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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第24話 そして俺が選んだ人選 話は魔界やら刺客やら

「ラスロ、やはり私を選んでくれたか」

「嬉しいですラスロ様、私とこのラスロ剣を選んでいただいて」

「何でもいいが他の人も居るから静かにな」


 夕食後、旧友オリヴィに悪いと思いながら、

 いや実際に謝ったが、結局は輸送馬車に俺と剣士ふたり、

 ヨランとロズリが乗る事になった、のは良いのだが……!!


(後ろにぴったり、馬車が付いてきてるううううう!!)


 俺が行くなら呑気に寝ていられないと、

 馬車の運転手をナタリに代えて(ダンジュは三列目で睡眠中)、

 結局、みんなついてきてしまった、まあ泊まらないといけない用事とか他に無いし。


「それでラスロ、一応は選んだ理由を」

「気になります、ラスロ様がこの私を欲した理由を」

「いや、単純に物理的な守りを考えただけだよ、その頼もしさっていうか」


 あとはやはり警備といえば騎士団だ、

 騎士団上がりのこの二人が居れば同乗者も安心するだろう。


「ではラスロ、手短に聞いて良いか」「おう、どうした」

「ラスロは魔界で、どうやって生き延びてきたのだ」

「やはりラスロ様の、魔界での食事や睡眠が気になりますわ」


 ……俺の言葉を左右から待つふたり。


「ええっと、その、なんだ、普通に魔物を倒して、普通に魔界の果実を食べて」

「ほう、そんなものがあるのか」「持って帰ったりは」「無い無い!」


 そんなもの地上で、こっちの世界で大繁殖したら大変な事になる。


(あと、微妙に隠したい話があるんだよな、俺が十二年間生き延びられた、最大の理由、原因、そして……援護)


 これはできれば、墓まで持って行きたい。


「肉はやはり魔物の」「そうだがあまり思い出したくない、それよりもだ」

「「はい」」「先の話をしよう、これからについての話、とはいっても三人で出来る話だと……」


 同乗者に聞かれるが、まあいいや、

 封印方法とか聞かれて特に困る話など無いし。


「わかった、私からで良いか」「頼んだヨラン」

「おそらく私とラスロとの結婚式を聞き、ジョルジール侯爵家から刺客が送られてくるだろう」

「えっ、そんな話?!」「先の話だからな、重要な話だ」


 ……ここで違うって言うのは簡単だが、

 内容が『刺客』などという物騒な話題なら聞かなくてはならない。


「それは、狙いは」「当然、私だ」「えっ、ジョルジール侯爵家ってヨランが嫁いだ」

「そうだ、そこから来るのは……」「いや、命を狙うなら俺では」「何の話だ、何の」

「……ラスロ様、ヨラン殿はおそらく『取り戻しに来る者』を『刺客』と呼んでいるのかと」「あっ」


 ロズリに言われてようやく気付いたや。


「ラスロ、おそらくモリス=ジョルジール侯爵は『命令』すれば戻ってくると思うだろう」

「ええっと、ヨランがそうやって躾けられていたって事?」「いや、私がそうしていたからだ」

「ヨラン殿、きちんと手切れは、正式に離縁はされたのですか?」「ラスロが生きていた、それだけで十分だろう」


 あーうん、わかってはいたが、

 おそらくヨランはまだ侯爵夫人だろう、

 それを言ったらアリナを除く他のふたりも……


「うーん、ヨラン、ひょっとして俺に会いに来るのが早かったかも」

「何を言う、ラスロが生きていたと知った瞬間に戻るべきだ、後の事は関係ない」

「いやいや、他所の男と結婚していたのだろう」「事実を知った時点で無効だ、私は精神を喪失していた」


 心身喪失とも言うな、

 それで周囲の言われるがままに……

 だからといって、それを選んだのはヨランでもある。


(俺のせい……なのか?!)


 いや、もうこういう状況になったら、

 デリケートに事を運ぶ必要があるのだが。


「ヨラン殿、勝手に自分の中で色々と決めてらっしゃるようですが」

「何だ、この際はっきり言っておくが私は先輩だぞ」

「騎士団のですか? 今ここでは」「待て待て! 喧嘩すると他の人達に迷惑がかかる」


 乗合なのを忘れてはいけない、

 本来の村へ帰る人、商人、そして警備兵。


「……おそらく最初に息子、若い三男か四男、その両方かを使わせてくるだろう」

「あーなるほど『お母さん帰ってきてー』的な」

「ヨラン殿、御子息に愛情は」「……正直、今となってはわからない、なぜなら今はラスロへの愛でいっぱいだからだ」


 うん、俺も魔界での十二年間、

 ハーレムのみんなへの愛情でいっぱいだった、

 だからこそ生きて戻ってこれた、とはいえ……


(寝取られたとなると、ねえ)


「じゃあヨラン、断るのか」「当然だ、すると次は長男次男、そして最終的には……」

「ヨラン殿、大切な事を忘れてらっしゃいますが」「何だ、言ってみろ」

「そもそもラスロ様が、ヨラン殿を受け入れるかどうかという事、そして今の婚約者は私だという事です」


 うん、そこだ、そこなんだよなあ。


(魔界ゲート封印までは、棚に上げておきたい!)


 しかし俺の目を真っ直ぐに見つめるヨラン。


「ラスロ」「……ああ、なんだ」「私は戻ってきた」「俺も、戻って来た」「なら話は……」


 ここで最前列の男性騎士団員が後ろを向く。


「消灯の時間だ、朝まで寝ろ、途中でトイレに起こして欲しい者は居るか」


 うん、容赦なく話をぶつ切りしてくれて、むしろ良かった。

 俺は声でヨランに話す。


「続きは朝だ、おやすみ」「ラスロ様、ヨラン殿、おやすみなさい……ラスロ様、肩をお借りしますね」

「くっ……ラスロ、私はラスロの剣だ、元の持ち主の所へ戻れて……喜んでいる、剣だ」


 こうして馬車の中は、

 静かになったのだった……のだが。

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