第152話 魔物による大宴会 なんでこんなにおもてなしをされているんだよ。
(なんだなんだ、なんなんだこの魔力が吸い取られそうな踊りは……)
ラグラジュ大森林の水上屋敷で歓迎の宴、
ドリアード達が集団で謎の踊りを踊る、奇妙で奇怪でちょっと怖いその踊りは、
ポクポクと樹を叩く音のリズムによりまるで魔物が状態異常魔法を使っているようだ。
(いやこんな行動、魔界では見た事なかったぞ……)
おそらくだが人間界での宴、
そういったものを見て参考にしたのかも知れない、
あとエルフ達の崇める『妖精の遣い』がコイツらなら、逆に儀式とかで見せられている可能性もある。
(女性エルフの妖艶な踊りならまだしも、コイツらのはなあ……)
そして運ばれてくる料理、
魔界でも喰わされたような昆虫料理はさすがに無いな、
このあたりは騎士団員と相談してくれたのだろう、うん、普通だ。
(魚は川魚系だけどな)
肉はこれは熊か、
わかり易いように切断した手が置いてある、
あと木の実に蜂蜜がかけてあったり細かいなあ。
(魔界では料理の贅沢なんて言えなかったしな)
などと思っていたらドリアードダンスが終わった。
「さあ、次は私よ」
「えっ、アストが?!」
「まあそう言えるわね、この子たちよ」
そう言ってアストから出てきたのは、
大量の種、種、種そして芽が生えてきて、
ひょこひょこ動いて整列した、百個以上あるぞコレ。
「アッソーレ!」
ドリアードがまた幹を叩いてポクポクとリズムを取ると、
一斉に動いて揃った動きを見せる、これダンスなのか一応、
綺麗に揃って面白い、ウェーブまでしている、これ立派な踊りだ。
(よくもまあ、こんなことを)
にこにこのアスト、
ってこれアストが操っているんだよな?
綺麗にコミカルな動きを……確かに面白い。
(俺を喜ばせるために、やってくれているのか)
ドリアードといいアストといい、
俺に気を使っているのはやはり婚姻のためか、
そんなにも俺のことを……ある意味、必死と言えなくもない。
(魔物なりに、人間の俺に対し考えてくれている)
そもそも『話を詰める』ていう行為自体が大譲渡だ、
魔物なら力ずくで奪い取ろうとする、でもそれだと何も得られない、
ならばとこうやって色々と手を尽くし、そして俺自体にも……なんだか申し訳ない気も。
(おお、種が縦に並び始めた!)
そして最上部が俺に頭を下げてコンニチワ、と……
いやこれコンパクトだが金が取れるぞ、大人数向きじゃないが……
こうして一通り、色んな揃えた動きを見せ終わった後、種の芽が一斉に礼をして終わった。
ぱちぱちぱちぱちぱち……
騎士団組が一斉に拍手、
仕込まれているなあ、新旧ハーレムも、
ここは俺もしておこう、そしてアストへと戻る種たち。
(次はナルガか? いや、まだ外で何か喰っているな)
足が八本の巨大な何か、
いや、足が少しフサフサな所を見ると……
ちょっとグロいから見るのはやめて、次は人間の女性だ。
(ロズリの騎士団仲間、ふたりが並んで礼をした)
それぞれ丸い金属の輪っかを持っている。
「バルバラです!」「アントネラです!」
「ドリアードさんに教えて貰った曲芸をします」
「剣の先で、この輪っかを回転させます、そーれっ!!」
おうおうおう、
回ってる回ってる、
器用な……ジャンプまでさせて、凄いな。
(これ、彼女達の背中にツタつか付いてないよな?)
寄生されてるとか操られているとか、
そういうのが無ければ良いが、おお輪っかを空中で交換した!
いやドリアードどうやって教えたんだよ、騎士団員も何やらされているんだか。
(まあいいや、彼女達も騎士団の忘年会で披露するといいさ)
と終わった所でデザートをいただき、
宴会は終了したのだった、ええって俺たち、
なんで魔物におもてなしされているんだっけ???
「ふう、お腹いっぱいさね」
「あっナルガ、もう宴会終わったぞ」
「それより食事が大切さね、一本喰うかい?」
フサフサの長くでかい脚が一本残ってて持って来た。
「いやスパイダー系は勘弁」
「ラスロ、これからお風呂よ」
「こっちのかアスト」「さあ、行きましょう」
と言われて連れ出されたのは、
この魔物木造村で今居た屋敷の次に大きいであろうコテージだ、
なんだか天井の穴から湯気がもうもうと出ている、ということはだな……
「私達はこっちよ」
強制的に連れて行かれた中は……!!
(でけえ! おそらく今まで見た中で一番でっけえ、室内風呂だ!!)
なぜ造った、こんなものを。




