第66話 突然のデートは新ハーレムと しかし旧ハーレムの影が目の前にちらちらと。
「さあラスロ様、最初はどこへ行きましょうか」
城の外へ連れ出された昼下がり、
ミオスに引っ張り出されて王都の城下町をデートである、
一応は四人程度の衛兵も離れてついてきているが、やはり周囲には……
「ラスロ様、まずは剣でも見に行きましょうか」「いやロズリ、武器は特に」
「服を見ましょう、十二年間で流行も随分、変わっているかと」「ナタリ、そんな私服にこだわりは」
「お兄さま、魔導具市へ行きましょう、勝手にパンを焼いてくれるものなどが」「ハミィ、そんな腕に絡まなくても」
いやこれデートというより連れ回しだな、
若い女の子に強引にっていうのは嫌じゃないが、
十二年前はどうだったっけ、後で思い出そう、今夜にでも。
(あっ、この店まだあったのか)
まずは雑貨屋へ、
軽いアクセサリーに小さな魔道具、
奥には服もあるな、帽子や下着も男女両方……
(ってハミィは勝手に物色しているし!)
確か二階には万人向けの武器防具もあったはず、
冒険者用というよりは護身用の、平和になっても荒っぽい動物は出るからね、
あと普通に対人ということも……あとはそうそう、窓際に軽い喫茶店もある、あれこそ十二年前と同じだ。
(あれ? 見知った顔の少年が座ってて……こっちに気付いて立ち上がった!)
そして僕らの方へ、
うん間違いない、ベルナルくんだ、
お付きの私兵も来たが後ろめたいのか少し距離を取っている。
「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
深々と礼、
謝るのはベルナルくんじゃない気はするんだが。
「あれはびっくりしたよ、それでヨランは」
「怒って会っていただけません、少し時間を」
「いや、あれは悪手だったな、誰のせいか知らないが」
と、あえて私兵の方を見てやる。
「ラスロ様」「お、おうミオス、ところでお金は」
「私が預かっていますよ、何でも買えます、数さえ控えれば」
「えっ、じゃあ全員分のお揃いのアクセサリーとか」「それなら喜んで!」
坊ちゃんに手を振って買い物へ、
ハミィが良い物を見つけたので何かと思ったら、
魔道具ではなく指輪だった、まあこんな所で売ってるからあくまでファション用だ。
「これなんか良いですねぇ」
「ハミィ、かなり質素な感じの指輪だが」
「魔法付与には丁度良いです、ミオスお姉さまと一緒にぃ」
今度はお姉さまと来たか、
俺の知らない間でハーレムメンバー同士、
色々とあるんだろうな、まあいずれ呼び方も固まるだろう。
「まあ値段も安いし……よな、十二年でそんなに変わってないよな?」
「はい、そんなには! 早速買って参ります、五つで良いですよね?」
「まあな、あれだ、勝手にサイズが合う魔法がかけられているやつだよな」
ミオスが嬉々として買いに行った、
という感じで買い物を一通りして、
次の店へ……途中でエルフの店があるな、あっちも喫茶店併設か。
(エルフ、ハーフエルフ、エルフ好きの人間の店だ)
あれっ、そこから出てきた子供のエルフ、
姉と弟……お城の服を着た女性エルフに連れられていて、
俺たちを見るとまるで会わせないようにどっかへ誘導した。
(あの子ら、帰ってきた時にも馬車から見えたな、なんとなくエミリの雰囲気が……)
ええっと次はどこへ行くんだ?
「ラスロ様、教会はどうでしょう」「ミオス、うーん、今はいいかな」
「では本格的な武器防具の店へ」「ロズリはそんなに見たいのか、ならつきあうが」
「あちらですがラスロ様、高級下着専門店が」「いやナタリ、俺に選ばせたいつもりか?」
と、魔法使いハミィに近づくふたりの子供。
「ハミィお姉ちゃん」「お姉ちゃん見つけた!」
「あっ、イトコのアインとビアン、どうしたしたぁ?」
「お母様どこー?」「ママに会いに来たんだけども、どこかなー」
あー、長女と長男かぁ。
「んー、どうしましょうか、宿はどうしています?」
「お母様のお父様の所です」「お姉ちゃんのママのパパんとこ~」
「あー、あそこですか、なら心配ないですねぇ、今はデート中ですので、後で顔を見せますねぇ」
と、話を終わらせちゃった。
「お、おい、いいのか」「ささ、怪しい魔道具でも見に行きましょう」
あーあ、
なんだか置いてかれたみたいに佇んでいる、
大丈夫かなあれ、まあ王都は治安がいいから大丈夫か。
(一気に旧ハーレムの影を感じ出したな)
正確には、その子供たちの……
このあたり、やはり俺もちゃんと向き合わないといけないのか?
その前に、旧ハーレムそのものとも……うーーーむ。
「ラスロ様」「さあ行きましょう」「ラスロ様、喫茶店で休まれますか?」「さぁさぁさぁ」
「わ、わかったよ、行こう」
……子供に罪は無い気がするのだが。




