第188話 アスト城の地下 そこに住むナルガが待ち望む、秘密の部屋とは
「邪魔するぜい」
「あらラスロ、ついにアタシと子作りに」「まだ早いかな」
「身重でも戦えるさね」「そんな無理はさせられねえ」「ラスロが思っている以上に丈夫だよ」
散歩がてらやってきたアスト城の地下、
薄暗い中、一応は外と繋がっている洞窟から日の光は差し込んでいるが、
じめじめした中でラミアのナルガが全身うねうねしながら、くつろいでいた。
「朝食は今日はどうだった」
「巨大なサラマンダーさね、庭に焼いた匂いが残ってるわさ」
「城の兵士も持って来るの大変そうだな」「こっちに再び来てからはドリアードさね」
ナルガの視界は部屋の隅へ、
おっ、こっちにもメイドのドリアードが二体、
ちゃんと付いているんだ、ということは他の部屋も……
「ドリアード、大変だな」
「アストサマノ、タメダ」
「ソレニ、ナルガモ、エントヲタクサン、タオシテクレタ」「あれな」
両手それぞれの剣と尻尾で斬り裂き、
それでも向かってくる体当たりエントを噛み砕いていた、
魔界で荒ぶるナルガは、変な言い方になるが、荒々しいのに格好良くも美しかった。
(そしてお胸が揺れる揺れる)
いや実際、胸で弾かれていたエントも居たな、
今はちゃんと髪の毛で隠している、基本、常時は……
朝の王都内散歩を見かけた子供の男の子が、母親に手で目隠しされたりしていたらしいが。
(怖がるからね、ということにしておこう)
さあ、それはそうとして。
「ナルガ、ここは快適か? 困ったことは無いか」
「そうさね、早くあっちの、秘密の部屋を使いたいさね」
「えっ、どこだ?」「こっちさね」「……おお、こっちに洞窟が」
トリックアートみたいで気が付かなかったが、
確かに壁に洞窟があった、角度的にわかり難い、
外とは別で内側へ……ナルガに捕まって(確保されて)奥へ入る。
「……暖かいな、ふかふかの巨大ベッド、寝室か」
「こっちの寝室は、卵を温める用さね」「つまりは」
「ラスロとの子作り部屋さ」「わざわざ用意を」「大森林の方もあるわさ」
あっちにもあるのか、
ということは魔界の拠点、
あそこの地下にも……本当に孕む気満々だな。
「済まない、もう少し待ってくれ」
「待ち望んで、もう随分経つわねえ」
「もう少し、俺の心の準備も」「人間は面倒だねえ」
いや、俺個人のせいだ。
「退屈とかは、してないか」
「ラスロが居れば平気さね、ラスロの居ない生活はもう考えられないねえ」
「そ、そうか」「こうしてちゃんと、きちんと会いに来てくれるなら、もちろん出来れば魔界が良いさね」
そういえば久々の魔界で、
他のラミアも居て喜んでたな、
やっぱり同じ種族も恋しいのだろうか。
「今度の再封印が終わったら落ち着く、その時にまた」
「その時はもう本格的に子作りさね」「ま、まあ、そうなるのか」
「ラスロは実は、無理矢理されるのもそこまで嫌では無いさね?」「いや無理矢理って」
またアバラが何本か折れるな。
「さすがに一方的なのは、ちょっと」
「合意の上でさね」「合意だと無理矢理じゃないんじゃ」
「……人間の言葉は難しいさねえ」「いや、そういう問題では」
合意の上での逆レ●プとか何だそれっていう。
「さあ、下見はもういいかい?」
「あっおう、ありがとう、見学させて貰った」
「人間用のトイレも作った方が良いさね?」「ま、まあな」
下見だったのか……
元の居間に揺れられて戻ると、
外への出口洞窟をじーっと見るナルガ。
「騒がしいさね」「えっ、何が、どこが」
「外さね」「えっ、庭が? アスト城の??」
「行ってみるさね」「ってそのまま連行するのかよ」
外へ出ると、
そこに居たのは……!!
「ファイアー!」
「ふふ、まだまだ荒いわね」
「ファイアー、ファイアー……ファイアー!」
旧ハーレム魔法使いネリィの長女、
アインちゃんだっけ、半年前、魔界再突入直前、
一緒に行きたいとか言っていた……が、サキュバスのリムリアから指導を受けている。
(ちなみにリムリアは人間サイズのサキュバス姿です)
そして素手でアインのファイアーを受け止めている、強え。
「あらラスロ」「おうリムリア、どうだ」
「弱いわね、魔力が弱すぎて話にならないわ」
ネリィも言っていたな、
魔力がモノになるのは唯一、末っ子だけだって。
「私、もっともっと魔力を、上げたいです!」
「リムリア、こう言っているが、どうする?」
「ふふっ、ひとつだけ方法があるわ」「教えて下さいっ!」
杖をぎゅっと握って必死なアイン。
「それは……」「それは!」「リムリア、それは?」
妖しい笑みを浮かべるリムリア。
「これから毎晩、私と一緒に寝るコトよ」
な、なっ、なんだってーーーーー?!?!?!
(こういうネトラレもあるのか、いや違う)
変なことは、
しない……よな?!
「ふふ、ラスロも一緒に」「誘うな」




