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ハーレム崩壊、十二年後  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第一章 伝説の女剣士のやり直し 錆びついた剣と言われても愛で研ぎ澄ますのみ!

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第15話 そして俺は苦悩する 全力で戻ってきた旧ハーレムと希望に満ち溢れた新ハーレムの狭間で

(いや本当に、これ、どうするんだよ……)


 静かになった特別祈祷室、

 俺は頭を抱えながら情報を整理する。


「……まさか、みんな『待っていなかった』うえで、戻ってくるなんて」


 思わず声に出てしまった、

 普通、寝取られたんなら、いやアリナは違うか、

 でも考え方によっては修道院に寝取られていたようなものとも、言えなくは、ない。


(普通は寝取られたら、それで終わりだよな……)


 やはりこの場合は、

 寝取られた原因、理由が、

 あくまでも『俺が死んだ』という事実によるものだったからだ。


(それで慌てて戻ってくる、って、強引にも程がある)


 確かに俺が死んでいたら、

 本当に死んでいたら他の男と幸せになってしかるべきだ、

 彼女達もそれを思って、俺がそう考えると思って、それは、正しい。


(そのために、アリナはひとり、ある意味で犠牲になったんだよな)


 正妻としての義務、けじめ、

 そして死んだ俺の責任、いや、俺が死んだ、

 死なせてしまったという事実の、責任として……


「でも、俺は生きていた」


 しかも十二年間、

 みんなが待っていると信じて……!!

 もういっそ、俺は戻って来なかった方が良かったんじゃないか?


(さすがにそれは、違うか)


 それだと話が全然違うし、

 自殺しようとしたヨランと同じじゃないか、

 みんな、みんな正しい事をした、でもそれが間違いだっただけ……!!


「かといって、簡単に戻れは、いや、戻せはしないよな……」


 アリナに関しては教会を納得させれば良いだけ、

 いや、解決してきたようにはとても思えないんだけれども、

 問題は十二年間、新しい家庭を築き、幸せになっていたであろう残りの三人だ。


(まだヨランの話しか、詳しくは聞いていないけれども……)


 別に当然ながら、

 もし『が生きていたらそこへ戻る、なんて前提条件を出しているはずもない、

 なにより俺のことを完全に死んだと思っていたのだから。


「俺が戻って来たせいで、滅茶苦茶にしたって事なのかぁ……???」


 コン、コンッ


「あっはい」「失礼致しますよ」


 と、入ってきたのは聖女ハンナさんだった。


「すみません、もう出た方が良いですか?」

「いえ、皆さんはもう先に、宿へ帰られましたよ」

「そうですか……」「気持ち整理がつくまで、ただし夜明かしは許しません」


 さすが聖女様、

 泊まるなと言われてじゃあ朝までここで考えています、

 という姑息な手は使わせて貰えないようだ。


「ごめんなさい、まだアリナ達の方だけ考えていて」

「こんな隠居聖女でも、何か勇者様のお役に立てますでしょうか」

「では……俺が、いえ私が、魔界から脱出して今日までの話を……聞いていただけますか」


 とまあ前回会った時の事もあるので、

 正直に全てを話した、お水を飲みながら……

 まるで懺悔を聞くかのように、熱心に耳を傾けてくれたハンナさん。


「……ということで、旧ハーレムと新ハーレム、

 魔界との俺がこじ開けた穴を塞ぐために、まとめて連れて来た訳で、

 その間に彼女達の処遇をどうするか、考えようと思っています、いえ、今、考えております」


 話が終わり、

 ハンナさんも自分で持って来たカップでお水を飲んでため息をついた。


「……私の意見、よろしいですか?」「はい、お願いします」

「まず、陛下は恨んではいけませんよ、全てにおいて最善の処置をしてくれたのですから」

「そ、そうですねまあ、そう言われれば」「この結果は意外だったでしょうが」


 陛下はまず帰って来た俺にハーレムが崩壊した事を告げ、

 ショックを受けない、いや、和らげるために新しいハーレムを至急に用意してくれた、

 ひとり厄介払いのアサシンが居る気もするが、みんな本気で俺を愛してくれようとしている。


(そして、旧ハーレムにも連絡を……)


 生きている事、

 戻って来たという事を、

 できうる限りの最速で、遣いを出してくれた、そう、迎えも同時に。


(それが再結成されるとは、やはり予想外だったんだろうなぁ)


 何せ正妻は心身を修道院に捧げ、

 側室は結婚して子を儲けていたのだから。


「えっと、じゃあ、では」

「もっと言えば、悪い人はひとりも居ませんよ」

「はあ、ま、まあ、そうですよね」「悪いのは魔王です、皆、その被害者です」


 そう考えれば良いのか、

 まるで説法みたいだな、さすが聖女様。


「なら、どうすれば」

「一番頑張ったのは勇者様です、その勇者様には選ぶ権利があります」

「つまり」「勇者様のなさりたいようにする、それが正しい答えとなりましょう」


 俺次第、か。


「でも、俺だって、私だって間違える事も」

「魔王を倒して平和に導いた勇者様です、その間違いを誰が(とが)められましょう」

「しかし」「さあ、最初の選択をするのです、いくらでも選び直しはできますよ?」


 出ることを促されてしまった。


「……ハンナ様、ありがとうございます、でも、どう選べば」

「本当に、ご自分のなさりたい事を、なさりたいように」

「はい……」「教会に泊まるのは私が許しませんがね、さあ」


 とにかく今夜は、

 無理くりにしても選べと言う事らしい。


(そう言われても、なぁ……)


 シスター達と一緒にわざわざお見送りをしてくれた聖女様、

 追い出された気がしないでもないが、俺はあきらめて宿へ向かった。


「……どっちを選ぶか、俺のしたい方が、答え……」


 旧ハーレムの部屋に戻っても、

 時間が十二年前に戻る訳では無い。


(かといって……)


 新ハーレムの部屋に戻って、

 そこで新たな関係を構築し始めるという、

 一歩を本気で踏み出しても良いものなのだろうか?


(俺の結論は……これだ!!)


 ゆっくり、ゆっくりと俺は宿の裏手にまわり、

 宿から出されたであろう弁当を食べ終わって馬車の中で眠る、

 運転手である騎士団員の男性、ダンジュの後ろの列(座席)に潜り込む。


(俺は、今はどっちも選ばない、うん、これで行こう)


 あくまでも今、やるべき事は魔物退治、

 魔物が出て来る通り道封じだ、それが最優先、

 今はそれに集中するため、あえてどっちとか選ばずさっさと休もう。


(って宿で風呂くらい借りれば良かったか、まあいいや)


 ダンジュも入ってないみたいだし、

 ここは男同士つきあおう……変な意味じゃないぞ!

 と、こうして俺は四人並んで座れる椅子に、横になって眠るのであった。


(あ、新旧ハーレム、それぞれが『あっちの部屋へ行った』と思っちゃうな)


 まあいいや、みんなおやすみ……。

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