21_魔法の授業
執事のラブロフ、こいつはなかなか見どころがある。
私たちが孤児院出身ということで恐らく学力はすごい低いだろうと見積もってか最初は簡単な算数の問題から始まって、じょじょに難しくしていったが私が解きまくるせいで参考書がなくなって、途中からはかなり実務よりの問題になった。
そして私は前世では支店で事務員だったから、こんなキャッシュフローを求める問題など余裕なのだ。執事で総務っていっていたから城での金管理も一部任されているのだろう。
変に大学レベルの方程式とか出されていたら無理だったが、これならドやれる!
ナイス采配!
そんなところで一旦午前の授業が終わった。
気になっていたが途中から入ってきた騎士風の恰好をしたお姉さん二人がこっちにくる。一人はたしか昨日の謁見の時にマリアンヌの護衛だった一人かな?服が違うけど多分そう。
「マリィ様、本日より護衛および魔法の講師をさせていただきます三等騎士のネッシーです」
「同じく三等騎士のネイアです」
「マリィだよ。よろしく!」
護衛とはいうが城で護衛なんて必要ないだろうし、子供相手だし、要は貴族付きの下っ端だ。プロのSPって雰囲気でもないし。
三等ってどのくらいかわかんないけど、見た目的にも若そうだし、子供のお世話役にされるくらいだから多分騎士団の中でも落ちこぼれとかなのかな?
ネイアは肩くらい長さの緑髪で身長は普通、ネッシーの方は結構でかくて鍛えてる感じの体つき、薄い水色の髪は肩より少し下まで伸びている。
ひとまず子供だからって舐められないようにしないとな。
「そっちのお姉さんは昨日いた人?」
「そうですよ~よく覚えてましたね」
「おばあさまの護衛じゃなかったの?」
「・・・・・」
どうやら触れてはいけなかったらしい。これは多分、体よく左遷されたな。
「えっと、私は若いのでマリィ様とも年が近く、適任でしたから!適材適所ってやつです!」
「ふ~ん、じゃあ優秀なんだね。っていうことは三等騎士ってすごいの?」
「ま、まあ・・・我が騎士団では最初に貰う職位ですけど・・・」
「ふん、そもそも水月に所属している時点で私たちの実力はお墨付きなのです。そのうちお嬢様にもわかっていただけますよ」
こっちのネッシーってやつはなかなか気が強そうだ。完全に私のことを子ども扱いしてきてやがる。
「お嬢様、午後からはこちらの騎士二名に魔法教育の依頼がされておりますのでお願いします。」
「シロッコは?」
「私、毎日午後は使用人仮採用で仕事するんだよ!お給料も出るんだって!」
「え?もう給料でるの?私は?」
「お嬢様は大学へ行くまでしっかりと学んでくださいませ」
「お小遣いとかは・・・」
これから勉強漬けの毎日かよ・・と気落ちしながらもとりあえず、お昼ごはんを食べに食堂に向かう。
護衛騎士の二人は城の中も知っているようで一緒にそのまま食堂に向かう。ちなみにラブロフは本来授業とかは本業じゃないので「今日は残業確定かあ」と呟きながら終わるなり走ってどこかにいってしまった。がんばれ執事。
「ん?お嬢様は自室で食べるんじゃないのか?」
「そういうものなの?めんどいから食堂でいいや」
とりあえず食堂で自分の分をもらってシロッコと一緒に食べる。それなりに美味しいけど確かにメニュー選べないっていう欠点はあるんだよなあ。
そういえば確か頼めば別メニューになるって言ってたような。ま、いっか。
護衛騎士の二人も私たちの向かいに座って同じメニューを食べている。今日はシチューだ。午後に向かってしっかり食べるぞ。
「そういえば、魔法の授業って何をやるんだ?」
「お嬢様、昨日と言葉遣い違ってないですか」
「最初は座学だな。お嬢様には魔法の体系とか、どのような種類があるかとか、徐々に学んでもらうが、まずは基礎教育だ」
「それって教科書とかあるの?」
ネッシーとネイアは二人して顔を見合わせている。
どうやら失念していたらしい。
こいつら、とりあえず来ましたってだけで本気で教える気ないだろ。やっぱ落ちこぼれじゃねーか。
「コホン、昨日の今日でしたので、まだ用意ができておりません。今日は実技にしましょう」
「授業はまあ、いいんだけど、その護衛っていうのはどういうシフトなんだ?一日中ついてるのか?城の中はさすがに安全じゃないの?」
「う~ん、そこまで正確な指示はきていないですね。今日はとりあえず城にいってお守り・・・じゃなかった、護衛してこいしか言われていないので、とりあえず午後の授業を終わって城に送り届けるまでかな?明日以降については確認しておきますが、多分外に出るような日でなければ私かネッシーが午前の授業前に来て同じように夕方まで護衛になると思います。四六時中一緒にいるというところまではしませんよ。」
かなり自由度が高そう。騎士団っていうからもっとピシッとしてるのかと思ったけど、こいつらだけかは不明だが雰囲気的には緩そうだ。
護衛としては不安感があるが、そもそもお守りって言っちゃってたし、本当の意味で護衛役ということではなく、勉強のお目付け的なノリなんだろうな。
まあ、過保護に夜まで付きまとわれても嫌だからよかった。
お昼休憩のあとシロッコとは別れて騎士二人についていく。
「訓練場って遠いのか?」
「馬車ですぐですよ。こういう時にすぐ馬車が使えるのは良いですね。」
「すいませーん、公用車ってここで借りればいいんですよね、夕方には戻ります」
城に来た時のような豪華な馬車ではなく4人乗りの普通の馬車を城の入り口で貸し出されそのまま街のほうへ、騎士団の訓練場にいくらしい。
「つきました」
「おー、ここか!ってなにもないじゃん」
着いたところは何というか高い塀で囲われただけの、だだっ広いの空間、下も砂地で舗装とかされていない。騎士の訓練だからアリーナみたいなのじゃないのか。
「そんなことないですよ!我が騎士団だけが使える最高性能の訓練場です!あれをみてください!」
言われた方を見ると、十字に手をあげた人型の練習模型のようなものが3台おいてある。サイズは普通の成人よりちょっと大きいくらいかな。ただ、下半身は普通に二本足で立っていて吊るされているというよりは構えている?みたいな。
「あれは、この国でも珍しい超高級最新式かかしRX―04(アールエックスフォー)ですよ。これが3台も!わが騎士団の凄さがわかりましたか?」
そう言われてもなあ、訓練に使うんだろうけど、子供の私がどういうものか知っているわけないだろ。
「かかしはわかったけど、全然人いないじゃん。騎士団は訓練さぼってんの?」
「そんなわけありません!今日はたまたま!たまたまです!」
「お、ネッシーとネイア、訓練か?精が出るなあ」
「あ、ローモンドさん。こんにちは、訓練ですか?」
「こんないい天気にそんなわけないだろ、今日はちょっと回して勝ってきたのさ。ほら土産の菓子だ。じゃ、宿舎に帰って晩飯まで昼寝だな」
「ねぇ、今のは?騎士団の人だよね?」
「・・・・・・」
「ねぇ、回すって何?何に勝ったらお菓子が買えるの?ねぇねぇ、騎士団の人ってお昼から何かを回してるんだね、ねぇ、ねぇ」
「・・・・・・」
実は知ってて言ってる。回すってのはあれだ。この世界ではギャンブルに行ってきたことを指す言葉で、おそらく菓子は景品の一部なんだろう。
それにしてもこの騎士団大丈夫か?エリート集団っていう話はなんだったんだ。
「子供は知らなくていい」
「そ、そう、きっと何かの訓練をしていたんじゃないかな?わかんないけど!」
「ほら、クッキーやるから」
「とりあえず貰えるものは貰っておくけど、ちゃんと強いんだよね?」
「当たり前だ!強さだけは本物だ!」
他は偽物なのかよ。
「じゃあ、魔法の訓練だな」
「そう!そうでした!訓練ですよ!お嬢様はどうすれば魔法を強くできるか知っていますか?」
二人とも真剣な眼差しで聞いてくるけど、ざっくりすぎる質問だな。たしか前にヴェストリアは自然にレベルが上がるとか言ってたけど、それ以外だと。
「魔物を倒す?」
「そうです!一番いいのは魔物を倒すことです」
「だが、かなりの危険を伴う。騎士団や冒険者でなければ魔物はたおせん。まずは最低限弱い魔物を倒せるようにならなければスタートラインにすら立てない。そんな時どうする?」
「年齢があがって勝手に強くなる?」
「それもある。が、肉体成長による魔力の向上はすぐに終わりが来る。魔物も危険。そうなればどうするか、こうやって訓練場で訓練すれば、魔物を倒す実践ほどではないが勿論強くなれるんだ」
「普通に脳筋かよ!模擬戦するってこと!?」
「そうだぞ。戦闘ではどんなものも肉体を強化するために自然と魔法を使う。使い込むほど強くなれるからな。模擬戦が一番だ」
「いや、基礎訓練もありますよ」
「じゃあ、今日から早速模擬戦ってこと?」
「ふふふ、そうですね!今日は見るだけにしたいと考えていたが、お嬢様がやりたいってことで模擬戦にしましょう!」
「ちょっとネッシー」
「もちろん魔法はアリだよね?」
「ええ、もちろん!使えるのなら、ぜひ見せてください!使えるのなら!」
マリィとネッシー
お互いの思いは一緒、考えていることが重なる。
(最初が肝心!ぶっ飛ばして教育してやる!)
(最初が肝心!ぶっ飛ばして教育してやる!)




