表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/17

15_小さなお祝いといつもの日常

 大通りを駆けぬけて着いた先はギルド・・・のちょっと先にある橋にマリィたちはやってきていた。


 トラクーンの街には大きな川が二つ流れていてそのうちの一つセン川が街の西に沿って河口に向かって流れている。

 二つの川はトラクーンの少し先で合流し、最終的に進む先の河口には漁港であるガレストランに行きつく形だ。


 セン川もトラクーンまで来ると川幅はそれなりに広く100m以上ある。

 氾濫もほとんどなく非常に安定した川であり、そのせいか川の周囲には建物も多い。

 ギルドの少し先には大きな橋が架かっている。西新橋だ。

 何年も前に街の大規模事業で改修されたときにこの名前になったとか。

 そしてその時にはかなりの予算が投じられたらしく橋の幅はかなり広い上に橋の途中には観光のための広場が設けられている。


 ここトラクーンは国の東側であり、さらに東は川の進む先の海しかなく、西に進むと州都、そしてその先には王都がある。

 このため、西側の道路のほうが交通量は多く、西新橋はまさに街の主要街道なのである。


 橋の中央よりやや街側に橋から出っ張る形で設けられた半円状の広場には街に訪れるもののうち余裕のある裕福な人たちが川と街を眺め観光していた。


「ふふふ、マーケティングは完璧だぜ。ギルドに行ったときから目をつけてたんだよな。ここ」

「マリィ、なにやるの?」

「芸だよ、芸、こないだ風呂で盛り上がっただろ?あれでこづかいを稼ぐんだ。」


 子分たちはそもそも大道芸人など見たことがないからよくわかっていないが、まあいい。明らかに観光客っぽいのがいっぱいいる。これはおひねりが期待できそうだ。


「この辺でやるか、ここから川に向かって水を出す分には怒られないだろ」


 ぴゅーぴゅー


 水を出して位置を調整してっと

 転落防止のガードがそこそこ高くなっていて一応水は届くが子供の身長だからギリギリだ。

 なにか乗れるものはっと、ベンチあるじゃん。


「そこのベンチ動かすぞ、お前らも手伝え」


 よしよし、これでセット完了だ。

 幸いに天気も味方して青空が広がっている。


 マリィはベンチに登って両手を上げた。

「じゃあ、おまえら、私は綺麗に水を出すから、この前教えたスリラーダンスを合わせてやるんだぞ」

「はいはーい」



「なんだなんだ、あれってなんの集まり?」

「子供が見世物やってるらしいぞ!」

「いってみようぜ」


 広場の端にもってきたベンチの上に乗って噴水人間になったマリィは川に向かって放水、それに合わせて子分の3人はへたくそなダンスをしている。

 しかし、この世界でこんなことをやった人間は今までにいない。

 世界初のパフォーマンスにぞろぞろと観光客がやってきた。


「いいぞ!このまま出力アップ!出でよ!レインボーウ!」

「ありがとうございました!」


 マリィ達の前に置いた木箱には次々とおひねりの小銭が入っていく。

 これは、初日から大成功なのでは!?

「よ~し、今日あと三回は公演するぞ!」



 西新橋を高級そうなフルサイズのスポーツ用多目的馬車が街に向かって通りかかる。馬車の側面には大樹に三つの剣が刺さった紋章が入っていた。


「タカダーイアさん、見世物ですかね、人が集まっていますよ。止めてみたりしますか?」

「よいよい、観光にきたわけではないのだ。そんなことより、早く中央ギルドにいって情報収集するぞ。わざわざ二等騎士まで動員しているのだからな。」

「は!急ぎます!」



 西新橋を高級そうなミドルサイズスポーツ用多目的馬車が街から外に走っていく。


「あそこ!子供たちが踊ってますよ!」

「パルフェお嬢様、窓から乗り出すのは危ないのでおやめください。」

「ちょっと止めて見ていかない?」

「新年のあいさつ回りは時間との勝負です。早く次の街に急ぎますよ。」

「この街は何も新鮮なものはなかったけど、あの大道芸をしている子供はちょっと新しい感じを受けたから見たかったのだけれど・・・このあたりの文化と明らかに違ってそうで何かありそうに思ったのに」

「次の街にはお兄様が先についているはずですのでお待たせするわけにはいきません。」

「ワークライフバランスはどうなっているのかしら・・・」



「さすがに3回は疲れたな~」


 最初の公演からあと3回やるぞといきごんだものの、2回で既にへばっていた。

 しかしながら木箱の中にはそれなりのおひねりが入っている。なかなかの稼ぎじゃないのかこれは。


「やっぱり、お前らだったか!」

「あ、冒険者のおっさん!」

「おい!早く片付けろ!」

「え、なに?疲れてるよ~」

「許可とってないだろ?サツがくるぞ!」


 マリィは一瞬で起き上がって木箱を抱える。

 そのまま冒険者ギルドへダッシュした。


 冒険者ギルドのカフェテラスエリアでとりあえず休憩している。


「いやー、おっさんたち助かった。やっぱ公道は許可必要なんだな~」

「ありがとー!ベイスさん、ナッツさん。」


 ベイリャは律儀に名前覚えてたのか。こいつらガラは悪いのにいいやつらなんだよな。


「祭りの時とかはお目こぼしされるんだが、普通の時は屋台とかももちろん許可必要だぞ。」

「冒険者は強いし、特権とかないの?」

「普通に警察の方が強いぞ」

「せちがらい・・・」


 とりあえず走って喉乾いたし稼いだ金でジュースでも飲むか。

「おまえら何にする?」

「オレンジジュース」

「わたしも」

「おばちゃーん、オレンジジュースのベンティ4つね」

「お姉さんだよ!」


「後ろから見ていたがお前すごいな、あれ生活魔法でやってるのか?」

「そうだよ。私は水魔法の才能があるからね。」

「あそこまでいくと生活魔法じゃなくて水の攻撃魔法に足突っ込んでるんじゃないか?」

「おお、じゃあもうすぐにでも魔術師になれるかなあ。へへ」


「私は前衛やる予定だから丁度いいね。」

「まあ考えとくよ。」

 ベイリャはもう私と冒険者をやるつもりでいるらしい。


「攻撃魔法は精密な操作が重要だって聞いたことあるし、ライトニングボルトの嬢ちゃんは意外と早くものにしちまうかもな。」

「金貯めて学校いくこった。」


 やはり学校を進められた。

 公道での大道芸は許可が下りるか怪しいし、やっぱり学校か~

 とはいってもまずは金を貯めないと何もできないな。

 ま、まだ時間はあるしゆっくり考えよ。


「いやー儲かった儲かった」

「ジュース飲んでもいっぱい余ってるね。」


 木箱はさすがに目立つのでナッツに貰った袋に入れなおしているが、それでもかなりある。

 4人で分けたがちょっとしたおこづかいだ。

 ああいったパフォーマンスはかなり新鮮だったらしく、洗練もされていないのに結構受けた。エンターテイメントで儲けるのは手っ取り早いかな。

 そんなことを考えながら帰路につく。



「マリィまだ水出せるの?」

「全然いける」


 さすがに昨日の今日でお風呂での噴水遊びは控えたが、本来の水張りはやっておく。

 やっぱり魔力量?が多いのか疲れた感じは特にしないが。


 にぎやかな晩御飯を食べているとヴェストリアがこっちに近づいてくる。

 今日はちゃんと風呂の水いれたぞ!


「マリィ、はいこれ、お誕生日おめでとう」


 あ、今日って私の(こっちの世界での)誕生日だったんだ。

 完全に忘れていた。


 渡されたのは小さなカップケーキ。

 この人数なので、ひとりひとりに大々的な誕生日祝いということはしない。

 この小さなカップケーキが唯一のプレゼントだ。


「マリィ今日誕生日だったの?」

「おめでとー」

「マリィちゃんおめでとう!」

「おめでと!」


 周りで食べていた子供たちからも一斉に祝われる。

 これで私もいよいよ8歳か。

 この後ってどうなるんだろうなあ。

 っと去年も食べたけど、このケーキうまいな。。

 そんなことを考えながらケーキをほおばった。


 その日の夜、夢を見た。

 お誕生日会の夢だ。


 私が日本にいて、子供の時に家でお誕生日会をしてもらったことがある。

 きっとその時の夢だ。


 そこには小学校の友達がいて、そして今の孤児院の友達もいて、どっちも私の大事な友達で、カップケーキじゃなくて大きなケーキをみんなで食べた。

 とっても楽しい時間だけれど、日本の友達から順番にみんな帰っていった。

 孤児院のみんなも帰って行って、残されたのは私だけ。


 そんなところで目が覚めた。

 まだ朝になっていなく外は暗いままだ。

 もう今日は8歳、孤児院から出ていく未来も決して遠くはない。

 将来のことを考えるかと思ったが、再び眠気がきた。


 やっぱりまだ、おやすみなさい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ