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06_乱入!異世界魔物!

 ドバドバドバドバ


 ここは孤児院の建物の裏にある菜園の横の草むらだ。

 自分に水魔法の適正があると知ってからもう4日目、練習とレベルアップのために水魔法を使いたいからと、とりあえず菜園の野菜に作った水をやっていたが、一通り水やりも終わったので(というか菜園当番が水やりして追加してもよさそうなところだけやった)横の草むらに適当に水を出している。


「レベルアップしないなあー」


 レベルアップするとどうなるかはわからないが、おそらく威力があがるのだろう。

 ただわかったこともある。

 クリエイトウォーターで水球を作り、そこから水を指定の方向へ飛ばすのが当たり前だと思っていたからそうだっただけであり、水球の形である必要もないし方向指定もやらなくてもできることがわかった。おそらく自分がすぐあのやり方で水魔法を発現できたのも、この世界で過去にやっている人を見たことがあったことと、あのやり方は魔力の流れ的なものが効率化されているのだろう。

 今はむしろ色々めんどくさいので手のひらを地面に向けてそこから水をだすやり方を覚えた。壊れた蛇口のようにひたすら草むらに水をやっている。


「あ、こんなとこにいたー」

 結局レベルアップする前にベイリャに見つかった。

 今日は休みの日だ。マリィ達低学年は特に仕事もなく遊んですごせる。

 とはいっても10歳前後になると将来を考えてこの休みの日には孤児院の外にでて簡単な仕事をするものもいるし、孤児院を確実に出ることになる15歳に近づくと休み関係なく職探しだ。

 職が決まったものは孤児院から出ていくので実際に15歳まで孤児院に残っているものは非常に稀なようだ。ということもあって休みの日は孤児院の敷地内の人口密度は低く低学年ばかりの状況である。


 低学年のボス気取りだったマリィは休みの日が非常に好きだった。

 面倒を見ようとしてくる年上もいなく、本当に孤児院のボスになった気になれるからだ。

 だが、記憶が戻った今はそんな気にはなれない。

 それより気になっているのは魔法のことや街のこと、将来のことだ。

 記憶の戻った直後は怒涛の日々であまり考えれていなかったが少し落ち着いてきたところでの休みだ。

 自由な時間なのであれば魔法の訓練や情報収集にあたりたい。


「朝から魔法の練習してたの?」

「ああ、天才でも努力はしないといけないからね」

「ふーん、で、今日は何する?隠れ鬼ごっこ?」

 隠れ鬼ごっこというのはここではメジャーな遊びだ。鬼ごっことかくれんぼを合わせたような遊びで結構楽しい。

 しかし、せっかくの完全自由時間の日だ、もっと有意義に使いたい。というか情報収集したい。


「いや、そろそろ私たちも仕事探しで街にでてもいいんじゃないかなって思ってたとこだ。」

 そんな話をしながら建物の方に向かうと他の子たちも遊ぼうと集まってきた。

「外に出るのはみんな10歳くらいからだよ。許可でないよ」

「うーん、一応ダメ元で頼んでみるかな」


 まあ、駄目だろうな。自分は前世の記憶で大人だとしても、それは他者からはわからないし、ばらしても信じてもらえるかと言われれば所詮子供の戯言だ。

 それに実際に体は子供なのだ7歳といえば小1?小2?そのくらいの子どもが一人で街を歩くってはじめてのお使いじゃん。

 あれは安全な現代日本だったから成り立つわけで、こんなファンタジー世界で成り立つわけがない。とはいっても何も行動しないわけにもいかない。


「どうした、なにかあったか?」

 結局みんな、なんだなんだと後ろについてきてしまったので、ガットルンは少し怪訝な顔で話しかけてきた。


「実は私もそろそろお仕事探そうかと思って、街に出てもいい?」

「お前らだけで?駄目に決まってるだろ。一人ででていいのは10歳からだ。上の子が誰かついてたらでてもいいが。そもそも職探しってどこに行きたいんだ?」

「冒険者ギルドいきたい!」

 ベイリャが横から元気に口を出してきた。

 いやいや、最終的にあこがれの冒険者になるとしても、こんな子供がギルドにいったらあぶねぇだろ。一瞬で荒くれ冒険者にいちゃもんつけられてジエンドだ。


「ギルドだったら。まあ・・・職探ししている上の子が引率するんだったらいいか」

「え、いいのかよ!?」

 冒険者ギルドだぞ、あのファンタジー世界で荒くれものが跋扈し、酒場が併設されているあれだぞ。

「やったー、じゃあ明日いけないか聞いてみる!」

 勝手に話が進んでしまった。


 もうこの時間だと上の子は既に外に出ているが、明日も休みの日なので問題ない。

 明日にはギルドにいけるのか、さすがに冒険者登録とまでいかないだろうが、色々街も見学させてもらおう。

 それはそれで楽しみになってきた。

「さすがに上の子でもお前らを連れまわすのは危ないな、明日だったら俺が連れてってやる。絶対に勝手な行動をするなよ。」

 ということで明日の予定は決まったが今日の予定は特にない。

 大人と話せる時間は限られているのでもう少し色々聞きたかったのだが、ガットルン先生は仕事があるようでしっしと追い払われてしまった。


 さて、することがなくなってしまった。

 明日は楽しみだが、まだ午前中だ。とりあえずお昼まで天気もいいし外で遊ぶか。


「お前ら、今日は空き地で絵でもかくぞ。」

 ローズガーデン孤児院は建物もでかいが敷地もでかい。

 敷地内にはただっぴろい空き地が建物横にある。

 ちなみに菜園や洗い場などは裏手の方だ。1.5mくらいの石塀で囲われていて正面玄関と裏手に勝手口があり、裏手は民家の隙間の細い道を抜けれるようになっている。

「んじゃ、好きなの描くぞ。」

 適当に拾ってきた棒を使って地面に書き始める。子供たちが踏みしめて遊ぶこの空き地は草も生えていないので見た目は学校の土のグラウンドだ。


「マリィ、それなあに?」

 ハルトンが不思議そうな顔をしてのぞき込んでくる。

「これは夢のような道具をいっぱい出してくれる青いたぬきだ!」

「ファーーーーー、なにそれでござす。」

「お前らじゃわからねーだろうな。他にもいっぱいかけるぜ。」

 他にもこっちでは食べたことのないパンに顔をつけたキャラクターとか子供の好きそうなものを描いた。

 童心に戻ってこういうのも悪くないな。


「ほらほら、うまいだろ~。ベイリャは何描いてんだ?」

 ベイリャの方の地面に目を向けてみると・・・

「キモッ!」

 こいつは何を描いてるんだ!?

 そこにはちょっとしたホラーっぽい気味の悪い生物?が描かれていた。精神大丈夫か。

「これ、マグロだよ。」

「私、もう二度とマグロくわねーわ」

「ファーーーーー」

「ベイリャ、それ図鑑と結構違ってない?」

 それにしても、なんかじわじわくる絵だな・・・やっぱり魔物なんて食うもんじゃないな。

 そんなことを考えながら再び筆(枝)を取ろうとした瞬間だった。


「魔物だ!!!!」

 玄関側の方で声が聞こえて、急にガヤガヤうるさくなった。

 マリィの脳裏に幼少のころの記憶が一瞬フラシュバックする。

 大好きだった両親。

 村を襲った青く巨大で暴虐な化け物。

 あのようなことはレアケースではなかったのか、確かあの時、こんな事故のようなスタンピードは起きた事例がないとか、大陸の方でも聞いたことがないとか、そんなことを警察っぽい人たちが言っていた。

 本当に運が悪かったんだ、と諦めていたのに、そんな宝くじにあたるようなことが人生で2回も起きるなんて。

 どうしよう。どうしよう。


「魔物だって!」

 マリィは逃げるかどうか、あたふたしていたが、その横を冒険者志望のベイリャがダッと駆けていく。


 一瞬迷ったが

「私も行く!」

 ベイリャもそうだが、同じ釜の飯を食った孤児院のみんなを見捨てるなんて私にはできない。せめて、この水魔法で時間くらい稼ぐ!決意の固い目でマリィも走り出した。



「ビンゴだー!!!」

 悲壮感あふれる顔で到着した先には白い毛玉がぴょんぴょんしていた。


「なにあれ?」

「綺麗な白ビンゴだね。飼いビンゴかな?」

 ベイリャは近寄って行って他の子どもたちとビンゴ?をわしゃわしゃしに行ったので隣のハルトンが答えてくれる。


「初めて見た。ビンゴ?っていう魔物なのか?ハルトンは見たことある?」

「うん、ウサギの魔物だって聞いたことあるよ。前に街で飼ってる人のやつみたことある!そこのやつよりちょっと大きかったかな?」

 なんだよ、ただのウサギかよ、心配して損したじゃねーか。


「危険なのか?」

「さあ?ワンちゃんとかと一緒じゃない?」

 さすがに魔物と言われると危ない気もするが、目の前の奴は子供?なのか大きさも小型犬と変わらないくらいだし、そもそも既に孤児院の子どもたちのうち、好奇心の強い子たちが取り囲んで触っている。


 マリィもその輪に加わりのぞき込んでみた。

 近くで見るとほんとに毛玉だ。毛は全部白くとても長い。

 とがった耳もあるが毛でかなりおおわれている感じだ。

 毛玉の中でうるうるした目がこっちを見て目が合った気がした。


 次の瞬間。

「うわっ」

 毛玉がマリィめがけてぴょーんと体当たりしてきて顔面に食らった。

「こいつ!やったなー!」

 足元でぴょんぴょん跳ねる毛玉だったが、マリィはそれをシュッ!っと捕まえた。

 ワシャワシャモフモフ

「おー、触り心地いいぞ」

「いいなー、私も撫でさせてよー」

 毛玉はちょっと嫌そうに体くねらせると


 ぴょーんぴょん


 マリィの手をうまくすり抜けてまた跳ねまわりだした。

「捕まえろー!」

「はやいよー」

「まてーー」

 そこからはもう追いかけっこだ。


 ビンゴは魔物らしく?素早い動きで子供たちを翻弄する。

「ふふ、私から逃げようたってそうはいかないぜ」

「マリィだけなんで捕まえれるのよ。私にも触らせてー」

 マリィの大人顔負けの身体能力には勝てず、すぐ捕まってはまたすり抜けて逃げる。

 ベイリャにも触らせてやるかと渡そうとしたところで建物の方から走ってくる音がした。


「お前たち、騒がしいが何かあったかー?」

 ガットルン先生が何事かと飛び出してきた。

「みつかっちゃうっ!」

 誰かの一言をきっかけに子供たちがフォーメーションを組んでビンゴを後ろに隠した。


「こらっ、お前らなに隠してるんだ!」

「何も隠してないよ!遊んでるだけだから大丈夫だよ!」

 無論、子供の戯言など聞くわけもなくガットルンは近づいてくる。

「ほら、ガットルン先生あっちであそんでよっ!」

「なんだなんだ、って力つよっ!こら!やめろマリィ」

 結局マリィの引っ張りもむなしく押し切られてガットルンはずかずか進んでいく。

 そして最終防衛ラインとしてベイリャが仁王立ちしている。


「何もいないよ!」


 いやいやさすがに無理があるだろ、お前の体じゃ全く隠せてないし。

「なんだビンゴじゃないか、飼いビンゴが脱走したやつか?お前らこれどこで拾ってきたんだよ」

「門のところから入ってきた!」

 ガットルンは特に怒るわけでもなく、あせるわけでもなく淡々と状況を聞いている。

 あんまし危険じゃないのかな、この魔物。


「ガットルン先生」

「どうしたマリィ、お、首輪ちゃんとあるな。」

「ビンゴって魔物なんでしょ?大丈夫なの?」

「ああ、初めて見た子もいたのか。ビンゴは魔物だけど跳ねるだけで力もないし、今飼われている奴らは品種改良されたペット用がほとんどだ。犬や猫ほどじゃないが、結構飼われているぞ。大陸の方だといろんな色がいるらしいが、ここらはほとんど白だな。」


 魔物も品種改良とかあるってことか、たしかにパルーンの乳を飲んでいるくらいだから魔物も家畜化しているわけだしペットがいるのも当然か。

「こいつは毛並みが結構長いから高級品種っぽいな。ちょっと出てくるからお前ら、逃がさないように見ておけよ。」


 その後、はみんなで白いビンゴと遊んだがしばらくすると警察っぽい人をガットルンが連れてきてビンゴは持っていかれてしまった。

「あのビンゴどうなるのかな。」

「あの大きさだから、そんなに遠くの家のやつじゃないだろうし、すぐ飼い主みつかるだろうな」

 よく考えたらそりゃそうだな、あんなちっこいのが遠くまで走り回れるわけないし、近所の奴なのだろう。

「また遊びたいね~」

「ふぁーーー、孤児院でも飼おうぜー」

 そんなことを言っていたらお昼の鐘がなった。

「ごはん、ごはん」



 キャラクター紹介

 ガットルン=ローズガーデン(34歳)

 DIY大好きおじさん

 性別:男

 種族:人間

 レベル:Lv9

 職業レベル:製造職人Lv3、他

 スキル:なし

 仕事:孤児院の職員

 趣味:DIY

 生真面目な性格で少年時代はおとなしかった。

 就職先として住み込みで働かせてくれる大工工房に行き、こつこつ技術を習得していっていたのだが工房が潰れてしまい、その後は孤児院もどって職員となった。

 元々手先は器用で職人として就職したのは偶然だったものの天職だと思っていた。

 今は趣味としてDIYで孤児院の建物保守や道具作りなどもできているので趣味欲は満足しているが、クソガキにすぐ壊されるのが最近の悩み。



まだ暫くは幼少期のプロローグが続く予定です。

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