第143話 出発は明日! 今日はお城で全体的な打ち合わせ、しかし昨日聞いた話が気になって……
「ということで再封印の準備は出来ましたが、やはりゲートを直接見て……」
王城の大会議室で最終打ち合わせ、
新旧ハーレムと俺を含めた九人の倍以上はお城側も居る、
エルフも混じっているから例のマザーツリー修復も話されるのだろう。
(進行はアリナに任せて、俺はだな……)
たまに俺の頭上の種(芽)を愛でながら、
話を真剣に聞いている風にしながらも考える、
昨夜、新ハーレムから聞かされた、まさかの提案を。
(凄い『ざまぁ』だよな、婚姻を結んでおいて、更に十二年間も会わないって)
そう、『今度こそ改めて、本当に十二年待たせよう作戦』だ。
『新しい住居を別で貰い、そこにアリナさん達を住まわせ、会いに行くのは十二年後です!』
待ってくれなかった罰? として、
次に会うのは十二年後と宣言するのも良いらしい、
そうやって改めて、ちゃんと、きちんと十二年待つ事が出来たら許して良い、なのだとか。
(その時は俺も四十八歳だぞ……)
相手も、旧ハーレムも年齢的に厳しいだろう、
もう子を孕めない身体になったネリィを除いて……
でも、でも本当に俺の事を愛しているなら、更にもう十二年待つ事が出来るはず、だと。
(ミオス達の狙いは、その十二年で俺との関係を強固なものにしたいのだろうな)
何せアリナ達とは十二年前に絆があった、
その点、新ハーレムとは事実上、最近始まったばかり、
ふたりは面識あったがふたりは初対面だ、その彼女達にアドバンテージを……
「森林を進むのは私が先頭で行こう、何も問題は無い」
勇ましい振る舞いのヨラン、
十二年間、自分を殺して侯爵夫人をしていた彼女に、
ここから更にもう十二年待てと言われて、耐えられるかどうか。
(まあ今度は会えない訳じゃない、死んではいないのだから)
だがグレナダ公爵家なり新しい住居なりで、
新ハーレムが俺をしっかり管理してある意味、
閉じ込めてしまえば、そう簡単には会えないことになるな、もちろん俺の意思があってのことだが。
「封印のある最深部へ進めないようでしたら、私の弓矢で再封印の光魔石を……」
エミリもエミリでもうエルフの夫とは離縁の流れ、
十二年間、子育てに専念して欲しいと言ったらどうなるか、
またエルフの森へひとり、いや母子逆戻りで十二年、耐えられるかどうか。
(それだけの罪を犯した、ということに……なるのか?!)
おそらくそのあたりの判断は俺だ、
俺が『寝取られた罪をエミリが償うべき』と思えばそれもアリ、
だが俺が許したい、また戻ってきたエミリと幸せになりたいと思えば……!!
「今回の封印は現時点で完璧ですがぁ、その張った様子を見て、更に改良をですねぇ」
真面目モードのネリィ、
こっちもこっちで十二年間、
きっちり子育てを完璧にするっていう条件なら……
(前の結婚生活を考えれば、会うのは十日に一度の夜に少しだけ、で済みそうだ)
そういや昨夜、ハミィも言いたい放題だったな、
ヤンデレおばさん必死すぎ、とか、この場合の『おばさん』は、
叔母ではなく普通の『おばさん』らしい、まあ確かに十二年前の可愛さは無いが、問題はそこじゃない。
「……ということでラスロ様、よろしいですね?」「えっ」
アリナが俺をラスロではなく『ラスロ様』呼びする真面目な会議、
まったく聞いていなかったからもう一度、とは言えないよなあ王城の幹部(大臣)も居るし、
ここは……よし、おそらく真面目にきちんと見て聞いていたであろう、頭上に投げようっと。
「アスト、構わないな?」
動きからして芽がコクコク頷いているっぽい、直接は見えないが。
「では今回の作戦はこれで決まりです、では後は……」
「エルフの森の件だが」「はい外務大臣さま、そのあたりはアスト様とすでに」
「話はついているのか!」「あくまでも再封印の帰りに、ということでお待ち頂いて下さい」
えっ、俺は聞いてないぞ?!
いやまあ頼もうとは思ってはいたが、
知らない間に知らない所でアスト達と話はついていたのか。
(俺が命令すれば、って話だったと思うが)
このあたり、変に嫉妬みたいなことになると、
ややこしいうえにアストがぐいぐい来そうだから、
そっとしておくか……まあ何も悪いわけじゃないし。
(むしろ、気を使ってくれた、まである)
ということでお開きの流れか。
「それでは解散という事でよろしいですね、
明日の出発に備えてそれぞれ準備と英気を養ってください、
ラスロ様は私達と一緒に」「お、おう、いや、わ、わかった」
順番的には王城だもんな、
旧ハーレムと過ごすっていう……
さて、明日までの貴重な時間、どうしようか。
(新ハーレムの言っていた『ざまぁ』するかどうかも、見極めるために……)
ちょっと旧ハーレムの四人、
それぞれと改めて、会話でもするか。




