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19_金の巨城(自宅)②

いきなりなんだこいつは?

纏っている雰囲気は不良っぽく粗暴な感じだが服は仕立てがよさそう。

というか金髪だ。もしかしなくても血縁者だな、これは。


「マーガレッタ!なにしきたの!」


「なんだよ。そんな怒られることか?かわいい姪っ子にわざわざ挨拶にきてやったのに」


「必要ないから呼んでいないのよ。さっさと出ていきなさい」


なんか一触即発っていう雰囲気だ。

だが、そんな空気を堂々と無視してマーガレッタという女はこっちに向かってきた。


「こいつが姉貴の子供か」


発言と容姿から恐らく私の叔母なんだろうな。


「はじめまして、わたくしマリィと申しますわ。今日からウィンガーラで預かっていただくことになりましたの。よろしくお願いしますわ」


とりあえず無難に丁寧な挨拶で見様見真似のカーテシーをしたのだが、途端にマーガレッタの顔が苦くなる。


「ちっ マルカナトのやつ、あれだけ華族がいやだって言ってたくせに子供にはどれだけ教育してるんだ。あー、興味なくなったわ。じゃあな」


そういうとマーガレッタはすぐに出て行った。なんだったんだ?

すぐにタカダーイアが横にやってきた。


「マリィや、怖かったじゃろう。不良娘で穀潰しのマーガレッタじゃ。お前の叔母になるが近づかないようにな」


「スミレ!教育に悪いから絶対に近づかせないように」

「は!メイド長に通達しておきます」


「マリィ、名残惜しいけれど謁見の時間は終わりよ。私は仕事があるから庁舎に戻るけれど、近いうちに食事の場を用意するわね」

「はい、今日はありがとうございました。おばあ様」


そういうとマリアンヌは満足そうに出て行った。

というかこれ謁見だったのか?

無駄に格式高そうでめんどくさいな。

勢いで王様になるなんて言ってしまったが、そんなことできるわけないし、マリアンヌとの接し方はうまく考えておかないとな。


マリアンヌに続いて秘書と護衛っぽい人が出て行った後にタカダーイアと私たちも外にでる。タカダーイアは夫のくせに明らかに下の扱いだ。


外に出ると3人の男女が待っていて、まず男がこちらに話しかけてきた。

後から教えてもらったが今の豪華な部屋は謁見の間で使用中に使用人は基本入れないらしい。


「タカダーイア様、謁見ご苦労様でございました。」

「うむ。それで先ほどわしも再度の人事発令がでているときいたのだが?」

「はい、明日より当庁せよとのことで通達いただいております」

「でまかせではなかったか・・・マリィ、すまんがわしは準備せねばならんでな、あとはこのラブロフとカマンに任せるから言うことを聞いていい子にするんじゃぞ」


「私も任務完了ですね」

「うむ、グランツもご苦労じゃった」

「結果として私の能力は役に立たなかったですが・・・」

「いやいや、もしもの時は頼りにしておるからな」


そういうと二人ともここで解散らしい。


「マリィ様、シロッコさん、お初にお目にかかります。ウィンガーラ家執事、総務係長のラブロフでございます。」

「同じくメイド長をさせていただいてるカマンでございます。」

「メイドのアニーです。」


3人が挨拶をしてくれた。

ラブロフはタカダーイアより少し下くらいの年に見えるおっさんだ。

ツーブロックに青のスーツ、シゴデキっぽい雰囲気がある。

カマンも恐らく同じくらいの年齢層かな?おばさんではあるが、それよりがたいがめちゃくちゃいい、なんというか全部がでかい。

アニーという子はかなり若いな。この世界での成人が15で成人直後くらいじゃないかな?


「まずはお部屋に案内させていただきます。」


タカダーイアたちと別れシロッコとラブロフに着いていく。

3階に降りて、迷路みたいな廊下を結構進んだ先の部屋に着いた。


「ひとまず、こちらがマリィお嬢様のお部屋になります。調度品は急ぎ客間のものを運んでありますので、後程交換させていただきます。」


さすが貴族の部屋だ。一部屋がかなり広い。

そしてベッドも大きい、今までの二段ベッドとは比べようがない。


「とりあえずダーイブ!」

めっちゃふかふかだった。


「それでは、シロッコさんはこちらに」


カマンがシロッコを連れて行こうとする。


「あ、私もシロッコの部屋にいくぞ」

「お嬢様にはこの後のお話が」

「いや、部屋見に行くぞ、シロッコ」


ぶっちゃけシロッコは私が巻き込んでしまったわけだし、使用人だとしても酷い扱いをされるようなことは絶対にさせられない。

貴族は性格悪いはずだし、しっかり見ておかないとな。


「わかりました。それでは行きましょう」


さらに下の階に降りて1階に、またしても奥の方に進んでいく。

さすがに屋根裏部屋とかだと文句言おうと思っていたが、よく考えたら城に屋根裏って概念あるのかな?


「シロッコさんには一般使用人の一室を使用いただきます」


進んだ先の廊下にはいくつも番号のかかれた扉がある。

その中の一室の扉があけられた。


「こちらです。使用人は入れ替わりもあるので基本的なものは揃いの品が用意されております」


「わぁ~」

シロッコと一緒に私も中に入ってみる。


どうやら一人部屋のようだが想像していた使用人の六畳一間的なものではなく、普通に広い部屋で1LDKになっている。

豪華ではないがベッドと机に水場やトイレも部屋の中にある。風呂だけない感じだ。


「私、ここに住んでいいの? 広すぎて寂しいかも」

「もちろんですよ。住み込みで独身の使用人はみなこのタイプの部屋になっていますので」


どうやら待遇は大丈夫そうだな。


「シロッコさんは、いずれマリィお嬢様の専属になっていただく予定と聞いていますのでしっかり教育させていただきますよ」

「はい!頑張って大きくなります!」


シロッコがカマンに言われて元気よく返事している。

いやしかしシロッコよ、お前は見た目かわいいのに、このやたらガタイのいいおばさんみたいに全部が大きくなる必要は全くないからな。


「明日以降ですが、専属教師は手配中とのことでしたので、しばらくは家の者から基礎教育をさせていただきます。シロッコさんも基礎教育はご一緒にお願いします。」


予想はしていたが遊ぶ時間はほとんどなさそうだな。


その日はそれ以上特になく再度自分の部屋に案内し直してもらった後、夕食の時間になった。

食事は特にリクエストがなければ使用人と同じメニューになるらしく、それだったらと一緒に一階の食堂で食べた。

周りの使用人からは、こいつが噂の?みたいな感じで見られたけど大勢いる食堂で食べる方が気が楽だから今後もそうしよう。


さて、ようやくオリエンテーションから解放されて風呂も入って、あとは寝るだけだ。

今後の方針を考えるか。


やっぱりせっかく大好きだったバラ恋の世界に転生したんだしゲーム要素はぜひとも体験したい。

既に結構ずれている部分もありそうだがメインは学園に入ってからだから、それまでは変に攻略対象と接触したりせずにゲーム開始に向けて準備だけすればいいだろう。

そもそも学園じゃなく大学になっていたし、成績優秀でなければゲームは追体験できないからそのための勉強は必須だな。


あと、できるだけ追体験できるようにとは考えたが一つだけ看過できないイベントがある。バラ恋のラスボス戦だ。

恋の方の話ではなくキャラクターを強化して魔物と戦う方のボスだけど、最後に出てくる悪魔のドッペルゲンガーは王国を暗躍しているという設定だった。


ゲーム内だと、かなり暴れた後に討伐することで名声を得てハッピーエンドに向かうのだけど、本当にその通りになっているとすると今の時間軸でも既に暗躍が始まっている可能性がある。

わかっている天災に対してイベント追体験のために多くの人を死なせるようなことはさすがにできないから、こいつはできるだけ早く対策しないといけない。

ゲームでも結構キャラを強化しないと倒せなかったから私自身も早めに魔法を覚えて強くならないといけない。

大学がどうのとか言い訳したが、どうしても魔法の講師をつけてもらいたかった一番の理由はこれだ。


あとは両親か・・・

こっちはやはりどうしようもないな。

まずはマリアンヌの様子を見て、うまいこと取り入らないと。


翌日

「ふわ~ぁ」


明らかに早めに目が覚めた。

カーテンを開けると、ちょうど夜明けがきてすぐくらいかな?

外には手入れされた庭が見える。

環境がガラッと変わってしまったなあ。


「お嬢様、おはようございます。」


とりあえずベッドでごろごろしていたらノックと共にメイドがやってきた。


「お初にお目にかかります。メイドのデイジーです。」

「しくよろ~」

「朝食をお持ちしましょうか?」

「いや、昨日と一緒で食堂で食べるよ」

「そうですか・・」


食堂にいくと既にシロッコが食べていたので横に座る。


「おはよ~」

「マリィちゃんもこっちで食べるんだ」

「どこで食ってもメニュー一緒らしいからな」


さすがにここではカチカチのブロックパンではなく、朝からきちんと焼いたパンがでてきたし、ソーセージに卵も!

あとは牛乳・・ではなくスライム乳なのは変わらずだな。


「今日から基礎授業だって言ってたけどなに勉強させられるんだろうなあ」

「普通の学校と同じじゃないの?」

「貴族の教育っていえば厳しいもんだろ」

「そうなの?」


その後は一旦部屋に戻って着替えた。

着替えは既に手配されていたらしく、既製品のものが数着既にクローゼットに入っていた。

そのうちオーダーメイドとかもするとか。日本の庶民感覚からすると普段着がオーダーメイドっていうのはちょっとめんどいな。

お金持ちの子になったとはいえ、高い服を着るとさすがに汚したりしないように気になって仕方ない。


そうこうしているうちに執事のラブロフが呼びにきたので付いていく。

客間っぽい感じの一室で既にシロッコが待っていた。


「今日はひとまず臨時なので私が講師を務めさせていただきます。」

執事って何でも屋なんだな。


「まず、今後の教育方針からです。これはマリアンヌ様からお預かりしている内容ですので変更できません。急ぎウィンガーラ州の標準教育をとのことでしたので、午前中は一般的な科目を一般の1.5倍程度の速度で進めていただきます。14歳までの標準教育ですができるだけ早く終わらせよとのことです。」


「異議あり!横暴だ!普通にしてくれ!」


「できません。タカダーイア様からもお嬢様は間違いなく才能はあるものの孤児院ではどうせ碌に教育など受けているはずがないから取り戻すように仰せつかっています。また、マリアンヌ様からも本人が魔法を勉強したいというのだから騎士教育を早めよと通知がきておりました。」


「騎士教育?」


「はい、お嬢様は他州でお育ちだったのでご存じないと思いますが、ここウィンガーラはウィントール王国の武を司る地であり、王国、ウィンガーラ家に仕える騎士を何より重要としております。ですので、できるだけ騎士教育に時間をとり、ウィンガーラ本家に見合う武を示せるようにとのことです。まずは歴史のお勉強を優先したほうがよさそうですね」


「騎士だと魔法はどうするんだ?」


「ええっと、騎士とはここでは総称です。剣を使うものが騎士というわけではなく、武力を持ち水月(すいげつ)に属することが騎士になります。」

「つまり騎士って呼んでるのは強いやつってことで、魔法でもいいってことか。あと水月ってのはなんだ?」

「“水月(すいげつ)”はウィンガーラ家私設騎士団の総称です。」


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