第184話【カミラ回想?】生きた者は渡れない死の沼地、そこを救った魔物ハーレム最後の一員が
「うっわ、これ匂いを嗅いだだけで死にそうだ」
「ラスロ、実際これは毒よ」「アタシも長くは持たないさね」
「ふふ、物凄い上空を飛べば」「リムリア、それだと意味が無い」
魔界にある通称『死の沼地』この奥にはアンデッド王、
フォーエバーリッチが住んでおり、徐々に沼の範囲を広げていて、
このままでは魔界を征服しかねないらしい、ゆくゆくは人間界まで……
(かといって、そいつが人間界に打って出るのを待つ訳にはいかない)
する気は無いが戻るために、
そいつの配下になったとしても、
骨だけの魔物に成り果てていたらアリナ達が泣く。
「困ったな、渡れないか」
「ラスロ、本当ならすでに死んでるわ、私の魔力で護っているだけよ」
「これだと下も潜れないさね」「困ったわ、アンデッドは夢を見ないもの」
おそらく残りの魔王は僅か、
全てを倒せば『空気が明らかに変わる』らしく、
そうなったら元の世界へ帰れやすくなるそうなのだが。
(一番最後に先延ばしするべきか、だがそれだともっと強くなる、うーむ)
腕を組んで考えていると、
遠くから何体か魔物が飛んできた、
サキュバスにしては身体が小さい、人間サイズだ。
(そもそもサキュバスが、あそこから来るはずが)
そう思いながらも構えていると、
色白の女性を先頭にやってきたのは、
アンデッドにしては肉体のある人型の魔物だ。
「おっと剣を下ろして、戦うつもりは無いわ」
先頭は貴族のお嬢様のような、
この紅い目、白い肌は確か……思い出した、
そう確か、ヴァンパイア族だ、人間の血を吸い尽くして動く人形にするという。
「俺の名はラスロ、魔王を倒して回っている」
「本当?! 丁度良かったわ、私達もリッチの軍勢に困っているのよ」
「君は」「ヴァンパイアのカミラよ」「カミラ様は高貴なお方だ」「姫にその命、献上せよ」
両脇に居る男のヴァンパイアが偉そうに……
ヴァンパイアの姫ってアストと同じようなものか、
アストもアストでアルラウネ族のお姫様だったからね。
「いや、俺は俺の世界へ戻らないといけない」
「人間の世界に? 今は悪手ね、魔力のバランスが悪すぎるわ」
「ならどうすれば」「敵を、魔王のリッチを倒してくれれば……私が開けられるかも知れないわ」
開けられる、ということは!
「魔界から人間への入口をか」
「相当なリスクがあるけれどもね、
でもあのリッチを倒すために、その引き換えなら仕方がないわ」
まさか、まさかの展開だ!!
「よしわかった、リッチを倒してやる、俺はどうすれば良い」
「そのままじゃ無理ね、セヴァス」「ははっ、お嬢様、こちらを」
背後に居た執事風のヴァンパイア、なまず髭。
「これは生きている者を仮死にする薬よ、
これならこの『死の沼地』でも死なないわ」
「人間には、元には」「戻れるわ一回だけならね、でも一回で十分よ、人間以外は」
じゃあ俺は無理なのか。
アストが前に出て訊ねた。
「戻れる一回って、少しの間? それとも」
「魔物なら別の回復薬で戻れるわ、アルラウネでも大丈夫よ、きちんと元に」
「なら俺はどうなるんだ」「人間はね、薬が強すぎるから、少しずつ血を吸わせて」
俺は思わず数歩下がる。
「眷属にする気か」
「したい気持ちはいっぱいあるけど、
指先から少しずつよ、何なら血液以外を吸う方法もあるわ」「……その話は無しで」
嫌な予感がする。
「最終的に眷属になって欲しいけど、その話はリッチを倒す時に、
とりあえずは私の城へ招待するから薬を飲んでくれるかしら、一気にね」
「どうするアスト、ナルガ、リムリア」「他に選択肢が」「大丈夫そうさね」「嘘はついてないみたい」
ならば、
行くしかないか。
「わかった、みんな飲もう」
「そうしたらサキュバス以は私達が運んであげるわ」
「アタシはどうするさね」「……出なさい!」「うおっ、沼から骨の魔物が!」
スケルトンドラゴンか。
「アルラウネとラミアはこの子達が運ぶわ」
「俺は」「私が抱いて運んであげるわ、どう?」
「……まあ、男のヴァンパイアよりもは」「決定ね、これから先、よろしくね」
こうして俺たちは一時的に仮死状態となり、
死の沼地を通り抜け、魔王を倒すことになったのだが……
=============================================
「という訳だ」
「結局、ラスロが回想してくれたのね」
「カミラすまん」
その方が、わかりやすい。




