第144話 旧ハレーム それぞれの想いを再確認する
「ラスロ、今からはオリジナルメンバーで会議です」
「おう、そういう言い方をするか」「純正の勇者パーティーですね」
十二年前に崩壊した、
俺のハーレムパーティー……
それが改めて再結成してしまった。
「それでラスロ、どの話からする?」
「どのって魔物だろう」「どっちの?」
「あっそうか、いやもちろんラグラジュ大森林の方だ」
アスト達への対処も話し合うのか、
ちなみに頭上の種(芽)にはお帰りいただいた、
器用にひょこひょこと弾みながら、どこかへと消えて行ったな。
(この来賓室のどこかに潜んでないと良いが)
例によってアリナとネリィがチェックをしてくれたが。
「ではラスロ」「おう」「進行を」
「……あっそうか、俺がリーダーだった」
「しっかりして、私達の旦那様でもあるんだから」
まあ旦那になるかどうかは置いといて、
すっかり会議の進行はアリナ任せにしてたな、
魔法での封印がメインだから、まあ仕方が無い。
(俺にそんな、複雑な結界式がわかるはずもなく)
では改めて……
「大森林の再封印だが、アリナ、やはり魔界ゲートそのものを見たいか」
「はい、現物を見て、どのように魔界から繋げて、どう拡げたのかを見てみたいですね」
「中心部まで行けなかった場合、封印の上書きは」「難しいですね、新旧の封印は一緒にすると反発しあうので」
……なんとなく、
新旧ハーレムが反発しあっている、
という風に聞こえてしまった、まあ合ってるか。
「そうなるとやはり、ドリアードに頼むしかないか」
「せっかく来ているのですから、使える物は使ってしまいましょう」
「魔物だけにな」「それでラスロ、封印が完成したらドリアードとかの始末はどうするんだ」
それな。
「どうすると言ってもヨラン、封印と同時にあっちへ行ってくれれば」
「ラスロも一緒とかでない限り、無理だろう」「そこをなんとか」「私に言われても」
「エミリはどう思う」「ラスロが上手く騙す事が出来れば」「具体的には」「考えましょう」
まあ、いままで騙してきたようなものだし、今更なあ。
「ネリィは」「殺ってしまいましょオゥ」
「いやいや、そもそもネリィの魔法で勝てるのか」
「いざとなったら、命に代えましてもォォォ」「いや命は無駄にするな」
その言葉に反応したのは聖女アリナだ。
「正直、ラスロのためなら皆、私もヨランもエミリもネリィも、
命を張る覚悟、それこそ魔物と刺し違えてもラスロ様をお守りしたいのです」
……もしそうなったら、
相討ちなら残った新ハーレムといちゃいちゃできるな、
などと考えていないでだな、この際だ、改めて全員に聞こう。
「アリナ、俺の指示に従ってくれるか」「はい、もちろん」
「ヨラン、俺の指示に従ってくれるか」「喜んで、大歓迎だ」
「エミリ、俺の」「言う通りにするわ」「ネリィ、お」「何でも指示に従いますよおおおォォォ」
なんだか怖いくらいだ。
(だがこれで、『俺と結婚しない』という命令も出せる訳か)
しかしなあ……。
「ラスロ、良い機会だから改めて、ラスロが死んだと思って修道院に籠ってごめんなさい」
「私も自暴自棄になって侯爵家へ嫁いでしまった、すまない」「エルフに騙されたの、ごめんね」
「ネリィは、ラスロサマが謝れとおっしゃられるなら、いくらでも土下座しますよよよョョョ……」
裏切りの謝罪か、
いや、結果的に裏切りになったと言えるだけで、
取った行動は間違いとは……結果的に間違いだったけれども。
「よし、じゃあ命令だ、前にも言ったが『平和最優先』これでいこう」
「「「「はいっっっっ」」」」
これで時間を稼いで、
その間に全ての解決法が出れば良いのだが。
「ラスロ、愛してる、誤解や勘違いはあったにせよ、
十二年間ずっとラスロに祈っていたもの、きっと私の気持ちは通じるわ」「アリナ……」
アリナが目を潤ませて訴えかけてきた、続いてヨランも。
「なあラスロ、私の間違った十二年を、上書きしてくれないか」
「塗りつぶすのか」「ああ、私もラスロの魔界での十二年分も足して愛そう」「ヨラン……」
さらにエミリも。
「ラスロ、私はもうラスロ無しでは生きていけないわ、
この先、ずっと一生、ラスロを抱きしめる人生を歩みたいの、
もちろんラスロとの子供を授かったら、共に手を取り合って」「エミリ……」
最後にネリィが。
「ネリィはラスロサマに初めてお会いした時から、
たった今までずっと、ずーーーーーっとお慕い申しておりますゥ、
途中ちょっと記憶がありませんがァ、お気になさらずゥゥゥ」「おいネリィ」
まあ四人の、
改めての俺への想いは再確認できた。
「わかった、気持ちはわかった」
「ではラスロ、完璧な封印目指して、頑張りましょう」
「いざとなったら一緒に魔界だ」「どこでも抱きしめてあげる」「ラスロサマラスロサマラスロサマラスロサマ……」
みんな、十二年前と同じ気持ちに戻っているようだ、
しかし着実に、確実に十二年の歳月は経っているし、
それに、その間の過ちさえ無ければ……俺は、俺は旧ハーレムを……
(許せるの、か?!)
その答えは、
遅かれ早かれ出さなくては、ならない。




