第48話 とりあえずの仮封印に成功 とりあえず帰路だがさて、どうしたものか
「あー、こっちだ、うん、おそらくはそうだ」
魔界ゲート封印後の帰路、
例の件(俺の名を呼んだ魔物について)は触れるなという空気を出しつつ、
さっさと王城へ戻ろうと思ったのだが、生真面目な性格のアリナが、
「ゲートから出た魔物が、別ルートで集落へ向かっているかも知れません」
と言うので、あえて違う道で戻る事になった、
せっかく整備した廃坑も帰りに寄らないとなると、
もったいないというか……結局、俺が最初にゲートから王城へ辿り着いた道を行っている。
(うろ覚えだが、まあ目指す王城の方向は間違いない)
実は城から貰った勇者ペンダントは、
手でぶら下げて念じると王城の方へ引っ張られるという、
なので三つに割れてもわざわざスライムの粘着液でくっつけて持っていた。
(で、ダンジュくんの運転の横に俺が座っている、道案内だ)
ちなみに反対側はロズリだ、
一応は運転席の警備のつもりらしいが、
まあ間にダンジュくんが居るとはいえ俺と一緒に居たいのだろう。
(間の運転手に、お構いなしで話しかけてくるし!)
「それでラスロ様、途中の宿泊は」
「そんなの荒野で大の字に決まっているだろう」
「それですと虫が」「魔界の魔物に比べたら、何てことは無い」
灯りに寄ってくるからな、
何も光らせなければ、そこまででは無い。
「わかりました、では馬車の中で……あっ、目の前に魔物が!」
「まずいな、レッサーデーモンか、中途半端に賢い連中だ、戦略を練らないと」
その声が聞こえたのか否か、
窓からネリィが顔を出して杖を掲げる。
「さっさと片付けちゃいますネェ!!」
無詠唱の炎魔法で焼く焼く、
まるで地獄の業火のようだ、
いや魔界には行ったが地獄は見た事は無いが。
(反対側の窓からも、詠唱を呟きながらハミィちゃんが……)
こっちは時間がかかるが、
近づき切る前にきっちり焼き潰してくれた、
やはりルートを変えて良かったこんなのが集落に到着したら、たまったもんじゃない。
「ラスロサマァ、愛していまスゥ」
「ではラスロお兄様、またのちほど」
そして引っ込んだふたり。
「……ふう、さあ戻ったら、どうしようか」
もちろん俺がそう話しかけているのは、
ダンジュくんを挟んだロズリにである。
「お城へですよね、やはり予定通り公表、そして結婚式を」
「陛下は盛大にとか言っていたけど、その、アリナ達については」
「来賓席で良いのでは」「いやいや、来賓って!」「式を観る権利は、あると思います」
帰り道ついでに整理しよう、
確かに出発の時、俺と新ハーレムのみんなに、
魔界ゲートの対処が終わったら、戻り次第、盛大な結婚式とか言っていたっけ。
(そして、出発直後というか出発と同時にとでも言うか……)
旧ハーレムがやってきて俺と再会、
国王陛下によると確かに、俺のハーレムは崩壊していた、
ただ、俺が生きて戻ったという報せは大急ぎで贈ったという。
(その結果が旧ハーレム大集合ですよ)
そして陛下は逃げた、
いや王城に戻ったら普通に居るとは思うが、しれっと。
これで居留守とか使われたら、さすがに不敬でも文句を言うぞっていう。
「うーーーん、『封印がまだ未完成なので、結婚式も保留で』とか」
「ラスロ様、このロズリ、そしてミオス、ナタリ、ハミィとの結婚式を、
先延ばしにしてしまう何か理由でも、おありなのでしょうか???」
そんな首を傾がれても……!1
「解決したら、とかいう話じゃなかったけ」
「そうでしたでしょうか、とりあえず封印は出来たようですが」
「早ければ一か月で解かれるのだが」「新婚旅行は一か月もあれば十分です」
もうそんな話に?!
「うーーーーん」
「唸る事ないかと、もっと単純に考えれば」
「どう単純に」「現在の婚約者と結婚する、で良いですよ」
いやロズリに許可を貰っても!
……やはりここは、個別に聞いて回るべきか、
それとも俺の中で、とっとと結論を出してしまうべきか。
「あっ、あれは」
「どうしたダンジュくん」
「また魔物の群れです、マタンゴ系ですね」
よく知ってるな、
こっちじゃ魔物が出なくなって十二年経ってたのに。
「じゃあ、あれは……」
「アレも燃やしマスゥ!」
「叔母さんには負けませんから」
うん、魔物に対しては仲間がやってくれる、
俺は俺で、お城に到着するまでに……できれば決めてしまおう。
(新ハーレムを取るか、旧ハーレムを取るか。それとも……?!)
さて、どうしたものか。




