第79話 弓使いエミリを毎日待つハーフエルフ姉弟 お城に来て半月が経つが母の気持ちはもう……
第二章スタートです、
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「……まだあのふたり、こっちをじーっと見ているな」
凱旋パレードから半月が経ち、
俺はグレナダ公爵家とお城を交互に泊まっていた、
二拠点生活と言うには近いが、新ハーレムと旧ハーレムの間を行ったり来たりだ。
(そして遠くから、城の出入口を見つめるハーフエルフの姉弟……)
たまに父親らしきエルフが来て回収に来るが、
基本的にはずっと立って待ち続けている、うーん、
俺が公爵家に行っているタイミングでも欠かさず毎日来ているらしい。
「ラスロ、ぼーっと窓の外を見て……またあの子たち?」
「お、おうアリナ、もう会議は終わったのか」「会議じゃなく研究よ」
「ただいまですラスロサマァ、新しい封印の術式を、絶賛開発中デスゥ」
そう、パレード翌日から、
いやこのふたり、アリナとネリィはあのパレード後の夜から、
もうすでに魔界ゲート封印のために頑張ってくれている、今日まで毎日。
「それで間に合いそうか」
「やはり、魔界側の詳しいお話が必要です」
「ラスロサマァ、あれから思い出した事はありますカァ?」
……逃げるようにハーフエルフを見続ける俺、
あんまり城に近づくと警備の衛兵に怒られるため、
邪魔にならない距離で、じっと、じーーーっと待ち人を……
「ラスロ」「ラスロサマァ」
「あっうん、無我夢中で気が付いたら出てた、
空間を切り裂いたんだが、やはりその瞬間は憶えてない」
と、いうことにしてある、
本当の事なんて言えるはずがない、
出来れば墓場まで持って行きたい秘密が関係しているのだから。
「やはり最新の術式を上手く組み込む必要があるのですが」
「最先端のその先、更に新しい魔法を創る必要が出てきましたァ」
「そのためにはあれだ、ミオスとハミィともしっかり」「それはもう」「当然デスゥ」
新ハーレムの魔法組、
賢者のミオスと魔女っ子ハミィとは上手くやっているようだ、
いやハミィは十二年前の印象から今だに魔女っ子に思える事がある。
(もう結婚できる年齢なんだがな)
まあそのあたりは後回しだ、
などと思っているとハーフエルフ姉弟が動き始めた!
これは……母親である弓使いエミリが城へ帰ってきたからだ。
「あーあ、抱きついたのを振りほどいちゃった」
何度も見た光景、
最初のうちはそれなりに相手をしていたが、
もう最近はあまり相手にしないようだ、そして城について行こうとして衛兵に止められる姉弟。
「ラスロ、心が痛むかしら」
「まあな、そう言うアリナは」
「……私にまったく責任が無い訳では」
おさらいすると俺が完全に死んだという事となり、
俺への弔いはアリナが生涯するから、正妻が独占するからと、
残りの側室に新たな恋を促した結果、家庭を作り子供までも……
「連れ去られないか心配ですネェ」
「そう言えばネリィの娘と息子も来てなかったっけ」
「魔導都市へ帰しましたァ」「どうやって」「秘密ですぅクフフッ」
こっわ。
「まあお城周辺は一番治安が良いから、当然だけど」
「ちなみに王都の端に、エルフの集落があるの知ってる?」
「あー、でっかい樹の所に」「今はもう八世帯くらいしか居ないらしいわ」
十二年前までは二十世帯くらい住んでいたはずだ、
エルフは人間の世界では住み難い、よほどタフなエルフか、
愛する人が一緒とかの精神的な強さが無ければ無理だろう。
(昔会ったエルフは、年に一か月は里帰りするとか言っていたな)
それでも一度でもエルフ国を出た者は、
戻れる場所が限られるとか、国境付近の集落で、
まあそこならエルフと結婚した人間も……ってエルフが姉弟の所へ行ったな。
「あの眼鏡エルフの女性は確か」
「はい、王宮付きエルフのフォラウさんですね」
「家に帰してくれるのか」「でしょうね、例の王都内集落に借りているみたいです」
とか言っているとエミリが帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「エミリ、そのなんだ、あの姉弟は」
「……私の気持ちはもう揺るがないわ、今日もはっきりと『迷惑』と告げました」
それを聞いて胸が苦しくなる俺。
「ちゃんと話し合ったんだよな?」
「まずエルフの森へ手紙を出しました、
しかしこちらへ来てしまったので、再度、こちらの住居に手紙を、何度も、何度も」
……こればっかりは当事者同士の話、かなぁ、
俺もまったく関係ない訳じゃ、だからといって、
ここで俺が入ると、エミリと結婚する前提になってしまいかねない、いや復縁か?
(結婚式らしきもの、例のパレードの時にやった、あれはあの子ら、見てないのだろうか)
このあたり、
話に踏み込むのが怖い俺が居る、
ヨランじゃないがエミリに『一緒に謝って』とか言われたら……
「旦那さんは、どう言っているのかな」
「相変わらず決闘を申し込まれているわ、
私が負けたらエルフの森へ帰ってくるようにと」
弓の決闘かぁ。
「やる気は」「無いです、負けますから」
「そうなんだ」「はい、このあたりは特殊な話で」
「エミリって弓矢の腕はエルフ以上って言われてたのに」「ラスロを二度も失いたく無いの」
そう言って俺を抱きしめるエミリ。
「……もう俺は行方不明になったりはしないよ、多分」
「ええ、また消えたらその時は、今度はきちんと探すわ」
「それはそうとヨランは」「今日もロズリと一緒に騎士団の練習に参加しているわね」
機会があったら見に行くか、
いやいっそ俺も参加するって手もあるな。
「それでラスロ」
「ああエミリ、そろそろ離してくれ」
「……陛下から、軽い依頼があるそうよ」
軽い、依頼ねえ。
「俺たち全員にか?」
「とりあえずは『手の空いている者で』ですって」
「ふむ、内容は」「それが……」




