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11_新年祭へ繰り出そう!2

 いよいよ新年祭の朝がきた。


「朝だぞー!おきろー」

「もうちょっと寝させてよ~」


 鐘がなる前から起きだしたマリィは昨日遅くまで話し込んでいた三人をおいて朝の支度を始めた。


「おはようマリィ、もう起きているなんて、今日はしっかり働くのよ」


「ふぁーい」


「よいしょ」

 支度と朝食の後、いよいよ祭りの店準備だ。売り物である内職で作った小物の箱を孤児院の玄関に準備していく。


「今日お店をする人は集まってちょうだい」


「なんだなんだ」

「今日は特別にお小遣いを支給します。休憩時間で屋台から買い物をしていいわよ。」

「「わー」」


 そうだった。そもそも金がないと何もできないんだった。

 いくら貰えるんだろうと思っていたが一人2000円らしい。

 物価がよくわからないから、どのくらいの価値観なのかはわからないが所詮こどもの小遣いだからそこまで遊べるものではないだろうけど。


「よっと」

「マリィすごー、でかい箱を両肩でもつなんて!」


「いくぞ!ダッシュだ!」

「マリィ!あぶないから卸しなさい!」


 そんなこんなで売り物の搬入が終わった。私たちの店番は最初に割り振られていたので、そのまま物を並べていく。


「ふぅ~、準備終わったね。」


「よし、開店するか」


「まだ鐘がなっていませんが、まあ初めてもいいでしょう。」


 一応ヴェストリア院長もお店の方にきて見張っている

 。ずっといるわけではないらしいが、なるべくいると言っていた。

 よし、めっちゃ売ってやるぞ!


「さぁよってらっしゃい、見てらっしゃい!お兄さんもお姉さんも孤児院特性グッズの大安売りだよ!新年祭特化だよ!」


 マリィが急に大声で威勢よく商売を始めたものだから通行人も何事かと集まってきた。


「取り出したこのカゴ!今ならなんと1000円のところを!よ、男前のお兄さん!800円だよ!ほら!そこの男前のお兄さん!」

「なんか10人くらいこっち見てるけど・・・」


 気づけば店は大繁盛、元々孤児院での内職だけあって価格は相場よりかなり安いので例年ほっておいても売り切れているとか。


「お、ライトニングボルトじゃねーか」

「威勢よく売り子してるって聞いてきたぜ」

「おっさんは1000円スタートだぞ!」

「こりゃあ、きびしいね」

「マリィ、ちゃんと決めた値段で売りなさい。」


「よーし、終わりだー!」

「みんなでお店を回りましょ!」


 私たちは午前の当番で午後は別の子だ。

 今日のお昼ご飯は渡されたお小遣いで食べるようにとのことになっている。私たちはいつもの4人組で移動だ。


「何食べようかな。」

「どこいく?」

「まずは、あそこだ!」


 最初にやってきたのはそう、昨日からきになっていたあのお店、タピオカ屋だ。


「600円もすんのかよ。高いなあ。でも、ここは流行に乗るしかないな」


「ねぇ誰も買ってないよ。これ買うの?」


 そうなのだ、目をつけていたタピオカ屋にきたのだが、全然繁盛していない。

 たしかに私が日本にいた時も流行りが終わった後は次々に閉店していた記憶がある。とはいえ、なんとなく懐かしい気もするので最初に来てみた。


「おっさん、タピオカミルクティー一つ!」

「うお、子供か、やっと今日一人目のお客さんだよ。ちょっと待ってな。」


 今日一人目ってなんだよ。なんか怖くなってきたな。

 これも名前だけ一緒で全然違う食べ物だったりするのか。


「あいよ」

 その場で貰ったタピオカミルクティーを見てみる。

 紙コップのようなものに入っていて日本で見たのと同じく穴の大きい紙ストローがついていた。

 そして飲んでみると、うまい、完全に日本で飲んだタピオカを再現してる。


「すご、ちゃんとタピオカだ・・・」


「ん?お嬢ちゃん知ってるのか?流行に敏感だね~、これついこないだ州都で売られ始めた流行の最先端だよ」

「私も一つちょうだい!」

「あいよ。いや~、この辺の人は誰もこれを知らないみたいでさ、全然売れなかったら困ってたとこだよ。あの神童で有名な領主様の娘が考案されたものだっていうのにねぇ」


「神童!?」


 その言葉を聞いたら聞かないわけにはいかない、私以外にも神童が近場にいたのか。


「おっちゃん、その神童について詳しく教えてくれよ」

「いやー、おじさんも本部の人じゃなくて雇われだから、どうやってレシピ開発したとかはしらないよ。」


「タピオカじゃなくて、神童ってやつ!すごい子供なのか?」

「ああ、ウィンクーンの領主様の娘だね。パルフェ様だったかな?なんでも頭がかなりいいらしくて色々な流行を作り出してるとか。」

「ウィンクーンって?」

「マリィ、知らないの?ここら辺一体のことだよ」

「そうそう、ここトラクーンもウィンクーン州の一部だ。州都の方だとかなり有名みたいだよ。タピオカ以外にもあっちで売ってるポテトチップスも考案したとか。まあ、お貴族様の話なんてどこまで本当かわからないけどね。」


 そうか、たしかに貴族だと泊つけとかで人の功績を横から搔っ攫うなんて日常茶飯事なんだろうな。そう考えると本当に私と同じ神童なのか怪しいぜ。


「なんだよ、ライバル出現かと思ったのに。」

「何々?お嬢様と張り合うの?」

「さすマリ!貴族の子どもとも張り合っちゃうのね!」

「さすがに貴族は危ないし張り合わねーよ、おっちゃん、タピオカうまかったぜ。」


 並んでいる店の間には簡易の休憩スペースみたいなものが設けられていて飲み食いできるようになっている。まずはそこでタピオカ飲みながらの作戦会議だ。


 さっきのタピオカで600円、これで残りが1400円、ちらっと見た感じ串焼きや海鮮など400円から800円くらいだった。あとさっき言ってたポテチも400円だが食べたい。う~ん、全然足りない。


 結局魚のサンドイッチ600円と400円のイカの串焼きにした。魚介類の方が比較的安いみたい。

 あと、こいつら私と同じものしか頼まないな。


 そしてお待ちかねポテチタイム!

 こっちの世界にきてからポテチは初めてだな。

 そういえば最近発明されたとかいってたっけ。


「ポテチひとつください。」

「えっと、このポテトチップスのことでいいのよね?」

「うん」

「そんな略し方している人初めて見たわ。はい、どうぞ」


 もちろん4人とも同じものを購入。

 横目でちらっと見るとタピオカ屋は相変わらず人が入っていないようだ。

 とりあえず広めのところでまったりおやつタイム。


 バリバリバリ


「普通の塩味か。コンソメがいいんだけどなー」

「コンソメ?これおいしいね~」


 食べながらだべっていると人が近づいてきた。


「お、ギルマスに喧嘩売ってた嬢ちゃんじゃないか」

「あ、ギルドを案内してくれた人」

「祭り楽しんでるか、ほら飴ちゃんだ。」

「なんか、みんな飴くれるな・・・」

「この季節はよく採れるからな~」


 ん?飴が採れるってなんだ?


「この飴って・・・どこかで作ってるんじゃないの?」

「キャンディの木を見たことないのか?あの実をとってちょっと加工してるだけだぞ」


 また謎の食品だったか・・・


「そういえば、お前かなり足が速いんだったか?」

「そうだよ。」

「冒険者向いてるかもな、やってみたらどうだ?考えとけよ~」


 いやいや、部活じゃないんだし、そんな軽い感じで誘うなよ。

 しかも足が速いからって陸上部でもあるまいし、命のやり取りするやばい職業だろ。


 その後もお金はないが、適当に店を見て回ったり、近所の人に飴を貰ったりした。


「そろそろ帰るか~」

 帰り際、タピオカ屋が目に入ったがやはり繁盛していないようだった。普通においしかったけど馴染みがないからだろうな~


「おっちゃん、はやってないな」

「ああ、お客1号か。まあ、都会の流行りがここらあたりまで浸透するのは時間がかかるのさ。中央通りの方でも売ってるからそっちは多分売れてると思うけどな。」

「だいぶ余りそうだから一杯やるよ。第一号で買ってくれたしな、サービスだ。」

「やったー、ラッキー!お兄さんいい男だね!」

「異常に調子いいな・・・」


 ちょっと引かれた。


 まだ夕方になるかどうかの境目くらいの時間、帰路につく。

 いつもと違って街はガヤガヤ、ただそれも悪くなく心地いい煩さだ。

 お神輿や太鼓はないけれど、やっぱり祭りの雰囲気はいいものだな。


 私たちは朝搬入したから撤収は手伝わなくていいらしく、孤児院に帰ってきた。さて、夜まで暇だなあ。


 夜は花火・・・去年は普通にみんなで外に出て座ってみたっけか。

 もっと見晴らしのいいところで見たいな。となると屋上か、屋上って行ったことないな。

 孤児院は2階建てだが屋上にあがる階段はある、屋上に給水設備とかがあるからだ。


「ちょっと屋上いってみようぜ」


「え、突然何?屋上は入るなって院長がいってたよ。」

「いいっていいって、祭りの日なんだから無礼講だよ。」

「無礼講ってなに?」


 そんなことを話しながら屋上に向かう。食堂の方では夜のお祝いご飯の準備をしているようだ。その横を通って二階へ、自分たちの部屋の横も素通りしてさらに奥へ。


「あったあった、この階段だ」


 ドアで遮蔽されている階段だが、特に鍵はかかっていなかったので、そのままガチャっとあけて階段を登っていく。

 階段の先にも屋上用の扉があり、そちらも特に鍵はかかっていなかった。


 カラン


「イテッって、なんだ木の棒かよ。」


 屋上に出ると早速目の前には広い街の景色が広がった。


「初めて屋上にきたけど、景色いいなー、気持ちいい~」

「遠くまで見えるよ~」


 このあたりの民家はほとんどが一階建てで、通りの方までいくと2階や3階の建物もある感じだ。

 しかも天井が高いので2階の屋上といっても日本の2階よりかなり高く3階かへたしたら4階くらいの高さがあるかも。


 この体は目もいいようで、遠くまでバッチリみえる。

 さっきまで祭りで歩いていた通りの逆方向をみると民家の先に大きい建物がいくつか見える。

 あれが市内中心部かな?こうしてみるとこの街もかなり大きい。


 一体、この世界にどれだけの人が住んでいて、この街にもどれくらい人が暮らしているのだろう。


 そんなことを考えながらぼーっと街を見ているとふいに前世のことを思い出してきた。


 私が死んでも世界は動いているんだよね。


 もう戻れない世界でも人々は暮らしている。


 ここに私はいるのに、あっちには私はいない・・・


 帰りたいというわけじゃないし、帰れもしない。


 でも、いろんな人に囲まれて生きてきた私がとても懐かしくて。


 最近はあまり前世のことも気にならなくなってたのに。


「マリィどうしたの!悲しいことあった!?」


 どうやら私は感傷にひたって泣いていたみたいだ。


「いや、何もないよ!景色がきれいだなってだけ!」


 ちょっと強がってみたが、見える景色も段々赤みがかかって夕暮れになってきた。


「花火楽しみだね」


 ああ、そうだった、このまま夕暮れとともに夜になって終わっていくような気がして気分が沈み始めていたが、今日は花火があるんだった。


「やっぱ、ここは景色がいいから、花火みやすそうだと思ったがバッチリそうだ。夜にもう一回来るぞ!」

「花火のためだったのね!さすマリ!」


 食堂に行くとパーティの準備が進められていた。


「お前たちも帰ってきてたのか、じゃあ手伝え。」


 ガットルン先生に言われて配膳を手伝う。

 普通にはそれぞれが自分の分を受け取って運ぶのだが、特別な日は配膳以外に大皿での料理も出す。

 ようは食べたいだけ食べろっていうやつだ。


 この世界の正月料理は甘い味付けのものが多い、なんの伝統なのかわからないが。

 ただ、子供だと甘いものが好きな子は多いのでみんなよく食べる。

 今持って行った大皿も見た目はポテトサラダだけど、味は甘いやつだ。

 食堂は他にも正月らしくいたるところに飾りつけがされている。

 太陽をモチーフにした飾り付けだが色は全て白、もっとカラフルでもよくないか?


「それじゃ、それぞれの分を配るぞー」


 今日は普段のパンと違って柔らかめのパンが配られて、晩御飯がはじまった。


「タピオカおいしかったね」

「私はポテトチップスの方がおいしかったなー、マリィは?」

「うーん、私もタピオカかな?」

「じゃあ、私もやっぱりタピオカにする!」


 花火は暗くなってからすぐあがるわけじゃなく、結構遅い時間だ。

 たしか去年の感じだと22時くらいだと思う。普段21時には寝てしまうので結構頑張る必要があるが昨日はしっかり寝たので全然大丈夫だ。


「それじゃ、後でこっそり屋上にいくぞ」

「バレないかなあ」

「始まる前までみんなと外にいて、ギリギリでこっそりいけば夜だしばれないだろ。どうだ、完璧な作戦!」


 その後、お風呂にも入って準備万端。

 他の子たちもだいたい食堂にいて花火を待っている。


「それじゃ、そろそろ花火の時間だから外に出るぞ~」


 ぞろぞろとみんなが外に出ていく、もちろんマリィ達も作戦通りに一緒に外へ出た。

 正確な時間はわからないが、おそらくそろそろだ。

 外に出た後も15分くらいはみんな集まってガヤガヤしている中なので大丈夫そうかな?


 こそこそ4人組は暗い方へ一旦行ってから遠回りで建物内へ入っていき、そのまま屋上へ行った。


「やったぜ、バレなかったな。」

「うわー、真っ暗だよー」

「落ちないように気をつけろよ。」


 一応、あまり端にはいかないように陣取って花火を待つ。

 日本と違って世界が暗い。街の明かりは正月でいつもより明るいはずなのにそれでも星と月が日本で見たよりもはるかに光って見えた。

 三つの色違いの月が近いのは相変わらず圧巻だな。

 今は二つが8割くらい、一つは三日月だ。


 ヒューーーーードンッ


「わあああ」


 花火が始まった。


 下からもみんなの歓声が聞こえる。

 去年も見たはずだけど、今年の方がきれいに感じる。

 それは日本と比較しているからかな。

 昔見た花火大会より、明らかに規模は小さい。

 花火も凝ったものではない。

 でも日本より暗い夜空に咲く花は、あの時見たものよりもずっと綺麗に感じた。


 私はここで生きていくんだ。


 明日からも、新年も、ここで、みんなと。


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