第166話 そして到着 復興中のマベルス修道院でアリナと再会。
「ツイタゾ、オキロ」
「……もうそんな時間か」
目を醒ますと、
視界の前でアストの種(芽)が飛び跳ねている。
「おはよう、アスト」
前方の窓から見ると……
おお、ドリアード達が立ち尽くしている、
その前には聖騎士団かな、魔物は入れないぞって感じ。
(ていうか外は寒そうだな)
前に来た時よりも……一応、聞くか。
「ドリアード、外は寒いか」
「ニンゲンニハナ」「お前たちは」
「ドウッテコトナイ」「なら良いんだが」
とはいえ立っているドリアード達、
霜が降りているんだが、ってあれ動けるのか?
防寒しっかりした服を着込む、アストの種は俺の肩へ。
「寒いらしいぞ、俺の懐に入るか」
芽を左右には振る、そして頭上へ。
「わかった、毛糸の帽子は被るぞ」
降りるとエミリ達、
六人みんなすでに出ていた。
「どうだエミリ」
「にらみ合いですね」
「ドリアード達ご苦労、アリナは」「ズットカンビョウシテルナ」
行くか。
俺は七人で行こうとするが……
「待て、来て良いのは人間ふたりだけだ」
「だそうだ、ここは……」「私が」「私がァ」「私でしょうか」
「ここは剣で護れる私が」「アサシンの私が適任かと」「私を使ってくださぁい」
六人全員行きたがっているな。
「よし、じゃあドリアードがお化粧して美女に成り済まして」「ボケルナ」
「いや寒そうだったから暖めようと」「ヨケイニヒエル」「ということでミオス」
「はい、お伴致します」「宗教的には大丈夫か」「問題があるなら、あちら側でしょう」
聖騎士団員の中年女性に案内され進む、
うん、確かに災害後の復興中って感じだな、
前に見た時と比べて派手に壊されている、アリナを怒らせるからだ。
(ああいうタイプは、本気で怒ると手がつけられない)
とはいえ俺のためだったんだよな、
何度も何度も念入りにチェックされる、
剣も杖も置いてきたから大丈夫なはずだが。
(そして修道院の、おそらく最奥へ……)
やわらかな光魔石が照らす中、
どれだけの寄付金で造られたんだという豪華ベッド、
そこで寝かされている老女、いやこれもう息も絶え絶えだ。
(その横に居るのはアリナ、とそれを護るヨランだ)
もう随分と治療をさせ続けているのだろう、
疲れ切っている、いや交代とかいないのかっていう。
「ラスロ」「ラスロ、来てくれたか」
「ああアリナ、ヨラン」「とりあえず私が交代しますね」
「ミオス頼んだ、それで容態は」「時間の問題ですね、しかし治せと」
さすがにもう、
寿命なのは明らかだ。
「死なせたらどうまると」
「私が大聖女様の後継になるらしいです」
「拒否権は」「その時は、教徒全員を殺して行けと」
さすがにそれはなあ、
教徒は世界中に居る訳だし、
面倒過ぎる事になる、いっそ魔界に逃げるか。
(いや、それだとおそらく陛下に迷惑がかかる)
それこそ宗教戦争だ。
「うううぅぅぅ……」
「大聖女様?!」「いたぃ……アリナ、やはり、ぁなたの……」
「私ももう、眠っていなくて限界です」「ぃや……しにたく……な……ぃ」
死んで天界でどうこうとか、
転生してどうこうとか教える大聖女が、
いざ自分が死ぬとなったらこうですかそうですか。
「……アリナ、この大聖女様に罪はあると思うか?」
「罪、ですか」「ああ、罰を受けるべき存在かどうか」
「それは……私が決める事ではありませんが、対私、ということで言えば、それで良いかと」
と、なると……
やっぱりアレを使うしかないか。
「大聖女様に、もう一生、このベッドから動けなくなっても生きたいか聞いてくれ」「はい」
アリナが耳元で問いかける、
すると今度はアリナが耳を大聖女の口へ近づけ、
かすれ声の何かを聞く……うんうんと頷いたアリナ。
「痛みが、息苦しさが、無くなるなら良いそうです」
「そうかわかった、ミオス、そこのお水を」「はいっ」
そして俺が取り出したのは……黄金の種だ。
(あっ、頭に被った俺の帽子、その隙間から、アストの種が覗き込んでいるな)
アリナに黄金の種を渡す。
「これを飲ませれば苦痛は無くなる、死ななくなる、だが……」
「……想像はつきました、大聖女様、よろしいですね?」「は……や……く……」
口の中へ含ませると、
ミオスがアシストして水を注ぐ、
そして黄金の種を呑み込んだ大聖女様。
(これで……しばらくすれば、この大聖女は……)
直後、ベッドの下へと倒れたアリナ!
「おいアリナ、大丈夫か? アリナ、アリナ!!!」
それを覗き込んだヨランが言う。
「……大丈夫だ、疲れて眠っただけだ」
良かった……と安堵する俺であった。




