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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第五章 新ハーレムと帰還 旧ハーレム、そして魔物ハーレムそれぞれの想いとは。

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第190話 迷う母親のために エミリの長女、ララルの想いとは

 アスト城の屋上、

 ドリアードが(まと)を掲げるそこへ、

 エミリの長女、ハーフエルフのララルが矢を放つ。


「風が読めてないわ」


 的から外れて飛んだのを、

 ドリアードが腕を、いや枝を伸ばしてキャッチする、

 再び構えるララル、それを空中で腕を組んで見守るカミラ。


「師匠、風の強弱が」

「矢の側面で、流れを捕らえるのよ」

「ミルンジャナイ、カンジルンダ」「はい、ドリアード師匠!」


 そっちもかよ!

 至って真面目な感じで矢を撃つララルちゃん、

 こっちもこっちでもう十二歳になったんだっけ。


「……ハーーッ!!」


 おっ、今度はど真ん中に命中した!


「ミゴトダ」「やるじゃないの」

「ありがとうございます、カミラ師匠、ドリアード師匠!」


 ……今、ドリアードが的を少しずらして、

 真ん中に命中させたような気がしないでもないが、

 ああやって良い感覚を持たせるのは悪い事じゃないのだろう。


「ラスロ、どうしたの、こんな所まで」

「いや、一通り皆の様子を見ようと思ってだな」

「この人間、素質はまあまあよ」「キソガシッカリシテイル」「そうか」


 確かエルフと人間が一緒に暮らす森で、

 エミリと一緒にずっと弓矢の鍛錬をしていたんだっけ、

 とはいえこの風が強い屋上で、よくやれたもんだ、流れ矢とか大丈夫なのか。


(まあカミラが飛んで回収するか)


 あと下にもドリアードは居るだろうから、

 気付いて受け止めるだろう、奴らなら多少刺さっても問題ない。


「イマ、ヒドイコトヲカンガエナカッタカ」

「わかるのか」「ナントナクナ」「ラスロ、目線と表情でわかるわ」

「そ、そうか」「最初、私をいやらしい目で見ていたのも」「おい」「冗談よ」


 十二歳の前でなんてことを。


「あの、ラスロさん、お邪魔しております」

「お、おう、ララルちゃん、なんでまたカミラの弟子に」

「遠距離攻撃が得意と聞いて」「まあな、極端に言えば本人が遠距離攻撃だ」


 いやほんと、

 捨て身で回転しながら敵に突っ込んだときは、

 いかにアンデッドといえど冷や冷やしたものだ。


「今度、こちらでも王城で弓矢の大会があって」

「それに備えてか」「母も久々に出場するそうです」

「そういえば、そんなこと言っていたな」「なので母に勝ちたくて」


 よく見ると十二歳にしてはスタイル良い、

 というか母親に似て美人になるなコレ、いやもう十分に美少女だ。


「ラスロ」「いやカミラ、ええっとララルちゃん」「はい」

「勝ったらどうするの、勝負して勝ったらエミリを連れて帰りたいの?」

「一度勝っただけでそれは無理でしょう、そうでなくって」「えっ、目的は?!」


 息を呑んで、

 落ち着いてから俺の目を見た。


「ラスロさんの、パーティーに入れて下さい!」

「えっ、俺の?!」「はい、勇者パーティーの一員に」

「エミリが居るのに、入れ替わりで?!」「いえ、出来れば一緒に」「あっ」


 そういうことか。


「もちろん力になります、なれます」

「……本当にお母さんが好きなんだね」

「その想いは、あまり伝わってないみたいです」


 まあ、俺が生きてたってなったとたん、

 手紙ひとつで捨てようとしてたくらいだからな、

 俺は悪くないよな? 多分、まあ遠因はあると言えなくもないが。


「カミラ、モノになるか」

「これからだけど、一息ついた今なら居ても良いんじゃないかしら?」

「経験を積ませるためにか」「今度の再封印は安全なんでしょう?」「多分な」


 少なくともこちら側には、

 もう敵の魔物は居ないはずだ。


(もちろん魔物じゃない危険な野生動物は居るが)


 そういう意味では、

 練習にはうってつけか。


「エミリは何と」

「相談していません」

「そうか」「弓矢の練習を、個人でしているとだけ」


 これでいざ大会となって、

 ララルちゃんが勝ったらびっくりするだろうな。


(そうなると、認めざるを得なくなるか)


 つまりララルちゃんの狙い、

 想い、そして願いはそんな所か。


「わかった、カミラはいいのか」

「ラスロが良いならね」「いや練習に付き合ってくれて」

「それね、ラスロが感謝してくれるなら」「感謝する、ありがとう」「ドウイタシマシテ」


 お前もかよ、ってドリアードに言いそうになったが、

 まあお前もだよな、という想いを込めて頭を下げておこう。


「よし、じゃあアストの所へ戻る」


 そうして戻った所へ、

 意外な人物が意外な報告をして来たのであった。

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