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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第68話 こういうときは男と男の相談に限る いつ決断するかじゃない、後悔しない道を選べるかどうかだ

「では改めて、ラスロ、十二年ぶりの再会に乾杯!」

「とはいっても封印の行きに会ったがな、オリヴィ、乾杯!」


 新ハーレムとのデートが終わって城で一息ついた後、

 なぜかお城に来ていた旧友オリヴィとふたりっきりでの酒場、

 とはいえ遠くにアサシンのナタリがひとり呑みながら様子を窺っている。


(見張りか……いや、この場合は護衛とでも思っておこう)


 別に注意する事でも無いからな。

 ということで俺はこれまでの行動を、事細かに説明した。


「それにしてもそうか、一時的な封印か」

「うまく騙し騙し、魔物が出ないようにやり続けられれば良いのだが」

「そのあたりは何か、最終手段は」「あれは魔界側からなら閉じやすい、それはあまり考えたく無いが」


 そう、俺が入って閉じる事も、もちろん出来る。


「今から世界中の教会に人柱を出して貰うか」

「だったら俺がやるよ」「周囲(まわり)が許さないだろう」

「とにかくこれから、聖者賢者と魔法使いの四人が結界の改良をしてくれる、はず!」


 あれだけの魔力、

 そして新旧魔法の融合、

 あとは俺が結論を先延ばしにする事での協力体制があれば!!


(いや世界の平和がかかっているのだが)


 なんとかなる、の精神で、

 魔界に落ちてもなんとか戻ってこれたが、

 十二年も経っていたからなあ、『なんとかなる』にも、なんとかなった所でリスクもある。


「それはそうとラスロ、明日のパレードだが」「えっもう?!」

「俺は婚姻パレードと聞いて王都まで戻って来たのだが」「俺と誰とのだ?!」

「知らぬ、教えてくれ」「いやオリヴィ、俺が知りたい」「ラスロが決めて良いんじゃないか?」


 これはそうか、

 もう、今すぐどっちを取るか、

 誰と結婚するか、さっさと決めろという事か。


(確かにふらふら迷って、勇者らしくないのかも知れないしな)


 いっそ、いま決めるか。


「よしオリヴァ、コインを貸してくれ」

「あぁ別に良いが、どうするつもりだ?」

「表が出たら新ハーレム、裏が出たら旧ハーレムと」「おい」


 突っ込まれてしまった。


「今、決めていいって」

「それで後悔は無いのか?」

「いや、まず『決める』という行動を」「落ち着け」


 両肩を持たれてしまった、正面から。


「……確かに俺は陛下に、式の延期を申し出て了承され、ただ凱旋パレードはすると」

「ならそれが正しい、まだ結論を出さなくて良い、お前はいったい何に追われているんだ」

「実は……旧ハーレムの子供達が来ていて」「それでか……確かにその子達のために、早くはっきりさせたいだろう」


 酒をぐいっと呑むオリヴィ、

 俺も負けじと……これで気持ちを落ち着かせられるか?

 むしろ、余計に興奮しそうな……元々、俺はそんなに呑むタイプじゃない。


「オリヴィ、もちろんそれだけじゃない、旧ハーレムに言われればそちらへ、

 新ハーレムに言われればそちらへ、心がずっと言われるがまま引っ張られていて」

「ラスロ、冷静に考えろ、魔界で十二年間も寂しい思いをしていたんだ、心が不安定になっていても、おかしくない」


 ……確かに、

 そういう意味では俺はまだ、

 魔界の瘴気にやられているのかも知れない。


「しかしもう、随分と時間が」

「しかも昔の婚約者が三人も結婚していたんだ、

 深く傷ついているのは当然だ、そこへ無理に決断を迫る方も悪い、陛下はすぐ答えを出せと言ったか?」


 いや、むしろ逃げたな。


「……だがこのままだと、永遠に決まらないと思われてもおかしくは」

「そんな事は無いのは俺がよく知っている、というかまだ仮封印して戻って来たばかりじゃないか」

「なら俺は、どうすれば」「結論が出るまで、納得行くまで悩んで、考えて、比べて、話し合って、答えを見つけるんだ」


 つまりは早まるなってか。


「そんなに待たせて、良いものか」

「待ってくれるさ、ラスロの事が本当に好きならな」

「うーむ」「そのうえで考えに考え抜いて、皆とも話し合って、そして最終的に出た答えがコインであれば、喜んで貸そう」


 ……よくよく考えたら、

 俺のそういう正直な気持ちというか、

 今、俺がどうでどうしてどうとか、詳しくみんなには言ってないの、か?


(ずっと一人で抱え込んでいたからな、魔界で……)


 十二年間、ひとりっきりだった弊害か、

 そう、『人間ひとりっきり』で居た十二年の……


「ラスロ、そこで改めて聞きたいんだが」

「な、なんだオリヴィ」「お前……何か後ろめたい事がないか?!」


 ぎくり


「なぜそんなことを」

「直感だ、十二年前のラスロを思い出したら、なんとなくな」

「……それを言ったら新ハーレムに対し旧ハーレム、旧ハーレムに対し新ハーレムにそんな気持ちが無くは無い」


 俺をいぶかしげな目で見るオリヴィ。


「そうか……まあ良い、そこを追い詰めるのは俺じゃあない」

「とにかく、酔いが回る前に明日のパレードについて聞いてくる」

「ああ、どんなパレードになろうが俺はラスロを称える、よく帰ってきてくれた」


 がっちりと握手。


「ではなオリヴァ」「どんな道を選ぼうがラスロはラスロだ」「わかった」


 いやあ相談して良かった、

 もうこれはいつ選ぶかではなく、

 いかに後悔しない道を選ぶかだな。


(それにしても……勘が鋭いなオリヴァ)


 新旧ハーレムメンバーにも、

 勘付かれていないと良いのだが、

 と思わず遠くのナタリを一瞬だけ見た俺であった。

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