第2話 婚約は淡い陰謀から
「失礼いたします」
儚げだが、どこか凛とした女性が
静かに部屋に入ってきた。
すると、待ってましたと言わんばかりに
慧都が立ち上がって大きく紹介した。
「みんな!紹介するわね、桜ちゃん」
「お初にお目にかかります」
桜は、丁寧にお辞儀をし
柔和な眼差しを浮かべて言った。
「お知り合いなんですか?」
一瞬、慧都と顔を見合わせると
「泰斗様の・・・・何だと思いますか?」
少しイタズラっぽく言った。
数秒考えた後、一同の中で一番素直な槙が答えた。
「・・・婚約者?」
すると、桜は手を合わせ嬉しそうに言った。
「残念でした。正解は、婚約者の妹でした~!!」
「・・・・・・もう、恥ずかしいから何度も言わないでくれ」
後ろで、静かに目立たないように心がけていたのにと
小さく呟きながら、強い眼差しが特徴の女性は懇願した。
桜がそう言うと、泰斗も嬉しそうに紹介をした。
「兄さん、この人が僕の婚約者の楓」
「ひ、久しぶりだな、草太郎」
「おう。婚約者って楓のことだったんだな。
なら、許す。てか、やっと叶ったんだな泰斗」
「うん、僕頑張ったと思う。こんなに鈍い楓相手に」
「・・・・・・・お前ら、私の扱いひどくないか?」
「やっと私たち兄弟になれたのよ。もう、うれしくって」
桜は、頬に手を当てて、草太郎に視線を投げた。
「泰斗様と、私と草太郎様が結ばれるのが早いか、
泰斗様と姉さまが結ばれるのが早いか賭けてたんですよ・・・知っていました?」
草太郎は胸の前で右手を大きく振った。
「いや、初耳!!お前らがそんなに仲良かったのも初耳!!」
「・・・・・私はどうですか?」
桜は両手を合わせ熱っぽく言った。
それをただ唖然と見ていた藍の背中を神於が強く叩いた。
「藍、お前も言っとけ」
「え、え、で、でも、無理だよぉ」
「取られてもいいのか?あんな美少女がライバルなのに」
「分かったわ、女の意地よ。がんばる」
「がんばれ~、・・・だってさ、槙」
「いじめないで下さい。今度から神於さんのお茶は淹れません」
「ひどっ、草のじゃねぇのかよ」
「草太郎さんに罪はありませんから」
「草太郎様、私の事どう思ってらっしゃるんですか?」
「どうって・・・・なぁ?」
「草ちゃん、私の事好き?」
「ああ。結構気配りするもんな、お前。いい嫁になんぞ」
神於は美女2人に囲まれながら、いまいち的を得ていない
回答をしている草を離れたところで見ていた。
隣にいる槙はというと、ひたすら神於のカップにコーヒーを注いでいた。
「・・・槙、手が熱いんだが」
さっきからコーヒーがカップから溢れている。
「聞こえませーん、年ですかね(笑)」
「・・・あっづ!!!!頭かけんな!!!」
「はははははははは」