第160話 再封印はほぼ完璧 ただし見張りと微調整が必要らしい
「……できたわ」「ふふっ、完璧ね」
アストとリムリアがご満悦の結界魔法、
ダンジョンの入口を、いや上からダンジョン自体を包み込む、
まるでドーム状の結界だ、その表面には魔物の文字が流れ続けている。
(やっぱすげえな、このふたりの合体魔法)
旧ハレームのアリナがネリィと、
新ハーレムのミオスがハミィと、
つまり光魔法が闇魔法とミックスさせたことで、封印魔法の効果は増大した。
(更にその二組が合わさったのが、前回までの封印だ)
だが今回、ここの封印では、
更にアストの光魔法とリムリアの闇魔法、
それが合わさって恐ろしい威力になっている。
「ミオス、どうだ」
「……たしかにこれは半年近くは持ちそうです、が」
「どうした」「魔物魔法の力が強すぎます、バランスが悪いので見張りを続け、場合によっては微調整を」
そうなるとやはり、
改めてアリナの力が必要になるな。
「もう何よ、足りない魔力を補ってあげたのに」
「リムリアすまない、別にリムリアが悪い訳じゃない」
「そうですねぇ、ただ闇魔法のバランスが少し強いだけでぇ、誰のせいとかではぁ」
ハミィもフォローするが、
やはりここにアリナの力は必要だった訳で、
もちろんリムリアが補ってくれたのは大感謝なのだが。
「それはそうとリムリア、作戦とか言っていたのは」
「単純な話よ、蠅の魔王をこのダンジョンに追い詰めただけ」
「えええ、じゃあ人間界を征服しに来たというよりは」「逃げて来た感じね」
その割には、
通路をきっちり改造されていたようだが……
おそらくそれを上手く、作戦に利用したのだろう。
「じゃあ押し込めてたと」「新魔王が籠城していた状態ね」
「で、俺たちが封印を解いた所で」「一斉にそちら、人間界へ」
「それを俺たちが」「足止めしてくれて助かるわ、こっちだと魔王の力も弱まるみたい」
で、俺らが闘っていた間に、
サキュバス・インキュバス達が一気に来て、
取り囲んでトドメを……元からそういう作戦だったのか。
「アスト、ナルガ」
「こっちにも、こっちの作戦があるのよ」
「倒したからいいじゃないさね、ラスロのおかげさ」
ということで移動屋敷が設置された、
封印も大丈夫そうだし、もう戻るのか。
「ラスロ、さあ行きましょう、ふふ、私と一緒に」
「リムリア……あ、ちょっと待ってくれ、ひとこと」
と、新入りドリアードの群れへ行く。
「ナンダ、ドウシタ」
「魔界から来てくれたドリアードだな、ありがとう、しばらくは大丈夫なのだが……」
「モウイレカワッテイルゾ」「オレタチハ、ダンジョンイノコリグミダ」「シンイリハ、カツイデイルゾ」
早いな入れ替わり!
知らない内にシャッフルされているのかよ、
区別つかないから、わからねえよまったくもう。
「さあラスロ」「おうアスト」
新入りドリアード達が混じってかつぐ移動屋敷、
例によって天窓へ収納される俺、残りは下から、
そしてリムリアも飛んで天窓から入る、全員入ったかな。
(おっ、動き始めた)
ということで、
水路を移動して戻る俺たち、
アストの間には俺と魔物が三体。
「少し懐かしいなあ、おい」
「これでカミラが居れば完璧ね」
「カミラで勢ぞろいさね」「まだ寝てるわ」「す、すまん」
というか魔物ハーレムが勢ぞろいすると、
あの十二年間、魔界に閉じ込められていた生活を思い出す、
もう俺は逃げてきた、人間界へ脱出してこれたはずなのに……
(やはりそう、都合良くはいかないか)
アストとの婚姻の詰め、
ナルガとの子を孕ませる契約、
リムリアとの借りを返す義務……
(そして、カミラとの……約束)
それを全て断ち切るには、
それこそミオスの提案した、
俺の魔物ハーレム全員始末、が必要になるのかも知れない、が。
「それでこれから、エルフの国だったわね」
「ああアスト、五十本近いマザーツリーを修復して欲しいらしい」
「これは、でっかいでっかい貸しになるさね」「まーたラスロ、借りばっかり作っているのね」
……駄目だ、
その貸し借りを全部無しにするために、
このアスト達を倒す事なんて、俺には出来ない!
(そもそも魔界での、数少ない味方、恩人いや仲魔だぞ)
かといって、
この魔物ハーレムの希望を全部応えるとなると、
おそらく俺は、今度こそ、もう魔界からは二度と……
「とにかく改めて、アスト、ナルガ、リムリア……ありがとう」
ここは、今はとりあえず、
頭を下げるしか、ないか。




