。


「あ、そうだ。ねぇジュースでも買っていきましょうか……。二人でいなくなったことの言い訳に」


「いいですね。自販機ってどこにあるんですか」


「すぐ近くにあるよ」




 浩次と琴音がジュースを持って部室の近くまで来ると、大声で叫ぶ博人の声が聞こえた。


急いで部室に行き様子を確認すると博人に青葉が何かを耳打ちし、麗奈が博人の腕を抑え、博人が叫んでいるという奇行が起きていた。


「何をやってるんだ……」


 琴音は呆れた声で3人に言った。


「琴音ちゃん、これはね……」


 青葉と麗奈の話をまとめるとこういうことだそうである。


 青葉の怖い話に以上に怖がり、それをやめてもらえるように博人が頼むものなので、それを面白がった青葉が耳元で怖い話をささやき始め、それに対抗した博人が耳をふさいだのだが、今度は麗奈もそれに参加し、手を耳から離すように腕を掴んだ。


 そこで次の手で大声で叫び聞こえないようにした。


「……馬鹿じゃないの」


 琴音はやはり呆れた顔で言った。


 それに「本当ですよ!」と博人が怒ると青葉と麗奈はへらへらと笑いながら「ごめんなさい」と謝罪した。


 どうやら3人はだいぶ打ち解けたようだ。席を外していなければあの輪に入れただろうかと思ったが、無理であっただろうと結論付けた。


「あ、そうだ。みんなほらこれ、ジュース」


 琴音は青葉、麗奈、博人にジュースを分けた。


「わぁ、ありがとうございます」


 と青葉は嬉しそうに受け取った。ほかの二人も同様に感謝を言ってそのジュースを口にしてした。


 浩次は自分で購入した物を飲んだ。


「それでどんな怖い話をしていたの?」


 琴音は3人に聞いた。


「ああ、それはですね。実はこの高校の最寄駅から10数駅離れた場所にある山に不気味な屋敷があるんですよ。古いもんだと思うんですけれど大きくて、そしてその家の窓はすべて内側から木の板を打ち付けて閉ざされ、ドアにはぐるぐる巻きの鉄の鎖と南京錠で閉ざされています。その屋敷はいろいろなうわさがあって一度入ると帰れなくなると言われていて、中では怪しい人体実験が行われているんですよ。どんなじっけんかというとですねぇ……」


 嬉々として青葉がその話をすると、博人は怯えて耳をふさいでいた。


「えーっと一つ聞いてもいいかな?」


 浩次はふと気になったことを聞いてみることにした。


 青葉は「何ですか?」と反応した。


「なんで一度入ったら出られないのにそんな中の話が分かるんだ?」


 揚げ足を取った形ではあるが、博人がさすがにかわいそうなので話の矛盾点を指摘した。


「あー、そうですね。まぁ今私が即興で作った話ですからねぇ……」


 青葉は少し不機嫌そうに言った。一方「え!作り話だったの!」と博人は驚いた。


「ありがちなオカルト話でも博人さんがビビッてくれるので面白くて適当に作ってみたんですよ……それで皆で肝試しをしようという話に持ってこうと思っていたんですけど……」


「あー、すいません」


 浩次は申し訳なくなって謝罪した。


「でも、でもー、その屋敷は本当にあるんでしょー。ちょっと私行ってみたいなー」


 麗奈が落ち込んだ青葉の話に乗っかり、話を肝試しに行く方向に修正した。本当に申し訳ない。


 それを聞いて「えぇ!本当ですか!行きましょう!」と青葉は元気を取り戻した。


「私も日にちさえ合わせてもらえば大丈夫だ」


 琴音もその話に乗った。


「博人は確定として、浩次さんはどうですか」


「ちょ、待って!なんで俺は確定してるの!」


「だって博人の反応が面白いんだもん!ね、麗奈先輩」


「そうねー、やっぱり博人君は来てくれたほうが面白いわねー」


「えぇ……。わ、分かりました」


 博人はがっくりと肩を落として言った。


「それで浩次さんはどうですか?」


 青葉が改めて浩次に尋ねた。


 それと同時に博人が浩次を涙目で見てきた。浩次にはどういう意図があるのだろうか確実には分からないかったけれど、自分に参加してほしいのだろうかと思った。


「ああ、大丈夫です」


 博人の顔がぱっと明るくなった。どうやら正解であったようである。


「じゃあ、いつにします?今週の土日とかはどうですか?」


 青葉はそう提案した。皆それに特に問題が無かったようで今週の日曜日にその屋敷に行くことになった。

 それから皆適当に談笑を始めた。


 浩次は琴音が話しかけてきたので琴音とずっと喋っていた……と言っても浩次はただ琴音の話にただ相槌を打っていただけであるが。


 しばらく琴音が話を続け、ひと段落すると琴音がこんなことを言い出した。


「浩次君の家は泉源寺の近くじゃないかな?」


 浩次はドキッとした。そんなことを推測できるようなことを言った記憶がない。


「……良く分かりましたね」


「ああ、君が泉源寺の話を聞いた時の反応で何となくそう思ったんだ。家が近くなら一緒に帰らないかい」


 琴音ははにかみながら言った。


「え、いいですけど」


「本当かい!じゃあ一緒に帰ろう!」


 浩次が愛想笑いをすると、琴音はまたほかの話を始めた。


 そうこうしていると下校時間になり、帰宅した。浩次は約束通り琴音とともに帰宅をした。琴音はいろいろな話をして、浩次はそれを聞いていた。話自体は大変興味深く、いつからか質問を琴音に返すようになった。



誤字脱字は指摘していただけると幸いです。

昔途中まで書いた小説の冒頭部分です。

反応が良ければ続きを書こうかなと考えています。

アドバイスなどがいただけるのであれば大変うれしいのでよろしければアドバイスお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ