とある少女が描いた未来(レナside)
「レナ。四月からは調和学園だ。しっかり頼むよ」
「うんっ!レナ、頑張って教会の教えを広めてくるから!!」
「頼もしい子だ」
そう言ってパパはレナの頭を撫でた。
「じゃあ、レナ。生徒たちのことは、レナに任せたよ」
「はーいっ」
蕩けるような笑顔で元気にお返事して手をあげてあげれば、パパはとっておきの笑顔を浮かべて、レナのおでこにちゅーしてくれた。うーん。パパっておじさんだけどイケメンだし、タイプじゃないこともないんだけど、やっぱり攻略対象と比べると見劣りしちゃうわよね。
ふと部屋に置いてある全身が写る大きな鏡を見ると、そこには美少女がいた。
桃色の髪に、桃色の目。
唇はぷるっぷるだし、睫毛も長くて瞬きするたびにばさばさいってそう。ちょっと派手だけど、可愛いから全然問題ナシ!正統派ヒロインって感じで、うっとりしちゃう。
まあ、レナのことなんだけどね!!
きゃははははははっ!!
内心にまにま笑いながらぼふんとベッドに飛び乗る。
ほんっとうに何から何までレナの思い通り!
この世界は、「貴方には私だけ… ~どんな姿でも愛してる~」通称無糖って呼ばれる乙女ゲームのリメイク版「私は貴方に恋してる ~forever love~」通称増糖の世界なの!
え?無糖とか増糖とか題名に掠りもしてないじゃないかって?
そんなの当たり前よ。ゲーム内容から付いたあだなみたいなものだもの。
無糖の方はほんっとに甘さが無かった。ハッピーエンドでも精々手をつなぐだけとか見つめ合うだけとか一体どういうことなの?!
しかも友情エンドでもバッドエンドでも特にヒロインは酷い目にあったりしないのに、トゥルーエンドが全攻略対象廃人化からのヒロイン自殺よ自殺!!ホンットこのゲームの製作陣は頭がイカれていたとしか思えないわ!!作画も声優もいいのに、なんでこんなことになったのかしら!!
そういうプレイヤーからの抗議の声もあって、すぐにリメイク版が作られたの。
リメイク版では攻略対象が増えて、世界観もちょっと変わったの。
無糖では人間に迫害されてる獣人たちがひっそりと暮らしてる、って設定だったけど、リメイク版では人間たちに獣人を迫害するよう仕向けてた『教会』っていう存在が出てきて、獣人たちと対立するの。
ヒロインは最初教会側についてるんだけど、獣人たちと関わっていく内にその考えを変えていって、最後には人間と獣人との和解の橋渡しになるのよ!えへへ、すごいでしょ?
一応王道ルートでいくと、ハッピーが獣人との和解で、バッドは教会側が圧勝して獣人が全面的に排除される世の中に変わっちゃう、とかそんな感じ。でもヒロインは元々教会側だし、攻略対象には教会側の人もいるから全然問題なし!
個別だとフツーにハッピーではいちゃいちゃ、バッドでは駆け落ちだったわね。友情だとどのルートに進んでも現状維持。ま、これはどうでもいっか!
まあ、トゥルーエンドは安定のヒロイン泣かせだったけど。
リメイク版は無糖と違ってヒロインのライバルキャラがいるのよね。その名も惣火ゆま。
コイツ敬語系の天然ぶったぶりっ子なんだけど無駄に男ウケいいし、なにより惣火郡のイトコなのよね。惣火郡ががっつり依存してるから、惣火郡絡みの攻略ルートではホンット邪魔だったわ。獣人勢とは軒並み好感度高いし、バッドでも珍しい体質だから、って監禁で済まされてコイツは排除されないのよね。
リメイク版ではトゥルーエンドはバッドトゥルーとトゥルーに分かれてて、バッドでは教会側が惣火ゆまを狂愛してたから囲うためにわざと排除に踏み切った、とかそんな感じ。獣人勢と仲が良かった惣火ゆまは全力で拒絶して泣きながら許しを請うけど、それでも「逃がさない」って教会側の攻略対象は嗤って拒否するの。
トゥルーは惣火ゆまが獣人と人間の和解の象徴として君臨して、ヒロインはその補佐に回りながらもなんか適当にモブと結婚して幸せそうな顔してたっけ。え、攻略対象たちとはどうなったのよ。
…ねぇ、トゥルーエンドが一番ヒロインが報われてないとかどういうこと?
ホンットこの製作陣は頭がおかしかったとしか思えないわ。
トゥルーエンドはともかくとして、私はこのゲームに夢中になったの。だって攻略対象はカッコイイし、うっかりトゥルーエンドに進んだりしなければ誰かからは愛されるしね!
一番好きだったのはやっぱ逆ハーエンドかな。
ヒロインが学園を支配して女王様みたいに学園に君臨するのよ!
そこでは誰も彼もがヒロインに従って、なんだってやりたい放題!人間も獣人も関係なくみんな可愛がって、学園は理想郷と呼ばれるの!ふふん、いいでしょ!
ま、簡単な教会側の攻略対象から落として、獣人勢はおいおいでいっか。惣火郡は惣火ゆまガードがあるだろうし。…はぁ。それにしてもどうしてこっちでは学科が別れているのかしら?ゲームでは精々クラス分けしかしてなかったはずなのに。