第159話 リムリア登場 魔王を倒したは良いが、それだけで終わるはずもなく
「みんなありがとう、魔王は倒せたわ!!」
ラグラジュ大森林に響くリムリアの声、
魔王軍残りの虫や怪我人いや怪我サキュバス、インキュバス、
ドリアードの治療が終わって落ち着いてからの空高く舞い上がり拡声魔法だ。
「ただ、淫魔族長の命令で人間界への立ち位置は禁止、
今回はそれより優先される新魔王討伐が優先されたけれども、
倒した以上はここに居てはいけないの、全員、速やかに戻ってちょうだい!!」
出た、『淫魔族長』というパワーワード。
(単なるもっこり爺さんだけどな!!)
名前はもう忘れた、
やたら長かったし。
「ラスロ!」「ラスロお前、飛んでたな」
魔界でリムリア程じゃないが世話になった、
サキュバスのルヴィアとインキュバスのマティだ。
「飛ばされてただけだ! ありがとうよ」
「じゃあリムリアをよろしくね、いつでもウチに来て」
「気を付けろよ、ラストの一回は殺す気でやるのがサキュバスだ!」
と言葉を残し、
ダンジョンの方へと……
もう空は薄明りだ、みんな続々と帰っていく。
(あっそうだ!)
俺もそっちの方へ、
居た居た、ドリアード達。
「お前たち、いままでありがとう、別れが惜しいよ」
「オレハマダダ、ジョウホウコウカン、シテイルダケダ」
「カエルノハオレト、コイツトコイツトコイツト」「みんな元気でな!」「タンナルコウタイダ、タブンマタクル」
とはいえ、行く量が多いな、
まあいつのまにか増えてたっていうのもあるが。
「こんなに帰るのか」
「エントゾクトノ、センソウガハジマリソウダ」
「そっちもそっちで大変なのか」「ラスロガチカラニナッテクレルナラ、ナイテヨロコンデヤル」
そうは言ってもなあ。
「すまない、こっちもこっちでまだ、やる事が」
「ソウカ」「ザンネンダ」「ラスロガクルナラ、アストサマモクルノニ」
「それが目当てかよ!」「ジャアナ」「チナミニシンイリハ、アッチダ」「ジャアナ」
去って行く十数体のドリアード達、
対して新しくやってきたらしいのは七体か。
(ちなみにエント族は、人のような顔が、でかい)
普通の樹の中央上部に顔があるドリアード族と違い。
エント族は樹の幹というか木全体の前面に、でかい顔がある。
なんて思っていると最後っぽい淫魔隊を送り帰したリムリアがやってきた。
(うん、相変わらずアストやナルガ並に、でかい)
すなわち、巨女である。
「ふふ、ラスロ、現実で実際に会えてうれしいでしょう」
「ありがとう、感謝するよ、淫魔をたくさん連れて来てくれて」
「もう帰ったわ、私は残るけど」「えっ、淫魔族長の命令で」「私は個別命令で、ラスロから貸しの回収よ」
やっぱ、そうなっちゃうかぁ。
「ラスロ!」「ラスロサマァ」「おおエミリ、ネリィ」
「ラスロ様」「この方は」「粗方の敵は片付きました」「谷間が凄いですねぇ」
「ミオスもロズリもナタリもハミィもありがとう、ってハミィは余計な事を」「いいのよ」
そう言ったリムリアは、
浮きながら弱に胸を腕で寄せて見せてくる、
改めて紹介しないとだな、みんなに俺はリムリアを両腕で示して……
「サキュバスのリムリア、魔界で世話になった淫魔、サキュバスだ」
「ふふっ、『実際に抱く』こと以外の世話は全てやってあげたわよ」
「いやそんなことをわざわざ」「その分、貸しも沢山あるけど、今回のも貸しね」
と紹介していたら、
遅れてアストとナルガもやってきた。
「リムリアありがとう、作戦通りね」
「上手く行ったさね、魔王をこっちまで追い込んでくれて感謝だよ」
「みんなの協力があってこそよ、こっちでかなり弱めて貰ったから」
えっ、あれで弱めた? ……作戦?!
「これがラスロの言っていた、残してきた人間ね、増えてなーい?」
「厳密には今、ふたり居なくて四人増えている」「まあ、どうでもいいわ」
「あのリムリアさん、ラスロ様の正妻、ミオスです」「ちっこいわね」「リムリアがでかすぎるだけだろう」
みるみるうちに縮んで、
普通の人型サイズとなるリムリア、
もちろん格好はサキュバスのままだし、通常の女性より背は高いが。
「わあ、小さくなれるのですね!」「妖精サイズにもなれるわ」
「リムリアは伸縮自在なんだ」「で、ラスロ、これからどうするの?」
「再封印だ」「リムリアもお願い」「アストはいいけど、ラスロからお願いされたいわぁ」
まーた借りを作るのか。
(やはりアリナの代役は、リムリアだったかぁ)
俺は諦めるかのように、頭を下げる。
「リムリア、頼んだ」「ええ、任せて頂戴、ふふ」
ということで、
改めての大封印結界魔法だ。




