第34話 ここでやっと気が付いた やはりリーダーの俺がしっかりまとめて引っ張らないと駄目だと
「村長さん、ありがとうございました」
「いえいえ、良い報せを持って帰ってきてくれるのを待っていますよ」
ということで翌朝、
人のいる最後の街を出発する事となり、
準備を終えて馬車へと進んだのだが……!!
「えっと、これは何かな」
馬車の屋根、
その上に光り輝く立体的な結界が回っていた!
にこにこしながら説明するアリナ、ミオスのW正妻。
「私たちで協力して造った、魔物除けです!」
「近づいただけで魔物がわらわらと逃げて行きますよ!」
「いやそんな、『ドヤァ』って顔で並んで言われてもー!!」
ていうか、これはこれで問題が……
「ひょっとして『これで魔物に襲われないから安心』とか思ってないか?」
「はい、もちろん超高速で馬車を走らせれば、足の遅い魔物には追いつけますが」
「その場合はこの結界の影響で、かなり弱くなっていると思いますよ!」
いやいや、そういうことじゃなくって!!
「……これ、俺が説明してなかったのが悪いのかな」
「ラスロは何も悪い事は無いわ」
「なっ、何か問題が、あったのでしょうか……」
ダンジュくんも不安そうに運転席からこっちを見ている。
「そうだな、一応は発生した魔物がこっちへ向かっている以上、
急いでいるとはいえそれを討伐しながら進む必要があるんだ」
「でもラスロ、魔界のゲートを封じてさえしまえば」「でも封じている間にどこかが襲われたら?」
俺らから逃げられたら、
それが結構な大群だったら……
って魔界ゲートを作って逃げてきた俺がそもそもの元凶ではあるのだが。
(そのあたりについての説明は、また現地で!)
「つまり、結果的に我々が魔物を追い立ててしまうことになると」
「正直、今の俺たちならスタンピードぐらいの魔物大氾濫でない限り、
出会った魔物の集団は逃げさせるより俺たちで徹底的に潰した方が良い」
ていうか、一匹残らず逃がすなって話はゴブリンの時にしたはずでは。
(実戦の少ない新ハーレムはまだしも、旧ハーレムはやはりまだ感覚が鈍っているのか)
十二年ぶりだもんな。
「ではラスロ、いえラスロ様、どういたしますか?」
「えっと、途中で馬を休める時には有益だが結界範囲は」
「はいラスロ様、途中で通った砦に囲まれた山、丸ごと分くらいですね」
えええぇぇ……
「ミオスそれ本当か?!」
「おおよそですが、縮小致しましょうか」
「いったん切る事は」「やってみましょう」
アリナとミオス、
更にネリィとハミィまで協力してなんやかんや始める、
うーん、これ最初にひとこと、俺に言ってくれれば良かったものを。
(俺に気に入られようと、きっと必死に頑張ってくれたのだろうが……)
世の中、良かれと思ってやった行動が裏目に出るのはよくある訳で、
まさにアリナがそうだ、俺が死んだからと全ての罪を背負って他の三人に結婚を促し、
自分ひとりだけ俺の冥福を祈り続けるという立派な道を選んだ結果、それが間違っていたという。
(そっちに関しても俺のミスって事か)
ここで俺は、ひとつの決意を胸にした。
「ラスロ、いっそのこと一度、屋根を剥ぐか」
「ヨランすまない、今はそれよりひとつ言いたい事がある」
「ラスロ様、なんなりとおっしゃって下さい」「ああヨラン、聞いて欲しい」
魔法組も一旦、
打ち合わせや手を止めて俺の方を向いた。
「今後はリーダーの俺が、俺がリーダーとして全て引っ張って行く、
勝手な行動はするな、何か行動をする時はまず俺に相談をしてくれ、
もちろん俺が別で動いてたり行動不能なら副リーダーに任せるが、基本は俺を通せ、いいな?!」
一拍置いて……
「「「「「「「「「はいっっっ!!!!!!!!!」」」」」」」」」
うん、良い返事だ、
みんな一斉に声を揃えて……
こういう返事だけは良いんだよなぁ
(何気にダンジュくんも返事してたな)
まあいいや、
腹は決まった、
これからはリーダーとして、勝手は許さない。
「ちょっと俺も反省だな」
「ラスロは仕方ないわ、十二年間、ずっとひとりで戦っていたんだもの」
「お、おう、そうだな……おうっ」
まあ確かに『ひとり』ではあった、『ひとり』では。
(……まさか、バレないよな……?!)
こうして屋根に浮かぶ立体結界を屋根に一旦封印し、
俺たちは改めて、魔界との出入り口封印に出発したのだった、
リーダーの俺と、その仲間たちとともに……。




