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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第54話 わざわざ会いに来たヨランの長男 連れ戻して来いと言われたらしいのだが。

(なんだか気を使って貰ったな)


 酒場の奥で一区画を丸々空けて貰い、

 そこで皆で食事をする……ダンジュくんは馬車で見張り、

 俺たちの話が終わったら改めていただくらしい、ということで夕飯だ。


「ではヨラン、紹介してくれ」

「はい、この少年はベルナル=ジョルジール、ジョルジール侯爵家の長男です」

「母上、息子とは言って下さらないのですね」「ごめんなさい……」


 口調が急に貴族の夫人モードだな、

 息子が居る手前かも知れないが、十一歳、いや十歳くらいかな?

 年齢にしてはしっかりしているように見える、なによりもだ……


「ベルナルくん、でいいかな」「はい」

「王都じゃなく、わざわざここまで来てくれたんだ」

「はい、一度、お城に入ってしまえば、拒まれれば会えない可能性もあったので」


 どこまで把握しているのだろう?

 ちなみにアリナとミオスが店員に注文してくれている、

 後でぞろぞろと料理が運ばれてくることだろう、それより今は……


「よく教育された息子さんだな、ヨラン」

「……あの人の命令通りに、従ったまでです」

「旦那さんか」「元です、モリス=ジョルジール侯爵……さま」


 一気に他人行儀にしたいらしい、

 子供からしたらショックを受けそうだが。


「それでベルナルくんは、連れ戻したいんだ」

「父上の命令です、出来るだけ早く、必ず帰らせるようにと」

「……私は、ラスロの元へ戻らないといけないの、ごめんなさいベルナル」


 暗い表情のベルナル……


「父上に、何と言って良いか」

「大丈夫よ、そしたら今度は本人が来るだけだから」

「母上……私は、母上の昔の事は、直接は何も聞いておりません」


 じゃあ間接的には知っているのか、

 そりゃそうだ、魔王から世界を救ったのなら、

 伝説の女剣士という名声もつくだろう、剣聖を辞退しても。


「あの、私」「どうしたアリナ」

「このベルナル少年と、ふたりっきりでお話が」

「……思い出した」「何をなの? ラスロ」「その手は……怖い」


 そう、十二年前までの事だ、

 何か揉め事があったり対人でまずい事があった場合、

 本当に切羽詰った時とか特にだが、アリナが急にひとりで、


『お話してきますね』


 と言って相手と去り、

 しばらくすると全て話がついていた、

 完璧に解決していたりする、という事が多々あった。


(しかも、内容は一切、教えて貰えないという)


 相手からも、アリナからも……

 他の(当時の)ハーレムメンバーも知らない、

 聞かされていないと言っていたのでアリナ独自の会話術か何かだろう。


(それを使うのは、ちょっと強引、反則な気がする)


 脅しているのか、

 何か対価を与えているのか、魔法を使っているのか……

 とにかくこれで二人きりにして、戻ったら解決していた、は違うと思う。


「では、どうしましょう」

「俺が話すよ、ベルナル君は当然、帰ってきて欲しいんだよな?」

「そうですが……できれば」


 出来れば、かあ。

 ヨランが戸惑い気味に彼に話しかける。


「ベルナル……ごめんなさい」

「母上、父上がすみやかに戻れと、用件が、用事があるならすぐ済ませるようにと」

「……それで言えば、私の用事、用件は……私が死ぬまでよ」


 母親ヨランはこんな口調なんだ、

 俺に会った時だけ、再会した時だけ十二年前に戻していた感じか、

 どっちが正しいとか本物とか無い気がする、うん、ヨランはヨランだ。


「まさかとは思うが、一人で来たのか?」

「いえ私兵が、この店の外に四人、控えています」

「そうか、安心した……まあ、そうだよな」


 これで単独行かせる父親だったら、

 さすがに倫理的にな、もしそういう作戦で、

 ヨランに保護者として連れて帰らせるつもりだったとかなら……許せない。


「ではそのまま、帰ってちょうだい」

「もう、戻るつもりは無いのですか?」

「そうね、王都で近いうちに、改めて式を挙げるつもりよ」


 えっ、もうそういう事に?!

 ……行きだったら怒っていたな、

 いや、現に怒っていた記憶が、あの時はまだ混乱していた。


「……母上、決意は固いのですね」

「ええ、モリス=ジョルジール侯爵様がいらしたら、頭を下げるわ」

「あの頃の……剣術指南を申し込んで断られた時の雰囲気を感じます」


 あっ、少し涙ぐんでいる!

 年齢的に言えばまだ子供だからな、

 そして、更にこの下が三人も居るんだっけ。


「ええっとベルナルくんに聞きたいのだが」

「はい、勇者様ですよね」「おっと改めて、ラスロと言う者だ」

「この国に住んでいて、知らない者は居ません」「最近、帰ってきたばかりなんだがな」


 それよりもだ、

 俺が聞きたいのは……


「なんでしょうか」

「ヨランは……ちゃんと母親をしていたかい?」

「ラスロ!」「大切な話だ」「はい、母上は、母上でした、ただ……」


 暗い表情になるベルナルくん。


「ただ?」

「正直に言うと……母上は母上でした」

「つまり?」「母上という役を演じるだけの、母上のようでした」


 やっぱり子供は、

 そういうの、わかっちゃうかぁ。


(もっと深く聞いて、解決策を探ろう)


 って、もう俺がヨランを貰う流れになるのかこれ?!

 それはまあ、とりあえず後回しにしてだな……って料理が来ちゃったよ、早いな。


「よし、前菜を食べながら話を聞こう、ヨランという母親について」

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