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もふもふ!【改訂版】  作者: min
高校編(一年生)
13/39

高校生になりました

 はい。惣火ゆま高校生になりました。


 いきなり時間軸吹っ飛びすぎですよねわかります。


 いや、あの後、惣火家の内部の現状とか味方になってくれそうな人とか家とか、そりゃあ色々教わりましたよ?加えて、六歳からは義務教育も始まったのでそれはもう勉強量が増えるわ増えるわ。その他にも教養として色んな習い事があったから…。


 そして、例の「先生」は、なぜかいつの間にかおじいちゃんの補佐というか、秘書になっていた。


 一体私の知らない間に何があったのやら…。あの時は先生が黒豹になっておじいちゃんが居るはずの部屋にスタンバイしてた時並に驚いたよ…。ちなみに先生は今でもよくおじいちゃんと一緒に我が家に突撃してきて、おじいちゃんと一緒に撫でろ攻撃をしかけてきます。

 ただね…。人の姿をとってる時はいい加減スキンシップ激しすぎなんじゃないかなと思うんですが。

 私もう高校生。

 一歩間違えなくてもセクハラな気がするんだが。でも先生すごく寂しそうな顔するからなー…。

 こうやって甘やかしているのがいけないんだろうか。郡も「嫌な時ははっきり言った方がいい」とアドバイスしてくれたんだけど、私って甘えられるとついつい相手に甘くなっちゃうからなぁ…。最早これは性分として受け止めた方が良さそうだ。


「どうしたの?ゆま」

「いえ。なんでもありません」

「そっか。じゃあ、早く行こ?」

「はい」


 心配そうに顔を覗き込んできた郡に首を横に振って答え、差し出された手を取って講堂へと急ぐ。郡とは仲良しだし、小さなころからの仲だからこれはセクハラじゃないよね。

 …よね?


***


 ここ、私立調和学園は、知る人ぞ知る獣人のための学園だ。


 表向きは魔法の才能がある人材を育成する機関として通っていて、学科は普通科、特別科、魔法科の三つで構成されており、生徒全体の割合で見るとその比率は5:2:3となっている。普通科は魔法の才のない一般生、魔法科は魔法が使える生徒、特別科は特に魔法に優れている生徒、と説明されており、魔法科から特別科に移るケースもありえなくはない、と言われているが実際に特別科に移ることになった生徒は今まで一人もいないんだとか。


 実は、それも当然のことであったりする。


 普通科は魔法が使えない獣人、特別科は魔法が使える獣人、魔法科は魔法が使える人間、と区分けされているだけなのだから。そのため実際は普通科に人間が入ることはなく、調和学園には魔法も使えない人間は入学することさえ許されないのが現状であったりする。

 また、調和学園の理念である「調和」を元に「特別な才に触発され、新たに魔法の才に目覚める可能性」をうたって特別科と普通科は同じ校舎を使って授業を受けているが、特別科が例外として普通科と教棟を共にしているのではないことは想像に易いだろう。単に魔法科と他の学科の教棟を分けるための理由づけだ。実際、座学のみに絞れば三学科で習う内容は左程違いがあるわけでもないし。


 ちなみに私は普通科所属だ。


 相変わらず獣化したことないけどね。

 古代魔法は使えないけど、ばりばり精霊魔法使ってるし。


 出自から見れば、旧家の血が流れている以上古代魔法が使えるようになる可能性はなくもない。そう言った意味では才能を開花させるべく特別科で学ばせたてやりたいと、大人たちは思ったらしい。

 しかし、現時点においても私は既に強力な精霊魔法を扱っている。その才能を見る限りにおいては、魔法科に所属させるべきだ、と考える人もいた。

 一体どちらに所属させるべきか。

 そう言って大人たちは頭を抱えた。

 普通に考えれば開花するかどうかよくわからない才能にかけるより、現在判明している能力を伸ばす方に賭けることを選ぶだろう。私だってそうだ。しかし、大人たちには開花するかどうかよくわからない才能を理由にしてでも私を魔法科に近づけたくない理由があった。


 それには教会―「人間絶対主義」を掲げ異端は例外なく排斥する団体が、関係していた。


 先に述べたように、普通科、特別科、魔法科の授業内容は座学においてはほとんど変わらない。しかし、魔法科の教育には、全面的に「教会」が関わっており、教科書も全て教会風のものになってしまっているのだ。


 教会については自身が惣火の血筋ということもあり関わりようがなく不明な点も多いのだが、獣人を全面否定し人間至上主義を掲げていることは周知の事実であり、彼らは旧家事態を見下している節があるという。そんな中で教会の影響が強い魔法科などに私が所属してしまったら…、結果は火を見るよりも明らかだ。

 加えて、私は薄める派の惣火の、しかも分家であるといえども旧家の血筋。今までが幸運だっただけでもしかすると何かの拍子に獣化するかもしれない。万万が一そんなことが起きてしまい魔法科の校舎内で獣化なんかしてしまった日には…。

 最悪、私は袋叩きに合ってしまうかもしれない。


 そういった懸念の元、どうにかこうにか私を魔法科へは生かせない方向で会議が進み、そこで一人の大人が気付いたのだ。

 曰く、「昇進させてしまえ」と。


 手順はこうだ。


 まず、私が「魔法を使えない一般人」として、普通科の生徒として編入する。

 次に、頃合いを見て「魔法を使える生徒に触発され魔法に目覚めた」として魔法科の実技授業への参加を促す。勿論籍は未だ普通科であるので実技以外の授業は普通科・特別科の教棟で受けることが可能だ。

 そして次年度では最初魔法科に籍をおき、「将来性がある」として特別科の適性を測るためにその一年は特別科の授業を主に受けるようにし、やはり実技だけは魔法科のものを受けるようにする。この場合も魔法科の教棟に留まる必要はない。

 最後の一年は主に就きたい職業別に活動が別れるため学科の区分は左程重要ではないそうなので、私の働きに応じて魔法科のまま籍を据え置くか、特別科に引き上げるかを決めるらしい。


 と、このように昇進制度を利用して上手い具合に魔法科を避けよう、というこの七面倒な作戦が会議を通ってしまったそうで。


 こうして私は、私立調和学園普通科一年生として、春を迎えることになった。


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