第38話 話が終わって寝ようとしたら いやいやそんな展開はさすがに!!
「……という訳で、ハミィはハーレムを一生お支えする覚悟です」
「うん、ありがとう、でもネリィをあくまでも『子守り担当』だなんて」
「それで良いと思いますよ、子供七人育てた経験はこの日のため、とか言い包めば」
個別面談? のラストはハミィちゃん、
いや暗いから表情はそんなにわからないが、
それにしても叔母に対して容赦ないなこの子は。
(トイレ? ナタリが気付いて行かせてくれたよ!)
さすがアサシン、頼りになる、
実際『影のリーダー』をやって欲しいってお願いしたし。
「いやほんと、ヨランもエミリもネリィも、ちゃんと離縁できるんだろうか」
「放っぽって逃げてきただけですからね、王城に詰めかけられていてもおかしくありません」
「……いやだぞ俺の胸倉掴まれるのは」「さすがにそれは衛兵が止めるかと」
まあ不安は募るが、
全ては封印が完了してからだ。
「ありがとう、じゃあ戻るよ」
「私は私でお花を摘んで参りますね」
「あっ、うん、方向は……あっちが良いかな」
俺のとは別方向を教えた、
そしてひとり馬車へと戻ると……
(ダンジュくん運転席で横になっているな)
屋根を引っ張って付けているとはいえ、寒くないのか。
「ごめんただいま、さあ寝るよ」
……あれ?
暗いものの馬車内の一列目が、
誰も乗っていないのがわかる、みんな二列目、三列目に……
「おかえりなさいませラスロ、さあ、前列で横になって」
「いやいやいや、じゃあみんなはぎゅうぎゅうで眠る事に」
「ラスロ様、みんなで話し合って決めた事です、やはりここはリーダーにはきちんと寝ていただきたいと」
ミオスまでそう言うかぁ……
(うーん、俺が個別に話している間に、そういう話で決着がついたのだろう)
確かに誰かにもたれかかって寝るのは抵抗ある、が。
(十二年前は『結婚前』『魔王を倒してから』で逃げていたな)
今回もそうするか。
「俺、屋根の上で寝ようかな」
「ラスロ、虫が降ってくるわよ」
「でしたらラスロ様、私たちで寝ずに虫を追い払いましょう」「いやいや、いいって」
正妻ふたりにも、きちんと寝て欲しいし。
「ていうか魔界から脱出した時も結構、野宿はしたのだが」
「ではみんなで、樹の根元で横になりますか?」
「ラスロサマァ、魔法で樹の根元を削って洞窟みたいにしましょうかぁ」「そんな荒っぽい」
とかなんとか話している間にハミィも戻ってきた。
「賑やかですが、どうなさいましたか?」
「ハミィ、俺に一人で、最前列で横になって寝ろと」
「わかりました、お一人が寂しいなら私と抱き合って寝ましょう」
その言葉に皆が一斉に立ち上がる!
「ラスロ、なら正妻の私が」「ラスロ様、サイズ的にこのミオスめが」
「よしラスロ、ここは間違いなく私の出番だ」「ラスロ様、いま頭を天井で打った方より私の方が」
「ふふ、さあラスロ、思う存分抱きしめてあげる」「アサシン式添い寝というのがありまして」
「ラスロサマラスロサマラスロサマ、ローリング添い寝をををヲヲヲ」「えっとラスロお兄さま、どうなさいますか、一番の無害は私かと」
なんという展開、
うん、あきらめよう。
「一人で寝ます……おやすみ」
「「「「「「「「おやすみなさい」」」」」」」」
そしてこの夜、
真っ暗な馬車内にも関わらず、
ずっと視線を感じながら眠ったのであった。
(って熟睡できやしないよ!!)
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その頃、王城のとある待合室では……
「遅くにすみません、父上に言われて来ましたが、そうですか、母上はもう」
「はい、我が騎士団の情報ですと、まだ封印に一番近い村を出たあたりかと」
「ここで待っていれば、母上は戻ってくるのですね」「無事であれば、いえ、あの伝説の剣士様であれば間違いなく」
待合室で深くため息をつく、貴族の坊ちゃん。
「母上……私は息子として、長男としてどうすれば……」
その視線の先には、
剣聖の文字が上から消されている、
十二年前のヨランの肖像画が飾られていたのだった。
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チュンチュン、チュンチュン……
「ふわあああ、よく寝……って!!」
目覚めると上から顔が四つ並んで覗いていた!!
「おはようラスロ」「ラスロ様、おはようございます」
「ラスロ、今朝の飯は私が準備した」「お目覚めの紅茶をどうぞ」
「ありがとうロズリ、アリナもミオスもヨランも、おはよう」
(まさか、ずっと、ずーーーっと見つめてたんじゃ、無い……よな?!)
朝からちょっと、冷や汗が出た。




