表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

俺が転生する二日前

作者: 敷波千歳

「全くどうして奇妙な事が何度も続くんだ?」


栄二は乱れた黒いネクタイを直しながら深い溜め息をついた。




かれこれ2週間になるだろうか。


今まで日本酒の辛口しか飲まない親父が急にロマネコンティだかの高いワインを飲み始めたり、風呂上がりには木綿の紺の浴衣から白いフワフワしたバスローブに着替えていた。




「そういえば、舎弟も変だな」


スーツを整え直して溜め息をついた。


竜雄はよく出来た舎弟で栄二とは寝食を共にする程の仲ではある。




「最近はあいつも異世界だとかどうのこうのほざきやがって」


栄二は腹が立ったので黒いスーツの胸ポケットの中からタバコのマルボロを取り出して1本吹かした。




煙が空と消え去る。


「…暇つぶしにゲーセンでも行くか」


吸ったタバコをガラスの灰皿でじゅっと消した。




近くのゲーセンでは中学生たちが騒ぎながらアーケードゲームをやっていた。


ピカピカと光の点滅が眩しい。


その横で栄二は安っぽいがいかめしい龍が絡みついた剣の銀色のキーホルダーが欲しくなった。




「試しにやってみるか」


栄二は手に握り締めた百円玉硬貨2枚をそのキーホルダーのあるクレーンゲームに入れた。




クレーンゲームのクレーンは細く折れそうな金属で3本足が付いている。


栄二はそれを上手く動かして、キーホルダーの輪に引っ掛けて落とそうとした。




だがその横にあった安っぽいプラスチックの入った細く小さな緑のガラスのついた指輪の入ったケースがキーホルダーの上にあったせいか先にコトンと落ちてきた。




「かーっ!全くついてねぇな」


栄二はその安っぽいプラスチックのケースを無理やり皮のバッグに押し込み銀色のテープには☆契約の指輪☆と印字されていた。




「兄貴ー!何をしているんですかぁ?」


振り返ると竜雄がいた。


ヤクザには見えないふくよかな顔。


「別になんてことねぇよ」


栄二はぷいと横を向いた。


「これからステーキハウス麒麟に行きますが一緒にどうっすか?兄貴。」


竜雄はジーパンのポケットに手を突っ込んだまま話した。




「ステーキハウスぅ?」


栄二は今まで肉と言ったら和食処夕子のすき焼きしか食べたことがない。


ましてやステーキは初めての食べ物だ。




竜雄が走っていく後からついて行くレレンガ造りの店で名前はなんだと栄二が見上げたら「ステーキハウス麒麟」と竜雄が呟いた。


赤茶けたレンガ造りのステーキハウスは筆遣いの大きな字で確かにステーハウス麒麟とかいてあった。




焦げ茶色のドアに金色に輝くベルがカランカランと音を立てて鳴った。


するとボブカットの黒髪の女性が出てきた。


「竜雄ー?元気ぃー?」


ボブカットの笑顔が眩しい女性は朝美と言った。




開いたドアからは肉の香ばしい匂いとアルコールのツンとした匂いが栄二の鼻についた。




竜雄が朝美と話し込んでいる間に栄二は席についてステーキとビールを一つずつ頼んだ。


中は隠れ家のような雰囲気でお忍びで来てもバレないだろう。


栄二はそう思いながら奥のカウンターに目をやった。


カウンターでは初老の男性がが無言でステーキを焼いていた。




店にはどれもこれも年代物のウイスキーやワインが並んでいる。


間接照明て照らされた店内はレンガの影響か赤く染まっていた。




「ステーキとビール持ってきたよ!」


朝美がビールジョッキ2杯と焼けたステーキ2つを持ってきた。


焼き方を頼んでもよかったが初めての店なのでよく分からない。


竜雄は慣れているらしくレアというステーキの焼き方を頼んでいた。




栄二はビールを飲んで口に白いヒゲ蓄えていた。


竜雄の口から赤色の肉汁が垂れるのをみていると肉食の獣の姿が被って見えた。




「夢の中で俺、ドラゴンになっているっすよ」


竜雄はそう話した。


「夢の中では燃え盛る戦場の中で縦ロールの金髪美少女と共に戦っているんっすよ。」


竜雄は食べていたステーキを飲み込んだ。そんな話をしていたら向かいの席の赤いチェック柄と伸ばしっぱなしの長い髪に大きな丸メガネの男性が紙袋からある本を取り出して読み始めた。


表紙には縦ロールの美少女とドラゴンが描かれている。




「あれは…お嬢が読んでいる本じゃないか」


栄二はその本をぎろりと睨みつけた。


すると、その男性は気恥ずかしそうにその本にしおりを挟んでどこかにしまいこんだ、。


丁度、頼んだメニューが来たようだった。




「あの本…お嬢がよく読んでる本じゃないてすかあ?」


竜雄はそう話した。


「緑の事が?」


緑の顔が頭の中で浮かんだ。


『栄二さーん、晴海に一緒に行って、同人誌やコスプレ見に行こうよ』


『ドラゴンや、縦ロールの女の子が活躍する世界は絶対あるんだからっ!』


ファンタジーやドラコンの話を目を輝かせながら話すが栄二には全く分からない世界だった。


そのことを思い出す度に気が滅入る。


「水飲んだら帰るわ。」




栄二は氷がほぼ溶けた水をあおった。




その夜に、親父がお嬢の為にと人形を買ってきたのだか金髪縦ロールに目は濃紫のガラス玉の入った目で栄二を見ていた。


その手には指輪を嵌めていてますます栄二の心をぐじゃぐじゃにしていくような感覚だった。




「俺は風呂に入って寝るわ、」


栄二は風呂に入る事にした。


風呂に浸かりながら、頭を巡らす。


(異世界…ドラゴン…美少女…何だそりゃ)


頭がくらくらして来たので出ることにした。湯上がりに白の浴衣の着替えて栄二は眠りについた。






夢の中では周りが火の海だった。


叫び声や悲鳴が聞こえる中、自分の顔が何か違和感に気がついた。


顔にかかる金髪縦ロールのふんわりした髪。


手は華奢な白い肌、服はとても高価そうなドレスで横には赤いドラゴン。


「なんじゃこりゃー!」


栄二は夢の中で絶叫した。





























































































































































これが長編の始まりです

間違って長編の投稿していたのを再投稿しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ