第4話 憎悪
「霧島、なんだって?……ってお前どうした、すげぇ汗だぞ。」
本多が俺に近寄ってくる。俺は一旦落ち着き状況説明し
「俺は今から霧島を探しに行くから、悪い。また今度。」
そう本多に伝える。
「待てよ。」
本多に呼び止められる。
「なんだよ、今急いで───。」
「1人より2人の方が早く見つかるだろ?」
こいつは本当に"親友"なんだな。
俺はそう実感させられた。だが、闇雲に探すわけでもない。
俺は知っている、彼女が買い物をしたかった事を。
俺がいたから気を使って真っ直ぐ向かおうとしなかった、そう仮定すれば間違いなく彼女は買い物をしていたはずだ。
だが、それだけじゃ根拠にしては弱い。
電話の先で踏切の音がしていた……。この辺で踏切はショッピングモールの近くと俺の家付近。
本多に俺の家の方の踏切付近を探してもらうように頼む。
そして、俺はそのままショッピングモールへ向かって走り出す。
───19時07分。
「はぁ……はぁ。」
一体どれくらい走っただろう。ショッピングモール近くの踏切近くの小さな路地を何度も回ったが霧島の姿はない。
『どこにいったんだ……霧島っ。一旦、本多と連絡を取ろう。』
そう思い電話をかけるが通じない。そんなに必死に探してくれてんのか、と不謹慎にも嬉しくなる。
よし、俺も。
そう思った時小さな公園が目に入る。
そういえば、あそこはまだだったな。
灯が少なく、周りに家も少なく、物置などがあり誰かを連れ込むにはいい場所だろう。
そう思い、物置の裏を覗き込むと彼女、霧島 雪柊が目隠しなどを施され縛られていた。
「霧島っ!!!」
俺は駆け寄り縄を解く。
「大丈夫か?霧島。」
「朝日……くん?」
バッ。
いきなり立ち上がり俺に抱きつく霧島。
「怖かった……怖かったよ。」
霧島は泣き出してしまう。だが、今はいち早く聞かなくてはならない事がある。
「霧島、怖かったと思うが。教えてくれ、一体どんな奴が霧島をこんな目に合わせたんだ。」
霧島は涙を拭い、俺と目を合わす。
「それが、わからないの。背は私とあんまり変わらなかったけど。この暗さの中フードで顔も隠されてて。」
ここでも今日を狂わせてる犯人の手がかりはなしか。
ただ、誰も死ななかった。もう今日に戻る必要はないな。
「朝日くん。……ずっと前から好きでした。私とその……お付き合いしてください。」
俺は咄嗟に振り返る。涙目になりながら頬を赤く染めこちらを見る霧島の姿。
今日を繰り返してから心音が死んで、霧島が危ない目にあって散々だ。
そう思っていたが、神も意外といいやつなんだな。
「俺でよければ、よろしくお願いします 。」
俺はそう返し、霧島を家まで送る。
───20時15分。
霧島を送り終え家へ向かう途中、もう少しで家という所で俺は本多に報告するために電話をかける。
ピロロロロロロ……。
可笑しい。なぜ着信音が聞こえるんだ?いや、正確には着信音が聞こえるのに出ないのだ?
そのまま家の前に着くと俺の家にもたれかかる本多の姿があった。
「おい、本多。お前こんな所で寝てると───。」
触れた瞬間だった。本多の体がそのまま床に倒れ込んだ。
下を向いててわからなかった顔が露わになる。
頭から流れた血で顔を赤く染める本多のその顔が。
『本……多?』
嘘だろ。冗談だろ。返事をしてくれよ。
脈を見ようと腕に触れるともうその体には完全に冷えきっていた。
それでも、脈に触れる。
動きがない。信じたくないが死んでいる。それは間違いない、知識の薄い俺でもわかった。
「どうします?今日に戻りますか?」
倉西……。いつもこいつはタイミングよく現れやがる。
だが、皮肉にもこいつの力を借りるしかないのが現状だ。
「あぁ、もう1度……頼むぜ。倉西。」
そう言い俺はガシッと手を握る。
───22時15分。
夕飯や風呂を済ませ自室に戻る。
正直、すぐに寝てしまえば解決するが。食べて風呂にも入らないととてもスッキリしない。
だから、済ませた。
そして、俺は眠りにつく。次の今日に希望を見据えて。
───7時20分。
『戻って……来たか。』
心音が殺された。本多が殺された。俺は犯人がわかればそいつを許す気はない。
だが、まずは全員が幸せになるエンドを迎える事だ。
だから───。
「始めようぜ……3回戦目だ。」