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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第67話 喫茶店で一息つくはずが せっかくの個室だから踏み込んだ事を聞いてみよう。

「ええっと、ここ、高級レストランだよな?」

「はいラスロ様、一応はそうですが」「いやいや俺は軽く冷たい茶を飲もうと」

「そう言われたのでご案内致しましたが」「いや喫茶店のつもりで」「ここも普通にお茶を飲めますが」


 街中デートでさんざん振り回された俺は、

 若さに負けて少し休もう、一息つこうと、

 ちょっと一服、お茶でも飲もうと言ったら連れてこられたのがここである。


(十二年前、それ以前も何度か来た超高級レストランだ)


 確か酒一杯が普通のレストランのフルコースと同じ値段、

 冷たい紅茶でも普通の一番良いランチにデザートを付けたくらいの値段だったはず、

 十二年前でそれだ、今だと物価的にどうなっているやら……怖くて値段は見ていない。


(買い物してわかった、十二年で物価は倍近く上がっている)


 魔物が出て来なくなったら逆に物価は下がりそうなのだが、

 いや皆の手に入る金が増えると相乗的に消費の値上がりするのか、

 まあとにかく十二年間、魔界に居た俺にとっては懐かしくも緊張する場所だ、しかも個室。


(すっげえ綺麗で豪華なメイドがやってきた!)


 いやこの給仕さん、

 メイド呼びでいいんだよな?


「お待たせ致しました」

「うっわ、なんだこのキラキラしたお茶は!」

「四年前から提供しております、新しい『玉露』というお茶で御座います」


 これ、絶対高いやつだ!!

 みんなにも配られて……普通に飲んでいる、

 こういうの十二年経っても緊張するな、いくら俺が勇者でも。


(そんな称号、魔界じゃ役に立たなかったけどな!)


 それにしても沢山買い過ぎた、

 荷物持ちは男の仕事、って持とうとしたら、

 ロズリが『私をお使い下さい』と言って全部引き受けてしまった。


「さて、ラスロ様」「ああミオス、どうした」

「何かお話をしましょう」「しましょう、と言われても」

「私達のどこが好きですか?」「ちょ」「どこを好きになって、いただけますか?!」


 そうきたか、

 陛下からあてがわれた婚約者、

 政略結婚のようなものでも、愛さないと失礼だ。


(旧ハーレムが居なければの話だが……)


 いや、そもそも彼女達はどうなんだっていう。


「前も少し聞いたような気がするが、みんなはどうなんだ」

「と、申しますと」「俺のどこが好きなのか、という詳しい部分を」

「ではそれをお伝えすれば、好きになっていただけるのですね?」「と、とりあえず聞いてから」


 思わず一気に玉露を飲み干す俺、

 あっ、ハミィがおかわりを頼んじゃったよ。


「ではこの私、ミオスから」「ああ」

「幼い頃の事を憶えてらっしゃいますか?」

「そりゃあ、各公爵家には世話になったからな」


 資金とかお金とか路銀とか。


「それで勇者ラスロ様と一緒に踊っていただいたとき」

「って何歳の時?」「七歳ですね」「……あー、そんなことあったな」


 きちんとしたレディとして扱ったら、

 顔を紅らめていたよ、たったいま思い出した。


「その時、私と結婚して下さいと、申し込みました!」

「えっ、そうだっけ」「はい、確かに! その返事はまだ、いただいておりません」

「あー……俺らしいな、苦笑いして逃げた気がする」「それからずっと、ずっとです!!」


 なんだか俺も罪深いな、当時七歳の子供に……

 アリナが居るから、なので言うまでもないと思ったんだなきっと。


「でも、今の俺がその想いに応えられるかどうか」「これからですね!!」


 そんな目を輝かせて言われても。


「次はロズリ」「はい、ずっとずっと、ラスロ様の伝説を読んだり聞いたりして」

「それって美化されてないか?」「嘘があったのでしょうか」「いやそれ俺、読んでないし」

「勇者様と結婚できる、それだけでもう騎士団員の女性は天にも昇る気持ちです!」「そ、そうなのか」


 俺ってそんなに立派な人間だったっけ?


「ナタリはまあ、ある意味で、致し方なしか」

「そのような言い方をされなくとも、もう愛する覚悟は出来ています」

「そ、そうか」「何なら私好みにちょうき……きょうせ……いえ、一緒に生きていければと」


 いま、『調教』とか『矯正』とか言おうとしなかったか?!


「最後にハミィは」「そうですね、十二年前に会った時から、

 叔母よりも私と一緒にっていう気持ちはすでに芽生えていました、

 あとは理由は色々ありますが、その中で言い易いので表現すると、愛し甲斐があるといった感じですねぇ」


 ……じゃあ、言い難い理由もあるのか、

 叔母への対抗心だとか、もしや寝取り性癖とか??


「ではラスロ様、ここで統括を」「お、おうミオス」

「まずこの婚姻は、国王陛下がお決めになられました」

「じゃあ断れない結婚という訳か」「でも、それを聞いて嬉しかったです!」


 それが答え、か。


(つまり、今は俺への幻想で満ち溢れている感じか)


 だと、もうボロが出ていてもおかしくないはずだが。


「俺が陛下に言って断る事も出来るが、多分」


 それこそ旧ハーレムを理由にして……

 でもそれだと本当に復縁しなきゃならなくなるな、

 いやいや俺は結局、どうしたいんだっていう……まだ混乱しているのか?


「ラスロ様、ご安心下さい、お望みでしたら私達の方で上手くやります!」

「つまり、何を」「アリナ様達の処遇です、ラスロ様と魔界ゲート封印をやりながら」

「両方同時に出来るのか」「はい、私達の愛の力、あとラスロ様の協力があればですが」


 ……いいかげん決断しろってことか。


「もうちょっと、考えさせてくれるかな」

「はい、では甘いものを食べて、是非是非」


 と、メイドがケーキを持って来た、

 カットされているものの種類も数も多いな、

 明らかに高級そう、そして甘そうだ、もちろん美味しそう。


「じゃ、じゃあ、いただくよ」

「はい、私もラスロ様好みのケーキを自作できるよう、頑張ります!」

「私もですよ」「このわたくしめも」「お兄さま、このハミィもですぅ」


 ……俺ってそんなに、

 清く正しい価値のある男なのかなあ?


(確かに心が揺れ過ぎだ)


 答えを出す、

 結論を、いや決断をしなければならないのはわかっている、

 魔界ゲート封印まで時間はあると思っていたが……決めるなら早い方が、良さそうだ。


(永遠に決まらないなんて事は、そんな選択肢は絶対に無いのだから)


 それはそれとして……


「うっま、このケーキ美味いな」

「でしょう?」「はいラスロ様、あーん」

「こちらのケーキは甘さ控えめでいて美味しいかと」「お兄さま、ほっぺにクリームがぁ」


 彼女達の真っ直ぐな愛に、

 胸が少しちくちくする俺が居たのだった。

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