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17_転生乙女ゲームの始まり

「ここ、乙女ゲームの世界だ・・・」

「げえむ?」

「どうしたんじゃ!?まりぃ!」


 なにか色々繋がって、今しっかり思い出した。

 なんで今まで忘れていたんだろう。


 私が日本にいたときに大好きだった乙女ゲーム、バラ恋、その主人公の名前はマリー=ウィンガーラだったはずだ。つまり私だ。


「おっさん」

「おじい様って呼んでくれると、うれしいな!」

「この国の王子様ってウィリアム様?」

「そうじゃ、あんな田舎にいた割によく勉強しておるなあ。王太子のウィリアム=ハル=ウィンゼール殿下のことじゃな。さすがわしの孫じゃあ」


「おっさん」

「おじい様って呼んでほしいのじゃ」

「この国の名前ってウィントール王国だよな?」

「そうじゃぞ、ランバルシア=ウィントール王国じゃ」


「マリィちゃん、どうしたの?」

「いや、なんでもない」


 マリィは・・・いや真理子は思い出す。

 前世であれだけ遊び倒したバラ恋のことを。


 薔薇園からはじまる大恋愛、仮にここがあのゲームの世界だとすると今後起こることがいくつかわかる。一旦整理していこう。


 まず、バラ恋が扱っている時間軸は3年間、王立魔法学院に主人公が15歳時に入学して卒業するまでの期間がそのままゲームの内容になっていた。

 内容は3年間の間に攻略対象の4人と親密になって、卒業の時に将来を誓って終了するという流れだ。

 学院では様々なイベントがあるが、魔物を倒すことが貴族の義務でざっくりいうと強くなって国を守るんだって感じ、学院卒業後には貴族として国の要職が約束される。


 そして主人公の名前はマリー=ウィンガーラ、大貴族の令嬢だ。

 マリーは国でも少ない神聖魔法の使い手で非常に重宝される。

 攻略対象達とパーティを組んで仲良くなり魔物討伐でレベルを上げて学院も好成績で進んでいく。

 見た目は金髪の美少女。


 まさに私のことのはずなのだが、同時に色々と違和感がある。


 あのゲームはあくまで学院の3年間の話だったからなのかもしれないが、そもそもマリーの出自の話が違う。

 マリーの設定は確かお嬢様なのに市井にもよくでていて詳しい、なので庶民のことをよく知っていて気持ちがわかる。

 それで攻略対象を諫めるとか色々なイベントがあった。


 ただ、ローズガーデン孤児院にいた、とかそんな話は一切でてこなかった。

 バラ恋の薔薇園はあくまで学院のシンボルとして薔薇園があり、そこで告白イベントがあるからこそのタイトルだったはず。

 孤児院のローズガーデンもタイトルとかかっているとかあれば、さすがにゲーム内で話がでるはずなのに、そんなことは一切なかった。

 貴族としての汚点的なことで隠していた?一応それで辻褄はあうか?


 次に今使っている水魔法だ。

 私は水魔法が得意ということらしいが、ゲームの私は水魔法なんて一切覚えない。

 神聖魔法は例の病院で使う回復魔法のことではないかと思うが、ここでもあるのかどうかは調査する必要がありそう。

 もしかすると、私が転生したことで既にゲームとの差がでているのだろうか。


 あとは目の色も違った気がする。

 たしかゲームのマリーは金髪金眼なのに対して、今の私の目は緑に近い。

 あとやっぱり、確実に違うのが名前だ。

 ゲームのマリーと違って今の私はマリィ。

 かなり微妙だがニュアンスが異なる。そしてミドルネームか。


「おっさん」

「おじい様じゃもん」

「名前の間にあるハルってなんだ?」

「おおー、わかるか、わかるか、ハルというのはな、上級貴族のみに許されておる称号じゃ。例えばウィンガーラ家の血縁の者も苗字はウィンガーラとなっているものも多いがハルがつくのは本家に近い者だけじゃ」


 この要素もゲームではなかった。

 ゲームだとマリー=ウィンガーラとだけなっていたはず。

 同じように国の名前も違う。

 ゲームだとウィントール王国だったはずなのに、さっきのおっさんの話だとランバルシア=ウィントール王国ということだ。

 ゲームを元にした世界だとするとおかしい。


 単純にゲームだと省略されていた要素が、この世界だと忠実に表現されている?

 でもじゃあ、その詳細な要素はどこからきたのか?

 むしろ逆か?ゲームの方がこの世界を模している?

 でもそうすると日本でゲームをしてからこっちにきているという時間軸が合わない。


 どちらにしろ・・・


 周りを見る。

 目の前にいるタカダーイアとグランツ、隣にいるシロッコ。

 こいつらもそうだし、両親やヴェストリア達これまでに出会ってきた人々、誰一人としてゲームには登場しなかった。

 でも、この世界で間違いなく生きている人間達だ。


 ひとつわかることは、ここがバラ恋の世界だったとしても、ここはゲームなんかじゃない。

 みんなが必死に生きている現実世界だ。


 とはいっても、今のところゲームにあった設定はおおよそ繋がっているはず。

 そうなると今後の身の振り方を考えなきゃな。

 ゲームだとたしか学院に入る前までは地元の大貴族として自由に育った。

 となっていたと思う。そうなると今向かっている先はウィンガーラか。


「おっさん」

「うわーん」

「さすがにだいの大人が泣くなよ。ほら、おじい様」

「なんじゃ」

「急に真顔になるなよ!こえーだろ! それより、これからのこと教えてくれ、私はどこに行ってどうなるんだ?」


「今向かっておるのはウィンガーラじゃ、行先はウィンガーラの州都ロングサンド、そこにウィンガーラ本家があるし、トラクーンと違って都会じゃぞ」

「ほうほう、じゃあ私はこのあとそこでぬくぬく育つってことだな。」

「うーむ、恐らくマリィは貴族教育からじゃな、今までが今までだっただけにかなり大変になるぞ。家庭教師はだれにするかの~、それにその後は学院に入ってもらうことになるぞ」


「でた!王立魔法学院!」

「そういう略し方もあるのか?正確には国立王都魔法大学、14歳になったら通ってもらうぞ」


 そうか、やはりここもゲームと違うか。

 ゲームだと15歳で入学開始だったはずだから1年違う、けれどもこの世界は1年が400日あるから地球換算だとこっちの14歳は地球の15歳とほぼ同じ日数で辻褄はあう。


「大学ということは受験があって、それまでに勉強しないいけないのかな」

「一応、うちならコネがあるから裏口でもいけるぞ。でも勉強は大事じゃからな。がんばってもらうぞ」


 さすがお貴族様だ。すらすら裏口だのコネだのでてくる。


「14歳で入学だと卒業の時は成人してる?」

 この国の成人は15歳のはず、そうすると学校に行っている最中に成人か。


「そうじゃ、大学は特待を除いて14歳以上という決まりがあってな。といってもストレートで大学にいくというより、お金を貯めていくものも多いから年齢はバラバラしておる。わしが通ったときも上は40歳もおったぞ」


 たしかに魔法を勉強したければ冒険者で金を貯めてから通えみたいなことを言われた気がするしあってるな。


「シロッコはどうなるんだ?」

「しばらくはマリィと一緒に勉強じゃな。才があれば大学に一緒に通わせてもよいし、うちの侍女も足りんから、特になければそのまま就職してマリィについてもらうかの」

「お仕事頑張ります!」

「まずは勉強じゃな」

 どうやらしばらくは一緒にいれるらしい。


 これで凡そ方向性は決まったか?

 まずはこの世界の詳細情報をさらに探る。

 ゲームだと相当端折られているっぽいし、必ずしも一致していないが一定程度はゲーム知識が使える。

 これで学院にいくまでに準備をして、学院に行ったら逆ハーレムルートだ。

 嫌いなキャラはいなかったし、とりあえず4人全員を攻略しよう。

 知識はともかく神聖魔法か。水魔法じゃだめかな?


「ゲームでも両親は死んでたはずだから、そこは一緒か」

 ぽろっと考えていたことが口から出てしまった。


「ん?マリィの両親は元気にしておるぞ」


「ん? え!?」


「今回の件であやつらは出し抜いてやったわい、所詮、子供は親に勝てんのじゃ。はっはっは」

「どういうことだよ!?ハイオークに殺されて村は滅びたんじゃ!?」

「あー、あの村は誰も死んでいないし、今も普通に皆さん暮らされているはずですよ」


 グランツのほうが何か知っている風に答えてきた。


「ブロンド隊のやつらはむちゃくちゃがすぎる。間に合ったからよかったものを、本当に村の人が死んでいた可能性もありますからね。」

「まあまあ、とりあえずマリィやマルカナトたちは元気じゃぞ。とはいっても、すまんがすぐには会わせられん。勝手なことを吹き込まれてもよくないしの」


 親から勝手なことを吹き込まれる?どういうことだ?隣でシロッコが「よかったねマリィちゃん。お父さんとお母さんに会えるね!」なんて呑気なことを言っているがグランツの発言からするとかなりきな臭いぞ。あとかなり怒気がこもってたし。

 明らかに聞いてほしくないオーラだしてきたからここまでにするしかなさそうだけど・・・


 私はこのまま本家?につれていかれて大丈夫なのか?


「ファーーーーー」


「え?マーランシ!?」

「この馬車を運んでいるコロンのなき声ですよ」

「あいつ、これの鳴きまねしてただけだったのか・・・」



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