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ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント- 作者:ネコ光一

十五章 選択

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今日も今日とてレウス

十五章……開始です。
 ――― レウス ―――





「そこだ!」
「あ!?……ぐああぁぁっ!?」

 今日も野営前に行っている模擬戦で兄貴と戦っているけど、相変わらず兄貴の動きは異常としか言えない。
 結果……俺は兄貴が放った蹴りを食らって吹き飛ばされ、無様に地面を転がっていた。

「お前ならそろそろ自分で気付けると思うんだが……」
「げほ……ごめんなさい……」

 闘武祭で戦って以来、兄貴との模擬戦は前以上に厳しくなっている。
 前は寸止めが多かったけど、今は打撃系なら普通に当ててくるし、どうしてもおかしい部分以外は兄貴は対処法を口にしなくなっていた。

 何故なら戦いとは常に変化し、それを理解して瞬時に対応するのが大切だからだ。

 だから痛い思いしたくなければ、自分で答えを見つけて対応しなければいけない。
 実は蹴られてしまう理由はわかっているんだけど……どうしても体が追いつかないんだ。
 不甲斐ない自分につい謝ってしまったけど、兄貴は苦笑しながら訓練用の木剣を向けてきた。

「謝るくらいなら考えるんだ。さて、まだ続けるか?」
「もう一度お願いします!」

 実際、俺の隙はほんの僅かだと思う。
 けど兄貴はその僅かな隙を、正確かつ異常な速度で突いてくるから防御が間に合わないんだ。まるで俺の動きが誘導されているんじゃないかと思える程に。
 でもライオルの爺ちゃんなら確実に対処するだろうし、兄貴と並び立つ為に、そして兄貴の弟子としてこれくらいの壁は自力で越えられないと恥ずかしい。

 兄貴が教える方針の一つ……自分が考える通りに、寸分狂いなく体を動かせるようになれ。

 俺の言葉に笑みを浮かべる兄貴に応えようと、次こそは考える通りに捌いてー……。

「あああぁぁ――っ!? 兄貴! アイアンクローは反則うぅぅっ!」
「今度はこっちが隙だらけだから仕方ないだろ」

 ……やっぱり駄目だった。
 俺は兄貴のアイアンクローに捕まり、痛みで悶えるのだった。





「……こっちだな」

 いつもなら寝る前に行っている剣の素振りをしている時間だけど、今日は木箱を抱えて一人で森の中を歩いていた。
 理由は兄貴が作ってくれた夕食を食べ終えた後、姉ちゃんが匂いを嗅ぎながら報告してきたのが始まりだった。


『……シリウス様。僅かですが、あちらから水の匂いがします。近くに川か湖があるようですね』
『水の匂いまでわかるんだ。それより川かぁ。魚……食べたいな』
『そうね、最近は肉が続いているものねぇ……』
『そんな目をしなくてもわかっている。確保しにいくか』
『じゃあ俺がとってくるよ!』


 というわけで、俺は一人で水場を探しているわけだ。
 探すと言っても、俺も姉ちゃんと同じように匂いがわかっているから迷うわけがない。
 魔物に警戒しながらしばらく歩けば、予想通りそれなりに広い湖を発見したので、俺は早速近づいて水を確認していた。

「どれどれ……うん、水は綺麗だな」

 兄貴曰く、綺麗な水に住む魚の方が泥臭くなくて美味しいそうだ。
 その昔、何も知らない俺が一人でギルドの依頼を受けていた頃、腹が減ったので少し濁っていた湖で魚をとって焼いて食べた時、あまりの泥臭さに驚いたものだ。
 だけど兄貴が作る魚料理は綺麗な水に長時間浸けたり、ハーブとか巻いたりして色々と手間を加えているから全く泥臭さを感じさせない。
 特にあの香草で包んで蒸した魚は最高だったな。とにかく魚がないと始まらないから頑張ろう。

 月明かりの下、俺は靴を脱いでズボンをまくり上げてから湖に入り、しばらく静かに立って気配を消した。
 そして指先で水面をちょんちょんと突けば、魚が餌だと勘違いして近くに寄ってきたのを見計らい……。

「ふっ!」

 剣を振り下ろす速度で魚を掬って飛ばし、靴の横に置いた木箱の中に落とした。あの中にはリース姉に魔法で出してもらった綺麗な水が入っている。
 そのまま立て続けに腕を振るい、何匹も魚を捕ったところで俺は一度中断して湖から出た。

「もうちょっと、捕った方がいいかな?」

 少なくとも俺は十ぐらい食べたいし、リース姉はあればあるだけ食べるからな。
 でも予想以上にここの魚は捕りやすいし、まだ時間に余裕はあるから……。

「少し剣を振るか」

 何だかライオルの爺ちゃんみたいな気がして嫌な言い方だけど、鍛錬しないといつまでも兄貴に追いつけないからな。
 俺は相棒を手にして、構える前に目を閉じて考える。
 これは兄貴がよく言っている、いめーじとれーにんぐってやつだ。

「兄貴……爺ちゃんの剛破一刀流……」

 何度見ても異常な兄貴の動きと、ライオルの爺ちゃんから身を以って知った剛破一刀流を思い出しながら俺は剣を振り上げた。
 だから後はその動きを真似するだけなんだけど……このまま真似をしても、きっと何かが違うんだ。
 兄貴や爺ちゃんと、俺は何が違うんだろう?

 見えているのに、追いかけても……追いかけても追いつけない遠い背中。
 でもそれは当然だと思う。成長しているのは俺だけじゃなくて、兄貴だって成長しているんだから。
 ライオルの爺ちゃんはわからねえけど、あの爺ちゃんの事だから兄貴の背中を物凄い勢いで追いかけていると思う。俺も負けていられねえ!

「……っと、駄目だ。考えが逸れちゃったな。集中……基本……」

 とにかく爺ちゃんの剛天を思い出しながら剣を振り下ろそうとしたところで、湖の方から突然水音が聞こえてきた。
 やばい……集中し過ぎて警戒が緩んでいた
 でも音からして距離があるみたいだし、俺は慌てずに音の方へ顔を向けてみれば……。

「……女の子?」

 湖に裸の女の子がいたんだ。
 ……何で裸?
 ああ……きっと沐浴しているんだな。俺達は兄貴特製の風呂があるから、あまり沐浴をしないんだよな。
 どうやら俺はあの女の子に気付かないくらいに集中していたみたいだ。そして相棒を構えたまま静かにしていたから、向こうも俺に気付かなかったようだ。

 それより今の俺って覗きをしている変態にしか見えないよな。ここは気付かれないように去るべきかもしれないけど……俺は何となくその子から目が外せなかった。
 こう……月を背に沐浴する女の子が綺麗だと思ったからだ。
 年は俺とそう変わらないかな?
 赤みがかった長髪に、狐の耳が見えるから俺と同じ獣人みたいだ。
 ほら、お尻にもふさふさした尻尾がー……あれ!?

「三つ……だよな?」

 俺の目がおかしくなければ、その子の尻尾は三つあるように見えた。兄貴と一緒に色んな町を巡ってきたけど、あんな獣人は初めて見るぞ?

「……って、やっぱり駄目だろ俺!」

 確かに珍しいけど、裸の女性をじっと眺めるのは失礼だって兄貴は言ってたじゃないか。
 気付かれる前に靴と魚が入った木箱を持って去ろうとしたけど……俺は違和感を感じて再び女の子に目を向けていた。

「あれは!」

 見れば女の子の背後に、蜥蜴のような魔物が水面から静かに顔を出していたのだ。
 明らかに女の子を狙っている上に、女の子は魔物に気付いていないのか振り返るどころかそれらしい動きすら見えない。
 俺は呼びかけるより早く地面を蹴ってジャンプし、途中で兄貴直伝の『エアステップ』で空中に足場を作り、女の子の近くまで一気に飛んだ。

「後ろだぁ!」
「えっ!?」

 そして声をかけると同時に、襲いかかろうとしていた魔物へ相棒を振り下ろして真っ二つにしてやった。
 相棒から感じる確かな手応えと共に、水を大きく飛び散らせながら湖へと着水し、すぐに女の子の様子を確認した。

「ふう、危なかったな。大丈夫か?」
「あ……うん……大丈夫……って、きゃっ!?」

 近くで見れば女の子の背は姉ちゃんより低く、俺だと完全に見下ろす形だ。
 女の子は驚いた表情で突然現れた俺を見上げていたけど、すぐに顔を真っ赤にしながら胸を手で隠していた。

「貴方、何者よ!」

 あれ……俺は助けたんだよな?
 なのに何でこの女の子は俺を睨んでくるんだ? 別に感謝されたいわけじゃないけど、睨まれるのは納得いかないぞ。

「どうやら助けてくれたようだけど、私をどうする気!」

 あ、そっか。俺は男だし、向こうは裸だから警戒して当然だよな。
 すぐに立ち去ってもいいけど、急がないと魔物を倒した血で他の魔物が集まりそうだし、なるべくなら陸地まで送ってあげたい。
 まず敵じゃないって落ち着かせて、それからー……。

「えーと、俺は冒険者で、偶然ここに来たら君がいたんだ。それで眺めていたらー……」
「覗いていたの!? この変態! それ以上近づいたら燃やすからね!」

 駄目だ……こんな状況でどう落ち着かせればいいのかわからねえ! そもそも女の扱い自体がよくわからねえよ。
 兄貴ならどうやってー……まてよ? 確か兄貴は、女性は素直に褒めるのが効果的だと言っていたような気がする。
 嘘をつかず、素直に思った事を伝えてみよう。 

「覗いていたのは事実だけどさ、綺麗だったんだ」
「えっ!?」
「覗きは駄目だからすぐに去ろうと思ってたんだけど、君が沐浴している姿が綺麗でさ、つい眺めていたら魔物が現れたから、助けなきゃって……」
「な……あ……う……」
「まあ姉ちゃんやリース姉に比べたら胸は小さいし、フィア姉より綺麗じゃないけど、俺は凄く綺麗だと思ったからー……」
「……ふ……」

 ……ありゃ?
 ちゃんと褒めたし、思った事を素直に話したのに、どうしてそんな怒ってー……。

「ふざけないでよっ!」





 ――― シリウス ―――





「なるほど……それでその有り様か」
「……うん」

 レウスが魚を捕りに行って帰ってきたら……全身ずぶ濡れだけでなく、頬に平手の痕を付けて帰ってきたので驚いた。
 あまりにも見事な平手の痕に最初は感心してしまったが、落ち着いて状況を説明してもらえば何とも溜息が出る内容であった。
 レウスの言動に突っ込むべきだろうが、まずは気になる点から解消していこう。

「それで、その子はどうしたんだ?」
「俺が食らったビンタは予想以上に強くて、吹っ飛ばされて湖に沈んじゃったんだ。すぐに立ち上がったけど、その時にはもう湖から出て森に消えていたよ」
「中々素早いようだな。まあ、お前を吹っ飛ばせるくらいに強ければ心配はなさそうだな」
「俺もそう思う。けどさ、何で俺が叩かれなきゃいけないんだよ。素直に褒めたのになぁ……」

 未だに自分が叩かれた理由がわからないらしい。
 レウス自身の性格もあるだろうけど、これは俺の責任もあるだろう。体を鍛えるばかりで、俺達以外の他人や女性と関わる経験が少ない事にあまり目を向けていなかった。

 それに俺が言うのもなんだが、レウスの周囲には一般的から見て間違いなく美人と言える姉のエミリアに、人が自然と惹かれる笑顔を持つリース。そして他の種族にはない美しさを持つエルフのフィアもいるのだ。
 悪く言うなら目が肥えているので、相手の見た目を褒める事は極端に少ない。なのでレウスがその女の子を綺麗だと言いながら見惚れていた行動は非常に珍しい事だ。
 だが天然で素直なレウスは無意識に身内と比べてしまうのかもしれない。色んな意味で難儀な奴だ。

 実は過去に好みの女性について聞いた事があるが……。


『お前はどういう子が好みなんだ?』
『兄貴が作るカレーとハンバーグだな! いや、兄貴が作るのは全部好きだ』
『それは好物の話だ。俺が聞いているのは女性の好みについてだ』
『兄貴みたいな人』
『……もっと詳しく言いなさい』
『えーと……ご飯作るのが上手くて、強くて、面倒見が良くて、大事な事はしっかりと言ってくれる人だよ。だから兄貴みたいな人だな!』


 つまりレウスは見た目より内面に惹かれるタイプであり、その内面で一番好みなのが俺だと言うわけだ。
 ……頭が痛い。もし俺が女性に生まれていたら、レウスは情熱的なプロポーズしてきそうだ。
 親代わりとして、そして師としても色々と先行きが不安である。

「リース姉、兄貴の一撃に比べたら軽いけど、何かこれ地味に痛いんだ。魔法かけてくれよ」
「うーん……ごめんね。それは治療したくないなぁ……」
「何でだ?」

 レウスは治療を求めてリースに近づいているが、彼女は苦笑するだけで治療を拒んでいた。
 同じ女性としてその女の子の気持ちがよくわかるのだろう。更に比較されているのが自分達なのだから、返答に困るのも無理もないかもしれない。

「ふふ、本当に素直なのねレウスは」
「素直なのは良いけど、言ってはいけない事もあるの。ほら、ノエルお姉ちゃんだってよく口を滑らせてシリウス様に怒られていたでしょう?」

 ノエルが哀れに思える言い方だが、俺も同じ意見なので訂正する気が起きなかった。

「つまり俺は言っちゃいけない事を言ったわけだろ? でも何が悪かったんだろう。俺、綺麗だって褒めたのに……」
「綺麗は問題ないわ。駄目なのは姉の私やフィアさんと比較した事よ」
「例えばの話だけど、私達を知らないその子から、レウスより自分の家族の方が強そうだって言われたら、あまり良い気分じゃないよね?」
「そういう事か!」

 どうやら納得できたらしい。
 レウスの頬を叩くのはやり過ぎかもしれないが、その子は裸なので冷静な対処ができなかった可能性もある。この場合、運が悪かったと言うべきか。

「じゃあ謝らないと駄目だよな。それにしても、女って難しいなぁ……」
「ええ、難しいのよ。だから強くなるだけじゃなく、シリウス様みたいに女性を喜ばせるような男になりなさい」
「あまり女性に興味があるわけじゃないけど、よくわかった。ところでさ、もし兄貴だったらその子に何て声をかけていたんだ?」
「そこで俺に聞くか……」

 これは難しい質問だな。
 あくまで俺の考えであり絶対にそうだとは言えないが、女性の心とは状況によって目まぐるしく変わるものなので、言葉も慎重に選ばなければなるまい。
 何と答えるべきか考えていると、隣に立ったエミリアが嬉々とした表情で手を挙げていた。

「シリウス様! でしたら私をその女の子だと思って実演してみませんか?」
「いや、そこまでする必要はー……」
「やってほしいんです!」

 俺に詰め寄ってくるエミリアの勢いは凄まじく、やらなければ収まりそうにないのでやる事にする。

 さて……レウスの聞いた状況からして、その女の子は綺麗だと言われて動揺はしたようだが、怒ってはなさそうである。
 つまりレウスの失言が全てだと思うので、余計な言動を口にせず紳士的に振舞えば良いかもしれない。
 こうして全員に見守られながらエミリアと向かい合うが、何か拘りがあるのか姉弟揃って細かい打ち合わせを始めていた。

「そうそう、俺と女の子の距離はそれくらいだったよ。後は相手が裸だったけど、流石にここじゃあなぁ……」
「でも場の雰囲気を再現する為には必要な事かもしれないし、脱ぐ事も考慮しないと駄目ね。レウス。貴方はここから離れるか、目と耳を封印していなさい」
「何かおかしくねえか!?」

 本末転倒なので着の身のまま行う事にした。それに放っておいたらエミリアは普通に脱ぎそうだし、更にそのまま襲ってくる可能性も高い。
 気を取り直し、俺は助けられて驚いた演技をするエミリアに向かって声をかけた。

「どうやら助けてくれたようだけど、私をどうする気!」
「えーと、俺は冒険者で、偶然ここに来たら君がいたんだ。それで眺めていたらー……」
「覗いていたの!? この……へ……へんー……くっ! 演技とはいえ、シリウス様にそのような暴言を吐くのは従者として……」
「カットな」

 中々迫真に迫る演技だと思えば……これである。
 エミリアの魂胆はわかっているのだが欲望に忠実過ぎた結果、俺を罵倒しなければならないのを忘れていたようだ。
 しかしこのまま止めたら泣きそうな気がするので、もう一度やり直す事にする。

 というわけで、テイク2。

「覗いていたの!? このへ…………い! それ以上近づいたら燃やします!」
「覗いていたのは謝るよ。だけど、月を背に沐浴する君の姿が綺麗で見惚れていたんだ」

 レウスはこの後、姉達と見比べるような台詞を言ってしまったからな。
 一例として見せる為に、俺は余計な事を口にせず、相手を見ないように顔を背けてから着ている上着をそっと差し出せばー……。

「はい、全て許します! 助けていただきありがとうございます!」

 感極まったエミリアが胸元に飛び込んできた。
 うん……予想通りの展開だ。そもそもエミリアは、これを狙ってやりたいと言い出したのだろう。
 尻尾を振り回しながら俺の胸元に顔を押し付けてくるエミリアの頭をとりあえず撫でてやったが、こんな結果でレウスが納得できる筈もなく。

「いや、おかしいだろ! それどう見ても兄貴と姉ちゃんだからじゃないか!」
「うふふ……当然よ」

 しかし綺麗だと言われ、機嫌が最高潮なエミリアには言葉が届いていないようだ。
 しばらく撫でてやるとようやく離れたが、エミリアは余韻に浸って動かなくなったので、これ以上の継続は不可能のようだ。

 それからレウスの要望もあってリースとフィアでも試したが、二人もエミリアと同じように喜ぶだけであった。もはやただの戯れみたいなものである。
 結局、やはり別人だから意味がないという結論となり、実演は取り止めとなった。
 しかしこのままではレウスの質問に答えていないと思うので、俺は自分の意見を伝えておく。

「まあ女性に見惚れてしまったのはお前の……男の本能もあると思うから、止めろとはっきり言えない。見てしまったのならそっと視線を外して、上に羽織る物を差し出すのが礼儀だろうな」
「つまり、兄貴が姉ちゃん達にやった事だな」
「そういうことだ。しかし相手が裸と言う状況からして、どう言い繕っても叩かれる可能性があるのは覚えておきなさい。こういうものは戦いと一緒で常に変化するし、なにより経験が大事だからな」
「確かに、俺はこういう事に関して経験が少ないもんな」
「ただ、お前は間違った事を口走ったかもしれないが、その子を助けた行動は間違えていないぞ。また会えるかわからないが、再会できたらしっかりと謝ればそれでいいさ」
「そっか……そうだよな。叩かれたけど、あの子が無事で良かったぜ!」

 ここで助けなければ良かったと思わないのがレウスの良いところだろう。
 素直過ぎて余計な事を口走ったり、興味のない事にはあまり目を向けない天然だが、困った人は助けようとする正義感溢れる男だからな。

「あ、ちなみに謝っても相手が理不尽な事を言い出したのなら、ちゃんと言い返してやれ。そんな礼儀知らずに遠慮なんかするんじゃないぞ」
「おう、わかったぜ!」

 ようやくいつもの調子に戻ったので、レウスはもう大丈夫だろう。

 落ち着いたところで思い出したが、レウスが見たという女の子は狐の獣人らしいが……。

「ところでレウス、その女の子は本当に尻尾が三つあったのか?」
「ああ、叩かれる直前にも見たけど、毛並みの良い尻尾が三つともちゃんと動いていたよ」
「そして狐耳……その女の子は狐尾族フォックステイルでしょうか?」
狐尾族フォックステイルなら昔一緒に飲んだ事があるわね。珍しい種族じゃないから、どこにいても不思議じゃないけど、狐尾族フォックステイルの尻尾は本来一つしかない筈よ」

 魔物は除き、形や毛の長さに違いはあれど、基本的にどの種族も尻尾は一つだ。
 中には突然変異によって二つの尻尾を持つ者もいるそうだが、三つなんて聞いた事すらない。

「是非見てみたいものだな」
「私も見てみたいな。わかりやすい特徴があるなら、この辺りで情報収集すれば見つかるかもしれないね」
「それはどうかしら? もしかしたらその子は希少な存在として狙われているかもしれないわ。姿を隠している可能性が高そうね」

 今まで様々なアホに狙われてきたであろう、希少なエルフであるフィアの言葉は非常に説得力があった。
 別に相手を困らせてまで見たいわけではないので、気が向いたら探すと言う方向性で落ち着いた。

「それじゃあ、寝る前に魚の処理を済ませるか。どう料理するかな?」
「俺は蒸し焼きがいい!」
「揚げるのはどうでしょうか?」
「私は団子にして食べたいな」
「偶には煮込むのはどうかしらね?」
「……見事にバラバラだな。ジャンケンで決めてくれ」

 背後で熾烈な争いが繰り広げられる中、俺は明日に備えて魚の処理を始めるのだった。
 ちなみに軍配が上がったのは、魚を捕ってきたレウスである。姉達の無言の圧力を受けて冷や汗を流していたが、何とか堪えて香草で包んだ蒸し焼きをリクエストしてきた。
 いや……どうやら無言の圧力が弱いせいだな。先程のレウスに見本を見せようとして、つい遊んでしまった詫びもあるらしい。おそらくジャンケンもわざと負けたのだろう。
 さて、香草を引っ張りだすとしますかね。





 次の日の朝、約束通り作った魚料理を食べた俺達は、野営地の片づけを済ませてから出発した。
 ここ数日は野営が続いているが、この調子で進めば今日中には宿場町へ着きそうである。

 いつもの訓練を続けながら馬車は街道を進み、森を通り抜け、そして小高い丘を越えたところで大きな川へと出た。

「川が見えたって事は、そろそろ宿場町が近いな」
「今日は久しぶりにベッドで眠れそうですね」
「なあ兄貴。俺達の目的地って、そこからもっと先なんだよな?」
「ああ、この川を沿って歩いて行けばいずれ湖が見えてくる筈だ」

 地図と事前に聞いた情報によれば、川の上流に向かってしばらく進めば、本日宿泊する予定である宿場町が見える筈だ。
 そこから更に上流へ向かえば、川の源流である湖に出るそうだが、聞けばその湖は地平線が見えない程に広いとか。
 湖はディーネ湖と呼ばれ、そこにはディーネ湖の恵みを受けて暮らしている大きな国があるそうだ。

「その湖にある国、パラードが目的地だ、湖を渡る船も多く見られ、港町でもある広い国だとさ」
「パラードか……懐かしいわね。前に一度だけ行った事があるけど、ディーネ湖は本当に広い湖よ。海とはまた違うから見る価値はあると思うわ」
「そういえばフィアさんは旅をしていましたね。国の名物とかありますか?」
「ええ、確かディーネ湖で捕れる魚介類が名物ね。独特な形をした魚が多いけど、中々美味しかったわ」
「独特な魚介類……楽しみだね」

 湖があまりにも広いので、海と見間違う冒険者が後を絶たないそうだが、水から全く塩気は感じられないので完全な淡水湖らしい。
 それゆえ独特な生態系があるらしく、海では見られない魚や生き物が大量に生息しているとか。
 そして魚介類と聞いて普段は和やかな目を鋭くさせているリースだが、実は俺も同じような目をしており、パラードへ行くのが楽しみだったりする。

「料理のし甲斐がありそうだな」
「おお! リース姉だけじゃなく兄貴の目も光ってるぜ!」
「到着が楽しみね。観光の際は、シリウス様の邪魔にならないように気を付けましょう!」
「おう!」
「うん!」
「これも貴方達が食いしん坊になった理由の一つみたいね……」

 フィアは若干呆れた表情をしつつも楽しそうにしているので、すっかり俺達に馴染んでいるようだな。
 そして諸々の期待を胸に俺達は進み、夕方前には宿場町へと辿り着いた。

 もはや定例みたいなものだが、馬車を引っ張るホクトを見て慌てる門番との一悶着を終え、町へ入った俺達は早速宿をとった。
 宿の経営者にホクトも部屋に入れたいと頼んでみたが、残念ながら断られてしまった。獣人なら一発なのだが、残念ながらここの経営者は人族なので無理のようだ。
 申し訳ないが、ホクトには馬小屋で我慢してもらうことにする。

「後でブラッシングしにくるからな」
「オン!」

 これもまた定例だが、他の馬を傅かせながらのんびりと休んでいるホクトを見届けてから、俺は部屋へと戻った。
 部屋に戻ると同時にレウスのお腹が盛大に鳴っていたので、俺達は宿内にある食堂へと向かった。

「この魚を使った定食を一つ」
「私も同じで。あ、大盛りでお願いします」
「この野菜の盛り合わせと、ワインを二本頂戴」
「俺はこの肉料理を五つ。全部大盛りで」
「ここに載っている料理を一通りお願いします」
「わ、わかりました……」

 ウエイトレスの顔が引きつっているのは、希少なエルフを連れている俺達か、それとも注文内容なのか……いや、この場合両方だろうな。
 そしてフィアが珍しくて周囲の視線を自然と集めてしまうが、俺達は気にすることなく注文した料理を口にしていた。

「ふむ……少し薄味だが、悪くない。特殊な香辛料を使っているようだな」
「ディーネ湖に自生する香草を取り寄せているらしいわ。他にも水が良いのか、ワインも味が円やかで美味しいわよ」
「お代わりくれ!」
「お代わりお願いします」

 そして家の食いしん坊達が最初のお代わりを注文したところで、俺達の前に二人の男が近寄ってきたのである。

「へぇ……こりゃあ珍しいなぁ。エルフ様だぜ?」
「だなぁ。噂通り、綺麗なもんだなぁ……」

 武器や防具を装備をしている点から冒険者だと思うが、ワインを片手に顔を真っ赤にさせているので、ただの酔っ払いのようだ。
 フィアを見て欲望のまま近づいてきたのだろう。

「あら、褒めてくれてありがとう」
「あんたみたいな美人なら当然だろ?」
「そんな子供を相手にしていないで、俺達と飲もうぜ?」
「悪いけど、私はこの人の恋人だから駄目よ」

 フィアはあっさり振りながら俺の腕に組みついてきたので、男達は俺を睨んでくるが……。

「おい、お前みたいな子供がー……」
「何か?」
「「うっ!?」」

 少し殺気を含ませた睨みで威嚇してやれば、男達は酔っているのにも関わらず一歩下がっていた。
 このレベルで怯むって事は、冒険者としては中の下と言ったところだろうか?

「シリウス様に何かご用でしょうか?」
「兄貴を睨むなら、先に俺を睨んでからにしろよ!」
「…………もぐもぐ」

 更にエミリアの笑顔の圧力(パーフェクトスマイル)と、レウスの獰猛な圧力、そして食事を邪魔されたリースからの無言の圧力を同時に受け、男達は酔いが醒めたかのように顔を引きつらせながら逃げ出した。
 ふむ、実力差を理解できる程度の腕はあるようだな。

「ありがとう。ああいう酔っ払いはしつこいから助かるわ」
「君が恋人になった以上は当然だろうし、顔を隠す必要が無いと言い出したのは俺だからな」

 例えフィアがいなくても、俺達は冒険者成り立ての若造にしか見えないし、エルフ程ではないが希少な銀狼族のエミリアとレウスがいるから絡まれる可能性は高いのだ。
 一々動揺せずに、この程度は簡単にあしらえるようにならないとな。

 礼とばかりにフィアが全員にワインを振る舞い、再び和やかな食事に戻ってしばらくすると、少し離れたテーブルから大きな音が響き渡った。
 振り向けば、先程こちらに絡んできた男達が今度はウエイトレスに絡んでいるようだった。足元を見れば皿と中身である料理が床に散らばっているので、聞こえた大きな音はあれだろう。

「あいつ等……懲りてねえな」
「フィアに振られて矛先が変わったか」
「面倒な連中ねぇ……」

 俺達が原因の一端も担っているようだし、これ以上の騒ぎにならない内に叩き出すとしよう。
 そう決めて立ち上がろうとしたが、俺より先にレウスが立ち上がって手で制してきたのである。

「俺が行くよ兄貴。被害を出さないように叩き出す練習だ」
「……そうか。気をつけるんだぞ」
「やり過ぎちゃ駄目よ」
「おう!」

 流石にこれだけ雑多な場所で大剣は振り回せないので、剣を置いて男達の下へ向かうレウスを見送った。
 おそらく他に仲間がいたのだろう、男達は全部で四人に増えているようだが、レウスは正面から堂々と近づいてウエイトレスの腕を掴んでいる男を睨みつけた。

「待てよ!」
「待て!」

 ……どうやら、ウエイトレスを助けようとしたのはレウスだけではなかったようだ。
 声色からして男だろう。レウスより少しだけ背が低く、全身マントにフードを被った男がレウスと全く同じポーズで固まっていたのである。
 それにしても、まるで打ち合わせしていたかのように同時だったな。

「あれ? お前……」
「……君は?」

 そして顔を見合わせていたが、何か様子が変である。まるでお互いを知っているかのような反応なのだ。
 フードを被っているが、あんな知り合いはー……まてよ?

「……君は下がっていてくれ。彼女は私が助けよう」
「いや、俺ならこんな連中簡単だから、そっちこそ下がっていろよ。それに、こいつ等のせいで俺の料理が落とされたみたいだしな」

 床にぶちまけた料理はおそらくレウスが頼んでいた料理だ。
 その腹いせもあるかもしれないが、自ら向かったのはあくまでウエイトレスを助ける為だろう。

「おい、止めといて無視すんな! って、よく見ればお前さっきの連中の仲間じゃねえか!」
「何で俺達の邪魔すんだよ! てめえには関係ないだろうが!」
「一緒に酒飲もうとしてるだけだっての!」

 人数も増え、先程以上に酒が入っているのか、今度はレウスの圧力に動じず睨みつけていた。
 しかし、そんな男達をレウスは全く気にせず、隣に立つ男としばらく視線を交わし続けていたが……。

「思うのだが、別に一人でやる必要はないと思わないか?」
「そうだな。一緒にやるか」

 二人でやれば良いと結論を出し、絡んできた男達へ拳を鳴らしながら近づいていた。

「シリウス様。あのままでよろしいのですか?」
「あの二人なら問題ないさ。それよりエミリアはワインを飲みすぎるなよ。酔った勢いでベッドに入ってくるつもりじゃないだろうな?」
「……ソンナコトハゴザイマセン」
「だから飲むなよ!」

 図星だったのだろう、誤魔化すようにワインを飲むエミリアを止めるのは少し面倒である。
 こんな状態でもマイペースに飲み食いし続けられるリースとフィアは、レウスなら大丈夫だろうと信頼しているからだろう。そうに違いない……そう思いたい。

 レウス達のやりとりは完全に見せ物と化しているらしく、周囲の連中は楽しそうに野次を飛ばし始めていた。

「くそ、たかが二人だ!」
「俺達に喧嘩売ってきたんだ。痛い目に遇わせてやらぁ!」
「では私は右の二人を」
「俺は左だな」

 遂に喧嘩は始まったが……まあ予想通りの展開であった。
 レウスは殴りかかってきた男の拳を受け止めてから足を払って転ばせ、床に落ちた料理に男の顔面を叩きつけていた。

「ぐあっ!? て、てめえ!」
「勿体ないだろ! 食え!」

 そうだな、食べ物を粗末にする奴には当然の処置だ。俺は内心でレウスを褒めた。
 そしてフードを被った男の方に目を向けてみると……。

「くそ! 何で当たらねえ!」
「動きが単調だぞ」

 相手はナイフを振るっているがフードの男は徒手空拳のまま軽々と受け流していた。二人同時に攻められても、鮮やかな受け流しで危なげなく戦っている。
 あの絶妙な受け流し……間違いないようだ。


 それから数分足らずで男達は倒され、ありきたりな発言と共に逃げ出した。
 周囲の人達が囃したてる中、ウエイトレスは何度も頭を下げているが……。

「当然の事をしただけさ」
「おう、それより騒がせて悪かったな」

 レウスとフードの男は気にするなと言わんばかりに手を振り、落ちていた料理を片付け始めていた。
 流石にそこまで任せられないとウエイトレスに止められたので、周囲からの声援に応えながらレウスはこちらへと戻ってきた。

「ただいま兄貴」
「おかえり。椅子やテーブルは散らかしているが、破損はさせていないな。中々上手い戦い方だったぞ」
「へへ、だけどそれはこいつの御蔭だよ。俺一人だったらもっと被害があったかも」
「それは私の台詞だ。君が半分受け持ってくれたから、随分と楽に戦えたよ」

 そしてフードの男も一緒に来ていたが、レウスと仲が良さそうに語り合う光景を見てエミリアが首を傾げていた。

「レウス、こちらの人は一体? 妙に親し気だけど、いつの間に仲良くなったのかしら?」
「あ、そっか。姉ちゃん達は直接会ってないもんな。ほら、闘武祭の予選で兄貴と残った選手がいたじゃないか」
「あの時はコンと名乗っていました」

 名前を聞いて思い出したのか、女性陣も納得したようだ。

 コン……俺とレウスが出場した闘武祭に鉄仮面で顔を隠していた選手だ。二回戦でレウスと戦って破れ、それきりだったな。

 顔を知らないのにレウスがコンだとわかったのは、一度戦ったゆえに匂いを覚えていたからだろう。それにコンはレウスの剣を一度とはいえ完全に受け流したのだから、覚えていても不思議ではない。
 俺は魔力の反応と、体の動きからコンだと判明した。あの時は、素晴らしい技術だと感心していたからな。

「お久しぶりです。あの時は怪我を見ていただき、本当に助かりました」

 鉄仮面やフードで顔を隠している点から、コンは己の素性を隠したい者なのだろう。おそらくコンも偽名だと思うが、無理をして聞く必要はあるまい。
 それより、先程の戦いから見るにレウスとは息が合うようだな。
 こうして偶然だが再会できたし、これも何かの縁だ。
 正体は置いといて、食事に誘ってみようか。

「気にしないでくれ。良ければ俺達とー……」
「兄上!」

 その時、雑多の中でもはっきり聞き取れる女性の声が響き、コンと同じフード付きのマントを着けた女性がこちらへとやってきた。

「兄上、この騒ぎは一体? 何かあったのですか!」
「不埒な相手を退治しただけさ。ああ、紹介します。こちらは私の妹です」
「ちょ、いきなり何!? この人達は誰よ!」
「こら、言葉遣いが悪いぞ。私がお世話になった人だから、淑女らしい行動をだな……」
「う……はい。えーと、初めまして、妹のー……」

 フードから僅かに見える赤い髪の女性は、コンに窘められてゆっくりと頭を下げた後、俺達をー……レウスを見て動きを止めた。

「あ……」
「ん?」

「「ああぁぁ――っ!?」」

 そしてレウスと妹は大声を出しながら、お互いを指差し合っていた。

「変態覗き魔!?」
「俺を叩いた女!?」


 ……これは、絶対に食事をする必要がありそうだ。


 おまけ



「いや、おかしいだろ! それどう見ても兄貴と姉ちゃんだからじゃないか!」
「うふふ……当然よ」

 しかし綺麗だと言われ、機嫌が最高潮なエミリアには言葉が届いていないようだ。
 しばらく撫でてやるとようやく離れたが、エミリアは余韻に浸って動かなくなったので、これ以上の継続は不可能のようだ。

「姉ちゃん。おーい、帰ってこいよぉ!」
「うふふ……」
「駄目だこりゃ。じゃあ今度はリース姉が頼む!」
「え、私!?」


 テイク3。


 先程と同じ台詞と行動をリースに行えば……。

「え、演技なのはわかっていても、シリウスさんに綺麗って言われると照れるなぁ」
「これは演技だが、言葉は本心だぞ」
「そ、そっか。えへへ……綺麗かぁ」
「しっかりしろリース姉! やっぱり兄貴だと違い過ぎて参考にならないのかな?」
「ふふ……なら私に任せておきなさい。女性の本当の姿を見せてあげるわ」
「そうか! フィア姉なら綺麗って言われ慣れているもんな!」


 テイク4。


 向かい合ったフィアに綺麗だと囁けば……。

「じゃあ行きましょうか」
「は?」

 俺の腕を掴み、馬車へ向かって歩き出したのである。

「あれ……どこ行くんだフィア姉?」
「覚えておきなさいレウス。男は常に求めるもの。そして求められて女性が許可すれば、燃える夜が始まるのよ」
「なるほど! って、いや、やっぱりわからねえよ。何か違うだろ!?」
「そうだレウス! これは特殊な例だから参考にするんじゃないぞ!」
「さあエミリアとリースもいらっしゃい。今日こそ三人で攻めるわよ!」
「はい!」
「う……うん」

 勿論冗談なので、俺は馬車に押し込まれる前に解放されるのだった。
 エミリアが本気で残念がっていたが……冗談だろう、うん。








 今日のホクト



 テイク5


「オン!」
「いや、お前はオスだろう」
「オン!」
「わかったよ。そうだな……お前の毛並み、最高に綺麗だよ」
「クゥーン……」

 ご主人様に褒められ、ホクト君は腹を見せるように寝転がっていました。
 これは服従の意味と、好きにしてくれと全てを委ねている時に行うポーズでもあるのです。
 とりあえず……。

「クゥーン……」
「ほら、前足上げなさい」

 ご主人様はブラッシングをする事にしました。
 つまり、いつもの事ですね。

「今度は尻尾だぞ」
「オン!」

「ホクトさん、俺と模擬戦しようよ」
「ガルルルッ!」
「はい! ごめんなさい! ブラッシングの邪魔してごめんなさい!」

 今日もシリウス一家は平和なのでした。









 暑い時期が続き、色々と調子が狂っている気がしますが、いつもの調子に戻せた……と思います。
 特に女性陣が暴走気味ですが、お気になさらず。

 次回の更新は六日後……の予定です。
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