第186話 アスト城にて 全てバレていた原因は身内だった
「おうドリアード、おはよう」
「オーウ、アストサマガマッテイルゾ」
アスト城のあっちこっちに居るドリアード、
俺が、いや俺たちが半年前に魔界へ行く前より多い、
こんなに居て何の仕事があるんだ、もちろん感謝の気持ちなのだろうが。
(あんまり多いと、王都の民が怖がる)
いまだにすれ違うと泣く子供とか居るし、
城の衛兵はさすがに慣れたようで互いに挨拶しあってた、
今後どうなるんだろうな、あくまでアストについてきているんだし……
「……アスト、入るぞ」「ええ、どうぞ」
巨大な居間に入ると、
魔物ハーレム四体がすっかりくつろいでいる、
なぜかドリアードがメイドの格好までしているし。
「朝食済ませたから来たぞ、それでどの話からしようか」
「ラスト達が企んでいる、悪い話からどうかしら?」「いやアスト」
「酷いさね、二か所の封印に分かれさせて、魔界へ追い出そうなんてさ」「ナルガなぜ知っている」
やっべ白状しちまった、
とはいえ完全にバレていやがる。
「ふふ、人間の考える事は、面白いわねえ」
「本気じゃないわよね? もし本気だったら血以外を全部吸い尽くすわよ?」
「いやリムリア、カミラ、あくまでもそういうパターンもありえるかも、という仮定の話だ」
うーーーん、
これはアリナ達でも察知できないような、
魔法かそれとも体内に種でも入れられているのか……
「ラスロ、不思議そうな顔しているわね」
「……そうだって言ったらアスト、答えを教えてくれるか?」
「無料じゃ面白くないわね、じゃあキスでもして貰おうかしら」「頬で良いな」
と言っても、
よじ登らないといけない。
「ふふ、じゃあ私は、私がしたい場所にキスを」
「やめてくれリムリア、絶対ろくな場所じゃない」「あらばれた?」
「というかそれはキスとは言わない……アストいいな」「ええ、さあどうぞ」
頬にキス、っと。
「これで良いか?」
「今回はね、答えだけど、ドリアードから聞いたのよ」
「えっ、昨夜、紛れ込んでいたのか?! まさか柱に化けてたとか」
だったら魔力探知でアリナにバレるはずだが。
「ドリアードが聞いたのは今朝よ」「えっ?!」
「こちらの朝食、ネリィとハミィをよこしたでしょう?
「ああ、昨夜の罰に、子供達の朝食の面倒を見てこいと」「そこで普通に会話してたわ」
あ・い・つ・らーーー!!
「そんな大事な話を」
「あれってドリアードに気付かなかったのかしら?」
「もはや空気のように溶け込んでいたのだろう、というかネリィもハミィも間抜けすぎる」
ドリアードも不気味に笑っているし、メイド姿で。
「アインタチ、コドモタチニモ、ハナシテイタゾ」
「情報ダダ漏れだな」人間って、いつもああなの?」
「一緒にしないでくれ……まあいいや、一方的に裏切るようなことはしないから、安心してくれ」
身内がコレじゃあ、
何か作戦考えても駄目そうだ。
「さあ、ではラスロが出て行った方の封印についてよね?」
「ああ、あそこなんだが、カミラが作ってくれたのを俺がこじ開けたんだが……」
「確かにゲートをそのままにしておくと不味いわね」「カミラ的にもか」「私の魔力を使っているもの」「それならばだな……」
とまあ色々と魔物ハーレムと話をした結果、
とりあえずは両方とも完全に閉じる方向では行くものの、
魔界とこっちを本当の意味で分断するには、やはりアスト達みんなが魔界へ帰らないといけないらしい。
「ということでラスロ、連れて行きたい人間だけ連れてこっちへ、魔界で暮らしましょう」
「そうさね、人間の世界が平和になるためには、それが一番さね」「でもそうすると俺が……」
「ふふ、今度こそラストが伝説になっちゃうわね」「いいじゃないの、最終的には私のものになるのだし」
死体をカミラにくれてやるのはどうでも良いが、
やはり俺は普通に人間界で暮らしたい、だが……
魔物ハーレムに、まったく情が湧いていない訳でもない。
「うーん、アスト」「なあに?」「色々とありがとう」「婚姻を詰めましょう」
「ナルガ」「なにさね」「本当にありがとう」「子供をさっさと作るさね、ラスロとの」
「そしてリムリア」「きちんと身体で返して貰うわよ」「殺さないでくれ」「できれば、ね」
「最後にカミラ」「死んでから貰うのは確定だけれど、生きている間も、もっと思い出を作りましょう」「……ありがとう」
魔物ハーレムにも、
きちんとお礼の気持ちは、ある。
「ラスロ、アストサマト、キチント、シキヲアゲロ」
「そうだな、俺が出てきた方のゲート、再封印が終わったら、
いっそ、ラグラジュ大森林で、式でも挙げるか」「嬉しい」「良いさね」「ふふ、楽しみ」「面白そうね」
魔物との結婚式、
まあ、これくらいのお礼は、してしまおう。
(実際どうするか、どうなるかは、置いておいて……)




