第151話 えっもう到着?! そしてここは完全にドリアードの街です。
「トウチャクダゾ」「えっもう?!」
「ラスロハサイゴ、ウエカラダ」「そうなのか」
「ホカノミンナハ、フツウニオリロ、サアサアサア」
扉が勝手に開く、
外からドリアードが開けたのか、
って下が水面なんだが、ここはいったい……?!
(うわ、でかい家が造られている)
木造建て、その玄関部分? にみんな降りる、
俺は上なんだよな、アストとナルガが待っている、
階段を駆け上がって入ると、丁度ナルガが天窓から出ていく所だった。
(尻尾が、しゅるっとね!)
そして待っていたアスト、
俺の頭上の種(芽)も回収される。
「まずは覗いてみて」
太い枝の腕で抱えられて、
天窓から外を見ると、驚くべき光景が!!
「えっ、ラグラジュ大森林が水浸しなんだが」
「ドリアードが、自分たちが住みやすいようにしたらしいわ」
「奥から水を引いたのか、そして完全に集落、いや、街になっている!!」
元の詰所みたいな基地は跡形も無い、
サイズの大きな普通の木造建築街だな、
魔物が、ドリアードが魔界へ帰ったら遺跡になるやつだ。
「ここはドリアード達が魔界との中継地点に使っているそうよ」
「ほんとだ、ドリアードが気持ち良さそうに浸かっているな、遠目でなんとなくわかる」
あの顔で気持ち良さそうだと、
それはそれで怖い、あっ、家からわらわらドリアードが出てきた、
そして家の前でこっちに向かってお辞儀、膝もとい幹まで折り曲げて。
(全部で百体は居るな)
そして相変わらず、
個体別に名前を付ける文化は無さそうだ。
あっ、ナルガがでかい焼きワニを貰って食べている!
「では降りましょう」
抱えられながら一緒に着地、
水上広場みたいになっているな、
一番大きな屋敷か、ちゃんと他の水上コテージと橋で繋がっている。
「アストサマ―」「ハハー、アストサマ」
「ムコドノモ、アストサマモ、ヨウコソイラッシャイマシタ」
「ドウゾナカデ、オクツロギクダサイ」「ワレワレハ、アストサマノタメニ」
いやほんと手懐けすぎだろう、
アストのためでなければ人間なんて普通に喰いそうだ、
正確に言えばアルラウネ族のために働いている従者種族らしい。
「じゃあラスロ、一緒に入りましょう」
「あっ、俺らが最初でないといけないのか」
「そういうことね、他の皆さんも続いてどうぞ」
ナルガはお構いなしに遅い昼食中、っと。
巨大な扉が開く、いや本当に人間の倍、いや二、五倍サイズだな、
入ると中も中でドリアードが並んでいる、あっ、あと意外なことに……!!
「勇者ラスロ様、お待ちしておりました」
「王都からの、衛兵?」「はい、我々も駐在を」
五人も普通の人間が、
おそらく移動交代はドリアードに乗っかってだな。
「カンゲイノセキヲ、モウケマシタ」
「アストサマノタメニ、ムコサマノタメニ」
「ノコリハツイデダ、アリガタクオモエヨナ」
あんまりな言い方だが、やさしい。
「さ、ラスロ一緒に」「お、おう」
なんだか新郎新婦入場みたいだぞ?!
(旧ハーレム、新ハーレムがやったからってアストも事実上の、婚姻の宴を……?!)
魔物が人間に張り合って、どうする。
これが他の、リムリアとカミラも揃っていたら別だが……
中に入るといきなり豪華料理が並べられていた、そして奥に巨大椅子がひとつ。
「あっ、これは」「そうよ、ラスロは私の膝の上よ」
いや、アスト自体が椅子か。
(喰ってる間に、取り込まれそうで、怖い)
昼飯抜きで走っていたのは、このためかぁ。
「ラスロ様!」「ミオス問題ない」
ちょっと心配気味の新旧ハーレムで来ている六人、
と、ロズリの方へふたりの女性が近づいて行った、もちろん人間。
「お久しぶり!」「こんな所で会えるなんて」
「バルバラ! アントネラ! どうしてここに?!」
「騎士団からの派遣よ」「大森林で宴、その人間用の要員ですって」
元騎士団の仲間か、
戦闘服じゃなく室内服だから、
ある意味、メイドみたいに借りだされたのだろう。
(俺の方へも来た)
そして頭を下げられる。
「勇者ラスロ様」「このように身近でお手伝い出来、光栄です」
「お、おう、なんだかすまないな、なんていうか、こんな宴で」
「よく指導していただいていますよ」「口は悪いですが、まあ仕方ありませんし」
ちょっと苦笑い、まあいいか。
「サア、ウタゲノハジマリダゾー!!」
そして謎に盛り上がるドリアード達、
まあいいや、とりあえずは好きにさせよう、
アストもすんごい笑顔だしな、腹も減ったし!!




