第23話 旧友との再会 そして依頼をどう受けるか
「うお、普通の村だなここ」
山を下った砦の手前、
魔物から逃げてきた人々が住む即席の村に到着した、
広い畑もあればちょっとした商店、そして酒場もある。
(いやこれ、騎士団員用も兼ねてるな)
早速、馬車を降りると一人のおじさん騎士団員が待っていた。
「ラスロ!」「おお、オリヴィじゃないか!」
十二年前の顔見知りだ。
「お前、生きていたのか!!」
「ああ、ずっと魔界で魔物を、魔王を倒していた」
「大変だっただろう、俺はずっとラスロの命日に、お前をと二人で酒を呑んでいたぞ!」
命日、おそらくは俺が魔界に落っこちた日のことだろう。
「オリヴィ様、お久しぶりですわ」
「おうおうアリナまで、戻って来たのか」
「はい、ラスロ様がお戻りになられた以上、当然」
ヨランはいきなり敬礼する。
「お久しぶりであります、オリヴィ殿」
「これまた懐かしい、ヨランはすっかり貴族の夫人が板についたと聞いていたぞ」
「そのような過去は捨てました、私はラスロの剣です!」
一方で『ラスロ剣』とやらを持っているロズリは深々と礼だけしている、
一応は顔見知りなのだろうか、まあ王城で会う事もあったのだろう、多分。
他のメンバーもひとしきり挨拶をしたのち、酒場へ案内されたのだが個室が用意されていた。
「さあラスロ、好きなだけ呑むがいい!」
「いや、気持ちはありがたいが、まだここに泊まるかどうか決めてない」
「なんだ、先の村まで丸一日かかるぞ?!」「そうなんだが、実は依頼が……」
ここでアリナが話してくれる。
「上の騎士団訓練場でお聞きしました、夜に物資を届けに行かれる部隊があって、
魔物が出るゆえに、できれば警備で一緒に行っていただけると、ありがたいと」
「警備といってもウチの騎士団だけで」「ただ、やはり魔物が徐々に強くなっているそうで」
いきなり酒をかっくらうオリヴィ。
「昼に、近くの魔物が一斉に逃げたと聞いたぞ」
「あっ、それでしたら心当たりがありますわ」
「やはりアリナのおかげか」「ええまあ、私だけではありませんが」
ミオスのアシストも、ばっちりだったな。
(あの結界の魔力補充、そんなに効果あったのか)
むしろパワーアップである。
「ラスロ、お前なら酔ってても倒せるだろう」
「いやそんな、運転手も休ませないといけないし」
「でしたら私が」「ヨランだって寝ないと」「朝に交代していただければ」
そう、運転手は騎士団員のダンジュひとりということではなく、
折りを見て、疲れたらヨランかロズリかナタリが交代する事になっていた、
今のところはダンジュがやる気満々で来たが、さすがに徹夜は可哀想だ、怖いし。
(居眠りされたら、たまったもんじゃない)
ちなみにダンジュは個室ではなくカウンターで食事している。
オリヴィは少し考えたのち、髭を撫でながら酒を置いて話す。
「ではこうしたらどうだ、輸送の馬車はあと三人乗れる、
そこにまず誰かが同席し、残りはここで一泊していくというのは」
「その手があったか、うーーーん」「ラスロはどうする?」「ラスロ様はどうなさいますか?」
アリナもミオスも俺と一緒に居たいっぽい。
「ええっと、じゃあ」
「やはりここはラスロの剣たる私が」「いえ、ラスロ剣を持つ私が」
「どうするの?」「ラスロを護る!」「ラスロ様と行動を供に致します」
そう言われてもなぁ。
続いてエミリとナタリも。
「私なら遠目も夜目も利くわ、ラスロが行くなら是非」
「……隠密行動のお伴なら、私の専門ですので、お任せ下さい」
最後にネリィとハミィも。
「ラスロサマァ、ネリィは、ネリィは夜の魔法も得意ですぅ」
「危なくなったらやはり範囲魔法が出来る、私がおすすめですよ!」
「いや二人は一緒だとまた喧嘩とかしそう」「ラスロサマしか見てませんよぉ」「我慢します」
そう、ここへ来る途中、
一度ネリィとハミィに俺の両隣に座って貰ったが、
程なくして喧嘩になったため最後列へと戻したのだった。
(ここまで『混ぜるな危険』だったとは……)
そんなことよりもだ。
「うーん、あくまでも先発隊だよな」
「そうだラスロ、そして俺は朝までお前と呑みたい」
「いや、朝までって!」「それこそ馬車で寝たら良いだろう」
……途中の魔物をどうするっていう。
「ラスロ、二日酔い浄化の魔法なら私、持っているわよ」
「私も熟睡できる魔法をラスロ様に」「うーーーーん……」
「そもそも『出来れば』って話だっただろう、積もる話もあるぞ」
オリヴィは俺と語り明かす気満々だ、
断って帰りにって選択も出来るのだが、
俺も再会をもっと喜びたい気もある……
(さて、どうするか)
俺とアリナとミオスで行けば、
途中で襲われても大丈夫……ってそれは誰でも一緒か、
あくまでも護衛って事を考えたら……うーーーん。
(ネリィとハミィは、さすがに他人が同席してれば喧嘩はしない、か?)
いや、俺しか見てないなら奪い合い再び、もあるか。
俺が行くか行かないかっていう問題も含めて、よくよく考えて……
「よし、じゃあここは……」
俺の下した、結論は!!




