第47話 到着した魔界ゲート その先に見えた謎の魔物の影とは?!
「うっわ、この禍々(まがまが)しい気配は、まずいな」
ついに到着した魔界との出入り口、黒い霧の塊り、
元はといえば俺が『とある犠牲』を払って開けたのだが、
人ひとり、俺がぎりぎり通れる穴が今や立派な巨大ゲートだ。
(おかしいな、俺が出たら穴はそれで固定のはずだったのだが)
当時これくらいの大きさならそんなに魔物は出てこないだろう、
と楽観視してそのままにし城へと戻ったのだが、閉じ方知らないし。
でも馬車からの結界が効いてか、黒い臭気のようなものは出た傍から掻き消えて行く。
「これ……封印できるか?」
「よし、私が斬ろう」「ヨラン?!」
剣を抜いて、
いきなり切り裂いた?!?!
「うっわ、闇の魔力が増した気がするぞ!」
「ヨラン、これは逆効果よ、傷口を広げた感じね」
「そ、そうかアリナ、済まない……思わず手が、剣が出てしまった」
懐かしいな十二年前、
何かにつけてすぐに行動を起こそうとして、
よっぽどの場合はアリナがむんずと掴んで止めたっけ。
(やはり久しぶりか、アリナの手が届かなかったみたいだ)
俺も止め忘れた。
「あのラスロ様」「どうしたミオス」
「とりあえず、光魔法でこの黒い霧を払ってみませんか?」
「いや、奥から無限に湧いてくると思うぞ」「しかし様子を見る事くらいなら」
先がどうなっているか見ても、
大して意味は無い気がするのだが。
「アリナも見たいか?」
「内部の視覚情報は、あるに越した事はありませんわ」
「ネリィとハミィは」「見たいデスゥ」「構造に少し興味が」
まあ、魔法組がそこまで言うのであれば。
「よし、じゃあみんな頼むよ」
「では私とミオスが前、後ろに私の方はネリィ」
「ハミィ、私の背中に手を……そして杖をアリナ様と一緒に」「ええ、持つわ」
一応、剣士組は構えて何が飛び出てきても斬れるよう準備、
ってこれ俺も入った方が良いな、後ろでは遠距離攻撃組もスタンバイ、
高い位置から敵が飛んできたらとりあえず弓矢と毒針だな、効くかは知らない。
(魔法組が早速はじめた、光魔法が杖に充満していく……)
ミオスとネリィはまだ詠唱が必要か、
なにかぶつぶつ言っているな、そして明るくなって、
杖の先から闇の、魔界のゲートに向かって……放たれて、入って行った!!
ピッカァーーーッッ!!!
(おお、晴れて行く、懐かしい魔界の赤茶色い台地が見える!!)
そしてやはり奥から闇の臭気が流れて来ているのが見て取れる。
「ラスロ、奥に影が!」
「あれは……ラスロ様、人型の魔物の影ですわ!!」
ま、まさか?!
「ラスロサマァ、早速、魔法攻撃を!」
「叔母さん、早くしないと黒い霧で見えなくなりますよ!!」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょーーっと、待ったあああああ!!!」
えっ?! という表情で俺の顔を見る魔法組の四人、
いや剣士組、遠距離攻撃組もか、全部で八人、みんな俺を見ている。
「ラスロ、どうしたの?」
「間違いなくあれは、尻尾のある魔物でした!!」
「ラスロサマァ、まずは炎魔法でェ」「風魔法で斬り裂いてみるのも」
まずい、みんな殺る気満々だ。
「ちょ、ちょっと落ち着こう、どんな魔物か見極めないと」
「ゲートに居る魔物よ、油断してはいけないわ、とりあえず雷魔法を投げますね」
「アリナ様、お待ち下さい! 何か、何か声を発しているようです!!」
ミオスのその言葉に、俺は慌てる。
「き、聞く必要は無いだろう、魔物の鳴き声なんか!!」
しかし無情にも、
その声は聞こえてきてしまう。
「……ス……ロ……、ラ……スゥ……」
「まさかこれはァ、ラスロサマを!!」
「よし、閉じよう、四人とも光魔法の壁を造って、ゲートにぴったりとくっつけてくれ!!」
焦る俺をぽかんと見るみんな。
「……あの魔物が来る前に! あれはやっかいだ、まずは防御を、アリナ! ミオス!!」
「は、はいっ」「わかりましたっ!!」
「ネリィとハミィも、ってエミリは矢を撃たない!!」
良かった、幸い向こうの地面に突き刺さっただけだ。
(俺の勢いに圧されてか、みんな急いで障壁を、光魔法のバリアを張ってくれる!!)
眩しい光で魔界も見えなくなっていく……
「……ラ、ス、ロォ……」
向こうの声も、
やがて聞こえなくなって行った……
(ふう、とりあえず一安心、かな)
しかし、
バリアの淵からうっすらと闇の霧が漏れている。
それを確認したアリナが俺の目の前へやってきた。
「やはり万全とはいかないようね」
「ああ、ただこれだと一か月以上はもつだろう」
「……そのつど、魔力の補充を」「いや、おそらく耐性が出来て外される、そうなるとコレも効かないだろう」
そうなるとやはり、
内側から閉じるしか方法は無いか?!
(にしても、あの魔物は間違いなく……!!)
その考えを見越してでは無いだろうが、
ヨランが俺の肩に手を置いて真剣な声で言う。
「あの魔物に心当たりは」
「……さんざん、十二年間あっちで魔物を倒し続けたんだ、恨みくらいは買っている」
「そうか、ではやはり攻撃した方が良かったか」「いや、それはまあ、なんだ……とにかく、一旦は王城に帰ろうか」
一時的な封印も、
問題なさそうだしな!!
すると今度はアリナが笑顔で。
「帰り道に、色々と聞かせて貰うわ、ね? ラスロ」
「……ダンジュ、仮の封印が終わった、帰るぞーー!!」
「あっ、アリナ様、これ誤魔化していますよね?」「ええミオス」
こうして俺たちは、
帰路に向かったのだった。
(言えない……魔界での、あの出来事だけは……!!)




