第20話 聖者と賢者の魔力比べ その結果は単純なものでは無かった!
「ここがその祠となります」
「ありがとう、この結界はやはり」
「はい、聖女ハンナ様によるものです」
案内してくれたのは騎士団部隊長さん、
ヨランの昔馴染みの部下だったらしく、
そのうえロズリとも面識があるらしい。
(そしてやってきたのはミニ教会みたいな場所だ)
ルート確認と今後の打ち合わせをしている時、
途中の村の結界補強をって話になってこの山、
砦と砦の間の結界はどうなっているのか尋ねて連れられたのがここだ。
「まあ、素晴らしい結界ですわね」
「この術式、なかなか複雑ですがオリジナルでしょうか」
浮かび上がっている魔方陣、
アリナとミオスも興味津々だ、
俺は部隊長さんと話を続ける。
「これ、魔力の補充は」
「一応、このままでも五年は持つそうです」
「じゃあそれまでに」「光属性魔法が強い方ならどなたでも出来るようではありますが」
だがそんな聖女様はなかなかいないって事か。
「……分析は終わりました」
「あの、私の方で魔力の補充を」
「出来るの?!」「「はいっ」」
二人して息ぴったりだな。
「部隊長さん」
「構いませんが、その、壊さないようにお願いします」
「だそうだアリナ、ミオス」
まずはアリナが魔方陣に杖をかざす。
「……」
念じると杖が光り始めた!
「まさか、これは」
「はい、無詠唱ですね」
と俺が部隊長さんに説明する、
そして魔方陣に杖の光を注いでいく、
うん、明るさといい白さといい、完璧に増幅された!
(……おそらく、これを一番最初に造った時の状態に……!!)
「……ふう、終わりました」
完璧だね、
これならハンナさんもにっこりだろう。
「次は私の番ですね」
「ミオス、これはもう」
「壊さないので安心して下さい」
今度はミオスが両手を魔方陣にかざす、
杖無しだが目を閉じて……呟きはじめた。
「万物の光よ、我の魂に触れ言霊となり……」
みるみるうちに両手に光が集まってくる!
そして、これは……まっ、眩しいっ、凄い光だ!
感じる、この光魔法は、強さだけではなく、質が凄く良い!
(透明感を感じる光だ!!)
そして結界の模様が更に複雑化していく、
これは変化させるというより上書き、いや、
ヴァージョンアップさせているようだ、より強固に繊細に……!!
「……神から遣われし光よ、その力を結びたまえ……ホーリークロス!!」
うわ、魔方陣が球体化した?!
「ラスロ様、完成しました!!」
「う、うん、これは凄いね、びっくりした」
「私の光魔法、認めていただきましたか?!」
そこへ口を挟むアリナ。
「ミオスさん、その結界陣はハンナ様や私の魔力を利用した物ですよね?」
「はい、そうですが、何か問題でも?!」
「人の物を少しグレードアップしただけで自分の手柄のように」「アリナ様も同じでは?!」
あー、また仲が悪くなってきた。
「えっと、目的は途中の村の結界強化だ、
あくまでその確認だ、どっちがどうとか今は良い」
「ではラスロ、私の魔力は」「認めるよ、ミオスもね」
……まあ、貼り合ってお互いが高めあってくれれば、それで良い。
「では魔力比べはラスロ様、このミオスが勝ちということで!」
「いや、勝ち負けで言ったらこれの最初を造ったハンナさんだよ」
「じゃあラスロ、私が最初から造ってみせましょうか」「いやアリナ、そういうことじゃ」
ミオスはネリィと話を。
「このレベルなら私達でも」
「そうですね、良い物を造って、私達だけで十分という事を証明いたしましょう」
「あーもう、どっちみち魔界封印はみんなで協力して貰うからな、リーダー命令だ!」
(まったくもう……どっちが上とか、そんな単純な話では無いのに)
「ラスロの、リーダーの命令なら仕方ないわ」
「はいラスロ様、妻としてこのミオス、生涯従いますね」
「ええっと部隊長さん、ありがとうございました」「いっ、いえいえ」
こうしてとりあえず、
俺のこじ開けてきた魔界の出入り口封印は、
なんとかなりそうな気配がしてきた、のだが……
(新旧ハーレムの行く末が、見えない……)
とりあえず、
もうちょっと何とか仲良くさせる方法を考えなければ、
だがいったい、どうやって……?!
「まあ良い、では打ち合わせの続きをして、馬車に乗って出発だ」
「「「「「「「「はいっっっっ!!!!」」」」」」」」
まあ、行きすがら、もう少し考えてみるかぁ。




