02_思い出した記憶と新たな世界
「クソババアとは何ですか!院長先生と呼びなさいと何度言ったらわかるんです!」
「はいはい、いんちょー、いんちょー」
「さすマリ!権力に屈しない女!ヨッ反体制派!」
「そうだそうだあー!」
「ファーーーーーーー、ん?クソまでは言っていなかったような」
普段通りのマリィの様子にホッと胸をなでおろしているガットルンとガミガミ説教を続けるヴェストリア、それを煽るクソガキ4人組、タニアはすっと部屋をでていった
。
「まあまあ、院長先生、マリィも頭を打っていて安静にしたほうがいいでしょうから、その辺にしておいてください。」
「ガットルン先生がそういうのであれば、マリィ!安静にして寝ておくのですよ。」
そういってヴェストリアとガットルンも出ていく。
状況を整理する。
ここは孤児院の予備部屋兼医務室だ。
ここローズガーデン孤児院は土地も建物も非常に広い、というか、この都市全体の建物が日本と比べると一回り、二回りくらい大きい感じだ。
家も部屋もそんな感じで大きさも広ければ敷地も広く、部屋数も無駄に多いため部屋は余っている。
子供たちは目が届くようにと小さいうちはみんなが集まって雑魚寝、年齢が上がってくると相部屋に入る。今いる部屋は教師用の予備部屋なのでベッドは一つだ。今日みたいな時には医務室(といっても寝かせるだけだが)に使っている。
さっきは混乱している状況にもかかわらず院長がうるさかったので、つい口答えしてしまった。
たしかに煩かったが院長のヴェストリアはとてもいい人だ。
前世の記憶がある大人の女のマリィは改めてそう思ったのだが、同時に“ま、いっか”と考えて一旦、整理が終わった。
マリィは知らないことだが、実はこの世界で転生者はたまにいる。
地球で死んで、強力な魂を持つものが稀にたどり着くことがあるのだ。
そうして、新たな命となってやどるのだが、最初から前世を覚えているもの、マリィのように途中で思い出すもの、死ぬまで思い出すことがないもの、など様々だ。それらの前世持ち転生者は前世の強力な魂に刻まれた記憶に引きずられるものと、現世の肉体にひきずられるものにわけられる。
当たり前だが、大人であり現代社会に生きた強い記憶をもつのであれば、そのほとんど、それこそ99%は前者になる。
しかしながら、真理子はあまりにマリィという体と魂の相性がよく、珍しい後者タイプであった。つまり記憶のある、ませたクソガキ状態である。
マリィは改めて周りを見る、子分の3人がいる。
ベイリャ=ローズガーデン、こいつは、いつも、「さすマリ」してくる金魚のフンだ。マリィの一つ上の8歳の女児、マリィが6才の時に玩具の取り合いになって締めてやって以来の付き合いだ。
ハルトン=ローズガーデン、こいつも、いつもヨイショしてくる金魚のフン2号だ。マリィと同い年の7歳の女児。気づいたら取り巻きになっていた。
マーランシ=ローズガーデン、こいつはファーーーが口癖のアホだ。同い年の7歳男児で目が悪いらしく眼鏡をもらっている。なんか、おもろいから子分にしてやった。
真理子の記憶がもどった現在で考えると、はっきり言って、こいつらは、ただのクソガキだ。大人の自分は付き合うに値しない。
ガットルン先生もタニア先生も私たちのことを陰でクソガキ4人組と呼んでいるのを知っている。
マリィは大人だから先生たちと一緒で、面と向かってこいつらにクソガキのお前らとは、もう付き合わない、などとは言わない。穏便に付き合いを考えよう。
「とりあえず頭痛いから寝るわ。お前らは適当に遊んでこい、シッシッ」
「うっそだー、マリィ元気そうじゃん!」
「ファーーーーー、マリィも外行こうぜ!!!」
少しごねたが、ボスのいうことは絶対と教育してきており、本当に頭が痛いの!と瞳を潤ませたら、おとなしく出て行ってくれた。
一人になって改めて考えを巡らせる。
記憶が戻ってついさっきの出来事のように思い出せるが、真理子としての記憶はジャングルジムに登って足を滑らせたところが最後だ。
頭を打ったはずだし、やはりあの時に死んだのだろう。
父と母と姉と兄と友人達、よくハードワークでフォローしてくれた課長に家族ぐるみで付き合いのあった実家のご近所さんたち、そして未来の恋人になったであろうカッコいい誰か、みんなにお別れを言えなかったのは寂しいが、はっきりとこっちの世界で7年分の記憶があるので、少なくともあれから7年はたってしまっている。
もうどうしようもないし、違う世界に転移したわけではなく、真理子はあくまで前世であるっぽいので元の世界に戻るとかそういう話でもないのだろう。
みんな、いままでありがとう。今度こそイケメンを捕まえるね。と祈りを捧げた。
マリィとしての最初の記憶は赤んぼうのころだ、生まれてすぐのころはおぼろげだが、途中からはよく覚えている。
田舎の小さな開拓村でやさしい両親の元に生まれた。
開拓村といっても森に近いだけのただの農村だ。
農村の割に我が家はちょっといい暮らしができていて両親もあまり農作業が得意な感じではなかった。おそらく農家の出ではなく都市からきていたのだろう。もしかすると駆け落ちとかだったのかもしれない。
こっちの世界の両親も真理子の時と同じように愛情を注いで育ててくれた。かわいい、かわいいといっぱい言って くれたし、いつも優しくて楽しかった。しかし、そんな平和な日々は突然終わりを迎えた。
私が4歳になる直前くらいの時だった。
村ではあちこちで鐘がならされ、近くの街に冒険者要請がだされた。
スタンピードという魔物の突発発生らしい。
村から森の奥までいけば魔物というモンスターが出るそうだが、人里にはこない。まして、魔物がでたとしても、この国の魔物は非常に弱い部類で冒険者がしっかり間引いているそうだ。
この世界はファンタジー世界でマナがあって魔法もある。強力な魔法はみたことはないが、田舎でも生活魔法はいくつか使われていた。
魔物は世界中に漂うマナから生まれるが、ポップするのは決まった場所があるそうで、普通はなわばりからでることもないらしい。
この国では魔物が出る場所はダンジョンと呼ばれていて周知が徹底されている。このことから無暗に一般人がダンジョンにいくことはないし、道に迷って魔物の領域であるダンジョンに入ってしまうということも基本的にない。
唯一の例外が、このスタンピードだ。
本来は魔物が発生するはずのない場所で発生するため、人里や街に近いところでも発生する。魔物も色々種類があり言葉を喋る亜人系や草食動物のような温厚なものもいるそうだが、このスタンピードでは残念ながらそうではなかった。
発生した魔物はハイオーク、青い色をした巨体で筋骨隆々の豚人間のような魔物だった。
強い冒険者からしたら、1体2体などそれほど大した相手ではない魔物だが、農村の一般人が相手にできるようなものではない。
亜人に該当するようだが、普通の魔物ではなく特殊な発生の仕方をしたからか言葉を喋ることもなく、ただただ暴虐の化身だった。
この国の冒険者も弱い魔物が主であるためハイオークを倒せるパーティだと田舎町では1組2組程度とのことだ。
村が蹂躙されるまで間に合うわけがない。
両親は都市の人間だったため、村人より多少魔法が使えるようだった。父は村の自警団と一緒に鐘がなるとすぐにでていった。
それからもしばらく、外はガヤガヤいっていた。
「マリィ、この袋をあなたに預けます。いい子で待っているのよ。」
母と私は避難をしていたが、母もその言葉を最後に私を預けて村を守りに行った。
両親は帰ってこなかったし村は焼け落ちたが私は助かった。
近くの街にいたEランクパーティが討伐してくれたそうだ。
その後、私は孤児だがスタンピードにあった村の住人として身元はしっかりしていたため浮浪児ではなく孤児院にいれられることになった。
近くの街には孤児院がなく、トラクーンという大きな都市へ役場の人に連れていかれた。
村の中すら、たいして出歩いていない私からすると、とっても大きな都市だとびっくりしたのを覚えている。
今になって考えてみるとだが、この都市で驚いたことは意外と文明が発達していることだ。
田舎暮らしだったので中世ファンタジー的な感じだと思っていたのだが、そんなことはなかった。
魔法の影響で現代の地球のように科学的な豊かさはないが、あらゆるものが代替されている。現代には多少遠いが近代くらいはあるかもしれないといった感じだ。
さらに思い出したが、この国の通貨の単位が“円”だ。日本ではなくファンタジー世界のはずなのに。もしかすると過去の転生者が、この国にもいたのかもしれない。
まあ、そんなこんなで連れてこられたのが、ここローズガーデン孤児院である。
村にいたときは家の周りしかしらなかったので、突然子供が大勢の中に放り込まれたのだ、当然最初はなかなかなじめなかった。
と思ったのもつかの間、三日くらいで完全に馴染んだ。
まさにここが実家だと、くつろげるようになった。ぐーたらしていて院長によく怒られたけど・・・
転機があったのは6歳のころだ。
見た目の発育状態は変わらないのに、周りと比べてよく動けた、身体能力が他の子どもより高いのだ。
おそらく才能だろう。今はこれに前世の知識も加わり知識もある、鬼に金棒とはまさにこのことだ。
そうやって6歳ごろに自分の強靭な身体に気づき暴れまわった。近い年齢の子分を従えては、玩具の強奪から、薄い壁の穴あけ、遊具の破壊などなど、孤児院だとやはり金がないのか、いつもガットルン先生がDIYで修理をしていた。
かわいそうなことをした。まあそれも、もう終わり。私は前世を思い出して一気に大人の階段を登ったのだ。今度は滑って転ばないようにしよう。
キャラクター紹介
マリィ=ローズガーデン(7歳)
やんちゃな美幼女
種族:人間
性別:女
レベル:Lv11
職業レベル:人間種Lv11
魔法、スキル:なし
エクセプションスキル:転生乙女ゲーム(リインカーネイションオトメゲーム、パッシブスキル:効果 *****)
装備:孤児院の服
持ち物:両親の形見の袋
転生したため2回目の紹介。金色の髪でショートカット。目の色はエメラルド。
この世界において何もしなくても加齢によってあがるLvは5程度だが、転生者の強力な魂により、かなり底上げされている。
本人は気づいていないがLvによる補正値の加算によって非常に身体能力が高い。まさに主人公補正。こちらも年齢の割には非常に高レベルであり職業Lvの分も補正マシマシである。
前世の記憶で知識は大人だが精神が身体に引っ張られすぎているため未熟な状態になっている。体は子供、頭脳は大人!?
自身が覚えておくという意味もあって、毎回キャラクター明細の一部をつけようと思います。




