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13/18

13_子供は風邪の子?

 新年祭も終わって冬真っただ中だ。この地方で雪は降らないものの、やはり冬は人の動きも少なくなり若干静かになる。

 そして今、ローズガーデン孤児院の中もかなり静かな状態になっている。


「全然いねーな」


 朝食にきたマリィ達であったが、今日は半分も人がいない。

 とりあえずいつものスライム乳を飲みながら周りの子供たちと話をする。

 普段の子分ではなく同部屋のメンバーだ。


「これだけ風邪が流行ったのはここに来てからだと初めてだな。」

「今年は街でも流行ってるってきいたよ」

「ちゃんと手洗いうがいだな」

「マリィちゃんって、やたら手洗いはちゃんとしてるよね」


 やはり前世で染みついた衛生観は異世界に来たとしても簡単に消えるものではない。

 結構このあたり現地民はおおらかなのだ。特に子供だし。

 マリィもあまり気にしないようにはしていたものの、現代の医療知識が根底にあるので行動も自然と違う。


「そうか、知らないのか。風邪っていうのは目に見えないウイルスによるもので、そこら中にいるから手洗いで洗い流すのが重要なんだぞ」


「ういるすって何?」

「ウイルスはウイルスだよ」

「マリィってすごいけど時々よくわからないよね」


 うーん、せめて孤児院の中だけでももう少し衛生の知識を広めてマシにしたいなあ。

 そもそも医療が発達してないということは、ただの風邪でも結構死んじゃうのでは?

 異世界怖いなあ。

 そんなことを考えていたところ、横のシロッコが面白いことを言い出した。


「ポーションで風邪も治せればいいのにね」


 そういえば、この世界にはポーションが存在するんだった。

 孤児院に来る前に両親と住んでいた時もたしか常備してあった気がする。


 ただ、マリィ自身はポーションが使われる場面はみたことがないし効能もしらない。

 しかしファンタジー世界でのポーションと言えば部位欠損なども治る無茶苦茶なものが定番なのだがこの世界のポーションはどんなものだろうか気になった。


「シロッコはポーション知ってるのか?風邪は治らないけど他だとなんでも治るのか?」

「う~ん、私もちゃんとしたことはわかんないよ。でも去年、院長が風邪には効かないっていってた。」

「そっかー」


 結局、風邪薬にならないってことくらいしかわからないなあ。

 衛生への意識も低いような世界ということを考えると現代知識を持っている自分からすると医療無双もできるのでは!?と一瞬考えたが、前世でも別に医療従事者ではなかったのでたいした知識はないからその線はなしだな。


 というか今までも気にしていなかったが、そもそも病気になる人が少ない気がする。

 普段の治療ってどうなってるんだろう。

 やはり教会に行ってお布施をすれば治療してもらえるとかなのかな。


「今日はやっぱり少ないわね」


 この日の授業当番はタニアだ。

 そういえばタニアは教会から派遣されてきていると言っていた気がする。ということは治療できたりもするのか?している雰囲気ないけど。


「はいはーい、タニア先生は教会から派遣されてきてるんですよね?修道女なの?」


「修道女・・・難しい言葉を知っていますね。派遣されているのはそうよ、私は事務職だから修道女ではないけれど、何かありました?」


「じゃあタニア先生は治療とかできないのかあ」


「治療??」


 タニアは何を言っているんだ?という顔をしている。


「教会でお布施すれば治療をしてくれるんじゃないの?」

「教会で治療?何を言っているの?」


 あれ、教会で治す系じゃないのか?魔法あるしヒールとかもあるんじゃ・・・


「教会が直してくれないんだったら、病気や怪我の治療ってどうしてるの?」

「普通に病院に行けばいいのでは?」


 あ、そりゃそうか、病気になったら、怪我したら病院にいく、当たり前すぎた・・・


「マリィは病院しらなかったの?ププ」

 恥ずかしくて顔を真っ赤にしているところにハルトンが煽ってきたので軽くしめてやった。


「まあ、マリィは頑丈そうだから病院とは縁がないかもね」


「あ、そういえばポーションでもケガって治るの?」

「ポーションにも種類があって効能はそれぞれですけど、ちょっとしたケガは治りますね。」

「病気は治せないの?」

「治せるものと治せないものがあります。今みんなが罹っている風邪はポーションききませんよ。」


「部位欠損は?」

「また、難しい言葉を、どこで覚えてきたのやら。上位のポーションだと治せるものもあるとは聞いたことがありますけど、庶民の手が届くものではないわ。本当の大けがだったら回復魔法を受けた方がいいわね。」

「回復魔法!やっぱりあるじゃん!」

「そりゃ、ありますよ?」

「教会で受けれるんだよね?」


「いや、病院ですけど」

「結局そっちかーい!」


 その後も今日は授業を受ける子供が全然いないこともあってタニアは特に咎めることなく色々医療事情について教えてくれた。


 どうやらポーションも病院で売っているらしい。

 というのも回復魔法を扱える人というのはただでさえ貴重であり、その辺の病院にはそもそもいない。

 小さい病院だとポーションの販売だけとか、簡単な応急処置くらいしかできない。


 ちょっと大きい病院だと回復魔法が使える人がいるもののその効果はピンキリらしい。

 回復魔法でも種類があるのと出力の強さの問題のようだ。

 それでも通常の回復魔法はいわゆる外傷には効きが強いらしく十分それで対応できる。


 一方でポーションは持ち歩けるという利点があるものの魔法で治してもらうより金額は高い。

 なお回復魔法を使える病院勤務の回復術師とポーションを作る薬師は別であるものの販売は病院ということだった。

 そして病気、というか状態異常の対処も魔法やポーションが使われるが、本当の意味での病気に向けたポーションはない。

 ただし体力そのものは回復するので風邪をこじらせたときなどは一時的にポーションを飲ませて様子を見るというのはするということだった。


 この話を総合すると、おそらく本人の体力や体そのものは回復するがウイルスには効かないということだと思われる。

 この世界の人はウイルスなんて知らないだろうから試行錯誤の結果なのだろう。


 ということでやはり医術は発展していなかったものの、回復魔法のお陰で医療レベルはそれなりに高いし、外を走った時に病院も見た気がするので割と充実しているようだった。


「教会の聖魔法で傷が治るというのは相当上位の魔法しかなかったと思うわ。ランバーの方だと教会や聖職者も多いし、医者の代わりをしている人もいるかもだけれど。」

「そうなんだ、やっぱりみんな病院に行って治療するんだね。」


「とはいっても病院はお金も高いから、風邪くらいで行く人はあまりいないわね」

「保険はないの?」

「保険?」


 残念ながらこの国では国民皆保険ではないようだ。


「おまえら大丈夫か~看病しにきてやったぜ」

「マリィちゃん、風邪移っちゃうよ~」

「大丈夫大丈夫、マスクに手袋、完全防備だ!」


 とりあえずお手製のマスクと掃除で使っている手袋をもって同室のシロッコを連れてベイリャのいる部屋にやってきた。


「マリィ・・うるさぃ・・」

「あーん?なんだって?小さい声だと聴こえねーぞ!」

「ごほごほ」

「ほんとにつらそうだな、とりあえずアレやるか」

「はい」


 シロッコの手には金タライが握られている。


「クリエイトウォーター!」


 たらいに新鮮な水がドバドバと注ぎこまれた。


「便利だね~」


 その後はタオルをさっと新鮮な水にくぐらせてから額においてやる。


「冷たくてきもちいい~」

「だろ~」


 次々と乗せていって一巡した。


「いい仕事したな~」

「早くみんなよくなるといいね~」


 翌日


「おはよ!いい朝だな!」


 マリィは今日も元気いっぱいだ。一方

「うぅ、頭いたい」

「だる~い」


「お、お前ら!風邪か!」


 どうやら同室の全員が風邪をひいてしまったらしい。

 昨日一緒に完全防備だったはずのシロッコも辛そうだ。


「今日は授業できる感じではないですね。それにしても、昨日も看病だって騒いでいたのにマリィだけ大丈夫だったのですね。」


「はい!元気です!」


「といっても、みんな風邪だし今日は授業できないわね。今日は自由にしていいわよ。」


 ヴェストリアは重症そうな子がいないか確認すると言って行ってしまった。

 一瞬、やった休講だ!と思ったものの、よく考えると遊び相手もいないし一人だと何をしようか逆に問題だ。


 とりあえず自分の部屋に行って残りの三人に機能と同じように新鮮な水にさっとくぐらせたタオルをおでこにかけてやった。

 ということで昨日からやっていた看病ごっこも飽きたしどうするかな


 結局、孤児院にいてもすることがないし、うるさくすると怒られるというのもあったので街ブラだ。

 記憶をたどってふらふら歩くと病院の前まできた。


「ここが病院か」


 病院というよりは規模的には診療所いわゆる町医者という構えだ。

 たぶん入院設備とかはないのだろう。

 街でも風邪がはやっているのかちらほら体調の悪そうな人が入っていく。


 お店部分も併設されているのでちょっと入ってみた。


「これがポーションか」


 何種類もあるが結構やばい色をしている。赤とか黄とか紫とか。

 値段は一番安い外傷がちょっと治るだけの下級ポーションでも3000円からだった。

 やっぱり高いな。

 あと色々細かくあるが、どれも下級ばかり、この辺の小さい病院だとそんなもんなのかと思って後にした。


「あら、マリィじゃない」

「あ、ボトラシーさんだ!」


 以前に自分の才能を見出してくれたギルドのお姉さんだ。

 ギルドに行ったときは見なかったけど。


「何してるの?」

「ぶらぶらしてるだけだよ。みんな風邪ひいちゃって寝込んでるからね。」

「あら、最近風邪はやってるから気をつけなきゃね。」


「そういえば、ちょっと前にギルドに行ったけどいなかったね。」

「冒険者ギルドに行ったの?」

「うん」

「私、普通のギルドの方だからね」


 いや、鑑定持ちの冒険者あがりなのに市役所職員のほうかよ。


「そういえばライトニングボルトってマリィのことでしょ?ギルドでも噂になってたわよ。すごい足の速い子がいるって、有名人ね。」


「へへ」


「あれから魔法の特訓はしてるの?」

「ああ!そういえば!だいぶ調節できるようになったよ!」


 そういってその辺の排水溝に向けてぴゅーッと水を出して見せた。

 お風呂でよくやる両手をぎゅっとして水を出すあれを空中で。


「すご、そんなに微調整できるなんて、しかも詠唱してないよね」


 そういえば詠唱してなかったけど、イメージが固まってからはなんかできるようになったんだよな。


「簡単な生活魔法と言っても、この期間で詠唱時間がなくなるまで修練できるなんて、やっぱり才能あるわね。出せる量もレベルが上がって増えた?」

「いや、出せる量は変わらないね」

「あら、レベルはあがってないのかしら」


 うーん、結構いっぱい使って習熟してる感はあるけど、レベルを上げるのはまた別なのかな。


「レベルが上がるとどのくらい出せるようになるの?」

「う~ん、生活魔法だとマリィの1.5倍くらいが限界かしら?水の攻撃魔法だったら威力も量ももっとだせるから、もうちょっと大きくなったら魔術の訓練もしたほうがいいわね。」


「魔術!訓練はどうやってしたらいいの?」

「攻撃魔法は危険だし、難しいから専門の人に習うのよ。魔術師ギルド、と言っても冒険者ギルドの部門の一つなんだけど、そこのメンバーになって習うことが多いかな?あとは普通に師匠を見つけて習うっていうのと、もっと大きい街だと専門学校もあるみたい。」


「孤児院出身じゃきつそうだなあ」

「そうね。師匠を見つけるのが一番いいかしら。と言ってもこの街だとそんなに強い人はいないから、冒険者として見習いをやって実力を多少付けたら州都あたりにいくのがいいんじゃないかしら。」


 その後も冒険者の中で魔術師は戦闘時の立ち位置が難しいとかいろいろ聞いてボトラシーとは別れた。

 ベイリャと冒険者になるとしても他の仲間とか色々考え始めておかないとな。


 目的だったポーションの市場調査もおわったので孤児院へともどってきた。

 帰宅したはいいもののまだ明るい時間で暇だ。とはいえ、お手伝いなんぞさらさらする気はない。


 とりあえず一旦自室へと戻る。


「うわ、空気わるっ!」


 雰囲気的なやつではなく物理的なほうだ。

 完全によどんでんじゃん。


「おら、換気だ!換気!」


 そう言って窓を全開にした。


「マリィちゃん、さむいよ~」

「ちょっとだけだから我慢しろ、ウイルス舞ってんぞ」

「だから、ういるすってなに~」


 寝ていた3人はさむいさむいと文句をいってくるが、実際はいうほど寒くない。

 たしかに今は冬のピークではあるものの日本でいうと秋の終わりくらいの寒さだ。


 他の部屋も換気して回ってたら夜になって晩御飯の時間だ。

 ゾンビのような子供たちがつぎつぎと食堂に入っていく。


「うそ・・だろ・・」


 晩御飯は一日の食事のなかで一番おいしいはずなのに、そこにはおかゆだけが置かれていた。

 いつもはあれだけわいわいしながらの食事なのに、みんな無言でおかゆをすすっている。

 さすがにここで騒ぐことはしないが元気な私は全然足りない。


 そうすると何が起こるのか、決まっている。盗み食いだ。


 おかゆを食べて決まった時間にさっとお風呂にはいればもう就寝だ。

 流石に今日はみんなすぐ寝ているし、見回りもしていないだろう。

 そろりそろりとマリィは部屋を抜け出した。


 行先はキッチン

 ローズガーデン孤児院の食材はきっちり管理などされていない

 なので多少のことでは誰も気づかないのだ!


 この時間だし、明かりは手元の小さい魔石灯だけ、しかも部屋用のしょぼいやつなので大した光量はない、となると当然のことだが料理するというようなことはできない。

 ということで料理をしなくても食べれるものと言えばパンだ。


 朝ごはん用のカチカチのブロックパンは常備されているので、マリィは慣れた手つきで2本いただいた。

 そう、これが初めてではない。

 ちょいちょい小腹が空いた日はやっていて、一度もバレたことはない。

 しかしながら朝のミルクは早朝に配達されるため常備はなく、しかたなく水でふやかして食べる。


「なにかジャム代わりの調味料になりそうなものでもないかな~」

「とはいっても、異世界の食材はゲテモノもあるから気を付けないと・・・」


 当たり前だがジャムは高いので置いてなどない、しょうがなく引き上げようとした時だった。


 ギィー


 誰かきた!

 超反応で魔石灯を消す

 陰に潜んで息を殺す。あの背格好はヴェストリアだ。

 そのまま水を汲んでヴェストリアは帰っていった。


「ふぅ~、今日も成功しちまったぜ。」


 部屋に戻ってブロックパンをバリボリ食べる。

 ふやかしてもまだ全然固い。

 水はいくらでも出せるようになったからホント便利だな。


 翌朝

 わかってはいたが、だされたブロックパンを見て、またこれか・・・とげんなりするマリィであった。



 キャラクター紹介

 マーランシ=ローズガーデン(7歳)

 マリィの舎弟3号

 性別:男

 種族:人間

 レベル:Lv1

 職業レベル:人間種Lv1

 装備:孤児院の服

 仕事:孤児院の子ども

 口癖のファーーはある動物の鳴きまねをしているだけで普通に喋ることもできる。

 髪型は坊主

 普段からうるさいが、なんかおもしろいという理由だけでマリィに子分にされた。本人もついて回ることが楽しくて一緒に遊んでいる。

 将来の夢はお菓子屋さんになり、お菓子をいっぱい食べること



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