第46話ついに封印の場所へ その前に確認しておかなくてはならない事がある
「馬が怖がって……これ以上は行けねえ」
もうこの先がようやくゲート、
という所でストップだが、ここまで来れば徒歩でも大した距離じゃない、
そうだ、もういっそ、ここで……
「アリナ、ミオス、馬車から結界魔法を出してくれるか」
「「はいっっ」」
「もしこれで魔物が逃げるとすれば、ゲート内へ、魔界へと逃げるだろう」
馬車の屋根にまるで収納されていたかのような立体結界魔法、
アリナ達が念じると再び出現し、周囲の薄い『闇の霧』を払ってくれる、
あっ、遠くに魔物が、と思ったら勝手に滅してくれた、黒いガス型、影系の魔物だったようだ。
「……ラスロ、あれは」
「ああアリナ、見える、魔界ゲートだ」
「いよいよなのですね」「その前に、確認がある」
ダンジュくんを馬車に残し、
新旧ハーレムの八人を横に並べる。
「ラスロ、どうしたの?」
「これはあまり考えたくないのだが……十二年前と同じ事になる可能性がある」
「それはつまり」「最悪、俺が単独で魔界へ入って、内側から閉じる」
もちろんアリナ達の魔力であれば封印できると思う、
しかし何が起こるかわからない、現に俺がひとり魔界に落ちるだなんて、
俺含め誰ひとり予想できなかった、そのせいで俺は完全に死んだ事にされていた。
「そんなこと、ラスロ単独じゃ不可能では」
「まったくアテがない訳じゃない、現にこっちへ出て来た時も……」
「どんな方法かは知らないけれど、壊すのと封じるのはまったく別よ」
アリナの言うはわかる、
おそらく塞ぐのは、壊す十倍の手間暇がかかるだろう、
それこそ犠牲が必要になる場合も……
「元々これは俺のミスだ、俺が魔王に道連れにされたばかりに」
「それを言い出したら私もよ、ラスロ」「私もだ」「私もよ」「わたくしネリィめもぉ」
旧ハーレムも責任を感じているみたいだ、
と思ったら新ハーレムのミオスも俺に声をかける。
「何を皆さんで勝手に責任を取ろうとしているのですか、
そういった最悪の場合を避けるために私達がラスロ様の正妻側室になったのですよ?」
「そうです、私達を見くびらないで下さい」「犠牲は出しません、アサシンの名にかけて」「もう私も、私達も一蓮托生ですよ」
みんな、もう覚悟は出来ているみたいだ。
「……こういう時、どうしたら良いんだろうな、
俺は正直言って、俺一人の命でなんとかなるのなら」
「もう置いて行かないでください、私も、いえ、私達も一緒に行きます」
そう言ったアリナが、
ずいっと迫って俺の頬にキスをする。
「……修道院に身を捧げるのも、魔界から戻ってこれなくなるのも一緒です、
ただ違うのは、そこにラスロが居るかどうか……ならば私は、ラスロを選びます」
「アリナ……」「これは正妻とかサブリーダーとか関係なく、この私アリナの意思です」
続いてヨラン、エミリ、ネリィも。
「魔界へ駆け落ち、良いではないか、ラスロが十二年間居た世界だ、移住するのも悪くない」
「私はラスロを抱きしめてあげられれば、それで良いわ、それがどの場所であったとしても」
「ラスロサマァ、ネリィはもうラスロサマのものですぅ、一部ですぅ、ネリィにとってラスロサマは全てデスゥ」
今度こそは離れないぞ、という強い意思を感じる。
「……いいのか、本当に良いのか」
「愛してるわ、ラスロ」「迷いは無い」
「他に選択肢は無いわ」「ラスロサマラスロサマラスロサマアアアァァァ」
正直、ハーレムが崩壊した、
寝取られたようになった時は本当にショックだった、
でもこうして、十二年経った今でも命を賭けて、ある意味『やり直し』をしようとしてくれている……。
「わかった、アリナ達はわかった、それでミオス達だが」
「そうですね、犠牲は私達だけで構いません、聖女として命じます、ミオス、こちらの世界で留守番を頼みます」
「アリナ様、いつ聖女になられたのですか」「今ですよ」「認めません、そして私も、ラスロ様の正妻ですっ!」
決意を持った表情、なんとなく若い頃の、
十二年前のアリナを思い起こさせる、そんな真剣さ、
続いて他の新ハーレムメンバー、ロズリ、ナタリ、ハミィも。
「せっかく憧れの、伝説の勇者様と一緒になれたのです、どこまでもお伴致します」
「元々、私は国に処分される予定だった身、それを国のため、そしてラスロ様のためにお使いできるなら」
「もう、みなさん何を言っているんですか、九人全員の力を合わせれば戻れますよ、ですから私も行きます」
……これはもう旧ハーレム、新ハーレムとか言っていられないな、
みんな、全員が俺にとって大切なパートナー、婚約者……愛する人だ、
だからこそ護って、そしてみんなで笑顔で城へ戻りたい、その後は……
「わかった、無事に封印が終わって城へ戻ったら、
ひとりひとり、きちんと話をしよう、だが今は……」
「「平和最優先、ですよね?」」「お、おう、その通りだ」
こんな時までアリナとミオスは息ぴったりだ。
「……これでまた十二年前のように俺が消えたら、
さすがにみんな、今度こそ、今度もか、好きにして良い、
もちろん死ぬつもりは無いが……では、行くぞ!!」
みんな真っ直ぐ俺を見て……!!
「「「「「「「「はいっっっっっっっっ!!!!!!!!」」」」」」」」
とりあえず、これで確認というか、
お互いの疎通は良いかな、うん、後は封印、
どんな結果になるかはわからないが……よし、行こう!!
「ダンジュは馬車と一緒に待機、あんまり戻ってこなければ城へ帰ってくれ」
「わかりました、ご武運を!!」
こうして俺たちは、
魔界へと繋がるゲートへと足を進めたのだった。
(十二年前の後始末、その第一歩、だな)




