第75話 新旧ハーレムのチームワーク そしてパレードはフィナーレへ
「まあ素敵な花束、ありがとう!」
ヨランが動こうとした瞬間、
なぜか新ハーレムの正妻ミオスがそう言い前に出て、
真っ先にベルナルくんの花束を受け取った!!
(いや、ぐいっと斜め前に出たぞ?!)
不自然なくらいに……
ベルナルくんは、あれ、なぜだか安心した表情、
そしてヨランは、と思っているとロズリが引っ張った?!
「ヨランさん、お友達の娘さんだそうですよ」
「えっ、誰?!」「ヨランさま、ヴィルジニ=ヴィアールのむすめ、マノンです!」
「うそっ、ヴィルジニの?!」「あっ、俺も何度も会った事あるぞ!!」
周囲を探すと居た居た、眼鏡をかけているが、
間違いなく十二年前に知っている、女剣士ヴィルジニだ!!
こちらの目線に気付いたようで手を振ってくれている、俺とヨランも笑顔で振りかえす!
「どうぞー、ははうえが、おあいしたいそうです!」
「ええ是非、いいわよねラスロ?」「ああ、それにしても、娘かぁ」
って花束持ってる子ひとり余っているな、
これは俺のか、急いで受け取ってっと、
そして子供達は揃って一礼、馬車は再び走り始めた。
「ラスロ、懐かしいわねヴィルジニさん」
「ああアリナ、俺たちの準メンバーと言っても過言では無かったからな、なあヨラン」
「……十二年前、帰って最初に励ましてくれたのがヴィルジニだった、最初は手紙のやりとりもしていたが……」
一瞬、暗い表情になりかけたが、
民衆のために笑顔で手を振る、俺も振らなきゃな、
それにしてもさっきの花束贈呈……あれで本当に良かったのだろうか?
「ヨラン、あれで良かったのか?」
「何がだ」「いや、ベルナルくんの花束を」
「むしろ助かった、一瞬、下の幕から……いや何でもない」「???」「見間違いだろう」
下の幕ってなんだろう、まあいいや。
「あの、ベルナルくんの花束だけでもいただきますか?」
「ありがたいが気持ちだけいただく、そのまま貰っておいてくれ」
「はい……特に手紙なども入っていないようですし」
とチェックするミオス、
横取りしたのはヨランのためなのだろう、
なんだかんだでチームワーク良いな、新旧ハーレム。
「おっ、今度は確か……」
「エルフ街ね、私にはもう関係ないわ」「エミリ……」
「エミリさん場所を、こちら側なら普通の商店街です」「ありがとうナタリ」
急に新ハーレムが旧ハーレムをフォローしている感じ、
着ている花嫁衣裳っぽいのも旧ハーレムが本域で派手なのに対し、
新ハーレムは控えめとも言えなくは無い……このあたり、気を使っているのかな。
(誰が気を使っているか、というのもあるのだろうが)
そんなこんなでパレードはお城が見えてきた、
いよいよフィナーレへ、現役騎士団が勢ぞろいしているな。
「勇者ラスロ様、ならびに聖女アリナ様ご一行に、敬礼っ!!」
綺麗な礼だなぁ……
懐かしい見知った顔も、そこそこ。
そして陛下が見守る中、普通にお城の中へ吸い込まれる俺たち。
(うん、無事に終わった……と、思う)
でも何か、
なーーーんか心にモヤッと、
これは何なのか……まあいいや、これで義務は果たした。
「さあラスロ」「ラスロ様」
「あっ、もう降りるのか、ありがとうアリナ、ミオス」
「「いえいえ」」「で、アリナはもう聖女なのか?!」「みたいですね!」
幸せそうな笑顔……
本当、ロズリもエミリもハミィもだが、
完全に嫁に来たみたいだ、俺はまだ……決めていないというのに。
「あっ、ダンジュくんもありがとう!」「いえっ!!」
ダンジュくんの敬礼を最後に見て、
婚約者お披露目パレードらしきもの
は終わったのであった、
さあ、これからが本格的な、魔界封印の始まりだ!!
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「御主人様」
「……ベルナルは」
「教会でお菓子を貰っている頃かと」「そうか……」
深く大きなため息をついた、
ヨランの夫であるモリス侯爵、
台座の幕の下から出た所で立ち尽くしていた。
「……御主人様? 旦那様?!」
執事が心配そうに声をかけるも、
俯いたまま……そして静かに話しはじめた。
「あんな笑顔、今まで一度も見た事なかった……」
ヨランがラスロと並んでの笑顔を思い出す、
本当に心の底からの、まさに解放されたかのような……
それを見て全てを察し、まさに心が完全に折れた様子だ。
「確かにあの奥様は、初めて見せる表情でしたが」
「ああなった以上、私にもう用は無いな……よし、帰るぞ」
「あの、奥様は」「新しいのを用意してくれ、何でも言う事を聞くならもう誰でも構わん」
ようやく前を向いて、
息子の居る教会の方へ歩き出したモリス。
(心の整理が出来たら、礼でも贈っておこう)
こうしてヨランは、
晴れて自由の身になれたのであった。
……そう、自由には。




