第33話 就寝前の打ち合わせ まともなベッドで眠れるのは最後だからちゃんと眠れと言ったのに
ようやく夕食を御馳走になった後、
いや眠り組はさっき目を醒ませ喰いながらだが、
借りた家の居間でミーティング、ここから先は村も砦もまったく無い。
「なるほど、馬に加速魔法と回復魔法をかけ続ければ短縮できるのか、ハミィ」
「はいラスロ様、もちろん足場の悪い道では普段以上の速度に慣れず、馬が躓く可能性もありますが……」
「ラスロ様、この私ミオスが、いざとなったらとっておきの魔法を」「ほう、それはどんな」「まだ秘密です!」
こんなみんなの前でもったいぶらなくても、
いや何か特別な理由があるのかもしれない、
詠唱の制約的な……でも、ここに敵は居ないはず、みんな仲間だ。
(後でこっそり俺だけでも確認するかな)
想像は色々と出来るが。
「まあいい、予定より早く着けるならそれに超した事は無い、
では最初の比較的スムーズに走れる道で加速魔法を馬に憶えさせよう、
よってダンジュ含め運転手の隣には加速魔法が出来る者が交代で……」
ここで挙手するアリナ。
「私なら馬の強化魔法も掛けられるわ、悪路でも足が持つはずよ」
「そうか、なら」「それでしたらこのミオスめも」「じゃあ交代で」
「ではラスロ、組み合わせはどうする」「ヨラン、まあそのあたりは流れで、いざとなったら俺も運転するし」
その言葉に慌てる新旧ハーレム。
「ラスロ、それは駄目よ」「ラスロ様、でしたらこのミオスが運転します!」
「いやラスロ、私はそんなにヤワでは無い」「ラスロ様、私は若輩者ですが元騎士団員は全員、馬を操縦できます」
「私がちゃんとラスロの出番が無いくらい運転するわ、馬の扱いは任せて」「アサシンは当然、馬の操縦もこなせますが」
「いざとなったらこのネリィがティム魔法でぇ」「私は叔母さんよりもは運転できると思いますよ」「いやみんなそんな!!」
なぜそんな必死なんだ、
ダンジュくんが引いてるじゃないか。
「まあともかくだ、この村を中心とした地図からルートも選定できた、
後は今後、この先は集落も砦もキャンプ地も無い、唯一は廃坑だがそこもどうなっているかわからない、
少なくともまともにベッドで眠れるのは、行きはこれが最後だろうからみんな、しっかりゆっくり休んでくれ」
「「「「「「「「「はいっっっ!!!!!!!!!」」」」」」」」」
ダンジュくんも含め良い返事だ。
「では各自、解散!」
「それでは私はこれで」
「ダンジュくんは馬が泊めてある民家だよな、では明日」
こうしてそれぞれの部屋へ、
俺はひとり、二階の大きめのベッドがある所なのだが……
後ろを振り返る、うん、誰もついてきていないな、よしっ!
「ふう、では寝るか」
「待ってたわラスロ」
「お待ちしておりましたラスロ様」
なぜかアリナとミオスが、
先回りしていたあああああ?!?!
「お、お前たち、いつのまにどうやって?!」
「隣りの部屋から、窓伝いですぐですが何か」
「ふふ、秘密ですがラスロ様とふたりっきりになったら教えますね」
完全に添い寝モードじゃないか!!
「きちんとした場所で眠れるのは当分ないから、ちゃんと眠れと」
「ええ、ラスロがぐっすり安心して、落ち着いて寝られるように来ました!」
「私はラスロ様が眠っている所へ夜這いに来る不届きものが出ないように、と」「おま……」
まあ、ふたりで済んで良かった……のか?!
「では私はこちら側に、さあラスロ」
「ラスロ様っ、反対側はこのミオスのお任せを」
「だーーかーーらーーー!!」
ベッドに近づくと何となく、
言い表しようの無い違和感というか気配を直感した!
「いや、まさかな……って、居たあああああ!!!」
下に、ベッドと床の隙間にアサシンのナタリが!!
「……よく勘付かれましたね」
「いや、俺もなぜわかったかがわからない……っておい!」
「どうぞ、お気になさらず」「するよ! 気付いたらなおさらするよっ!!」
まさか、もうどこにも居ないよな?
と思って壁を調べると……穴が! そしてこの目は!!
「ネリィ、何を見てるんだよ」
「わわわ、よく目だけでわかりましたねぇ! ……ウレスィ」
「いや昔、十二年前さんざん覗きの常習犯やってたじゃないか!!」
というか、この穴は良いのか?!
元から空いていたとかいうのならまだしも、
この不自然な空き方は、どうやってもネリィが魔法か何かで……!!!
「皆さん、こいうしましょう」「どうしたアリナ」
「ラスロの左右上下で囲んで眠りましょう」「なるほど」「ふむ仕方ないな」「ネリィは構いませェン」
「お、ま、え、らああああぁぁぁ……とっとと出て行けえええええ!!!!!」
穴はちゃんと産めて寝た、
おかげで眠りに入るまで時間がかかったよ……
(だがなんとなく、新旧ハーレムが結束しはじめた気が)
あくまでも、俺に近づくためにという感じではあるが。




