第42話 廃坑の整備 女性陣だけで黙々と作業って力仕事や汚れ作業は男の出番では?!
「換気は終わりましたよ」
「ただ、ガーゴイルがかなり汚したようで今は清掃中です」
「いやいや、そこまで整備しなくても」
入ってすぐの所で男性陣だけ先に夕食をいただいている間に、
女性陣は奥を見てくると言って入って行って、食べ終わった頃に正妻組だけが戻ってきた、
様子を窺って来ますとかだけ聞いてたから、そこまでするなら俺たちもついて行ったのに。
「力仕事が必要なら俺が」
「ヨランがやっていますよ」
「ロズリが張り切ってやっています」
廃坑なんだから崩れたら大参事なのでは、
というかそこまで整備する必要がまずあるのか、
などと考えていたら当の剣士組も戻って来た、全身を汚して。
「ふう、風呂場までなんとかなったぞ」
「トイレを直してきました、ガーゴイルは使わなかったようです」
「いやそりゃあ魔物だからな、むしろそのへんに」「掃除した」「掃除しました」
やっぱり転がっていたのか、
退治した魔物の掃除は焼けば良かったけど……
とにかく換気の風魔法で匂いは流せたから良かった。
「で、残りの四人は」
「エミリとネリィは風呂場の修理とお湯を」
「ナタリとハミィはトイレの修理と洗浄を」「だーかーらー!」
そういう汚れ仕事? こそ俺にさせろと。
「ではラスロ、私とヨランは宿所、寝室の整備をしてくるわ」
「ラスロ様、私とロズリは朝食をみんなでいただける食堂の整備を」
「俺に手伝わせてくれ」「ラスロはゆっくりとしてて」「ラスロ様、家事炊事は妻の仕事です」
……行ってしまった。
ふうっ、とため息をついた俺は、隣りのダンジュを見る。
「どうしようか」
「こういう時は、女性陣に逆らわない方が良いと」
「そうか……」「馬の様子を見てきますね、馬車内で休むことをお許し下さい」
……逃げたな、
いや俺もついていきたい気分だが、
どこからから持って来たソファーで横になろう。
(いやほんと、どこにあったんだよコレ)
廃坑といっても働いていた人の住居エリアは入口付近にあった訳で、
そこに残されていたのだろう、食堂や風呂やトイレはその名残だが、
かなりの年月が経っているであろうからそれを直す手間は女八人でそんなにどうこう出来るものなのか。
(とはいえ能力は並の炭鉱夫より桁違いだろうが)
一晩世話になるだけの廃坑で何をそこまで、
まあ確かに帰りも寄るだろうからもう一晩、借りる事になるし、
封印が一度で済まなければ、もっと何度も来る拠点には、なりうる。
(魔光灯も全部、直してあるな)
魔法で光る灯り、
出入口の扉はしっかり直したので外から虫は入ってこない、
むしろ奥にコウモリとかが住んでいたらこっちへ逃げてくるな。
(あっ、奥から人影が)
入れ違いで残りの四人がやってきた。
「ラスロ、お風呂を綺麗にしてきたわ」「魔法をフルパワーで詰まりも直してきましたぁ」
「ラスロ様、トイレを綺麗にして参りました」「魔力全開で、すっきり綺麗にしてあります!」
「いいけど四人とも汚れちゃってるから、お風呂に入ってきてよ、あと服も着替えて!!」
こうなると俺だけ何もしていない罪悪感が。
「ちゃんと脱衣所にラスロの着替えが用意してあるわ」
「ラスロサマのお身体もこのネリィめがキレイキレイにぃ……ィヒッ」
「トイレに手洗いもあって、そこで拭いてきました」「ラスロ様とご一緒なら、喜んで!」
……炭鉱の風呂だからさぞかし大きいのだろうが、
もういっそ距離を取って九人一緒に入るとかどうだろうか?
いや、それだと外からまたガーゴイルみたいなのが大量に来たら……
(そういえば一旦入った後、魔法組四人で外で何かしていたな)
また結界でも張っていたのなら、
この廃坑付近はもう大丈夫かもしれないが、
魔物の群れが遠回りで変な所へ行きやしないか心配だな。
(俺が戻って来たルートとも、また違うし)
あっ、食堂の整備に行ったということは!
「……ここでリーダー命令だ」
「「「「はいっっっっ」」」」
「整備した食堂で八人、夕食をしっかり採ってくれ、俺はその間にダンジュと風呂に入る」
うん、これでさすがに大丈夫だろう、
俺とダンジュだけ先に済ませておいて良かった。
「ええっとエミリとナタリ、
もちろんネリィとハミィでも良いが、
今ここに居ない四人にもしっかり伝えておいてくれよ」「「「「はいっっっっ!!!!」」」」
うん、これで風呂は落ち着いて入れるはずだ、
それにしてもまた入れるとは嬉しいな、そこは彼女達のおかげだ、
もちろんそれには感謝しつつ、落ち着いて汗を流そう。
(そして、ここから封印すべき魔界のゲートまでが、これまた長そうだ)
途中で遇うであろう、
魔物たちとの戦いにも気を付けなければ……
馬車が壊れたら、移動が大変な事になるからな。




