第141話 出発に備えて グレナダ家で内祝い、何のかと思ったら……!!
「さあ、我がグレナダ公爵家に勇者の血を引きいれた事を誇りに、乾杯!!」
アスト城から明けて解放された新ハーレムのアジト、
グレナダ公爵家で昼前からパーティーとかいうので、
何事かと思ったら婚約の、いやこれ事実上結婚の内祝いだ。
(封印の打ち合わせは、王城で朝にちらっとやったらしい)
俺は昨夜の、夢の中での特訓で疲れて、
昼過ぎまで眠っておきたかったがわざわざハミィが迎えに来てくれた、
ネリィの子の様子を定期的に見に来ているのもあるらしいが目的は俺の回収で助かったが。
「ラスロ様、ぼーっとしてらして、いかがなさいました?」
「い、いやミオス、こういう正装はやはり慣れなくてだな、とりあえず酒をいただこう」
「ふふ、昔のハーレムが戻って来ようと、魔物が味方になろうと、ラスロ様の正妻はこの私、ミオスですから」
その会話を聞いてウンウン頷く公爵家ご当主夫妻。
「ラスロ殿、今回の件が落ち着いたら、子供の方を期待しているぞ」
「もうすでに、女の子が生まれた時の婚約相手が、申し込みが殺到しているわ」
「そ、そうですか」「頑張ってくれたまえよ」「むちろん男の子も期待しているわ、おほほほほ」
まだ見ぬ孫を、もう勘定しているのか……
確かに最初、本線として新ハーレムを選ぶ可能性が大きかったが、
このように囲われるとなあ……まだ俺の中で確定している訳では無いのだが。
(やはりこのあたりは公爵家、しっかりしている)
まあ陛下から直々の正妻指名だったものな、
旧ハーレムのアリナもそんな感じだった気もするが、
最新の正妻認定は間違いなくミオスだ、後はまあ、俺次第。
「失礼、ラスロ様」「ロズリ、そのおふたりは」「私の父と母です」
うっわ、いかにも騎士団上がりなお父様、
あとお母様は普通な感じだけど、ふっくらしている。
「ラスロ様、ごぶさたしております」「ええっと」
「十五年前にお会いしております、元副団長のザライです」
「うおっと……ああ、あのザライか、あの幅の広い剣の!」
そこそこ思い出した。
「娘をよろしくお願いします、ラスロ様に憧れて生きてきた娘です」
「あっはい、俺でどこまで期待に応えられるか、わかりませんが、まあ」
「大丈夫です、しっかり育てました、ラスロを必ず幸せにしてみせましょう」
……俺がロズリを幸せにしてやってくれ、ではなく、
ロズリが俺を幸せにしてくれるのか、これはもう逃がす気ないな、
お母様もロズリも笑顔だ、もうすっかり側室確定って感じで俺の胸が少し痛む。
(うかつに確定の返事は出せないな)
魔界での、元の世界に窓るために必死な俺が、
その場しのぎに魔物とした約束とは訳が違う。
……まあそれはそれでツケを払うことにはなるのだが。
「ラスロ様」「おう、今度はナタリか」
「私の師匠です」「あっ、見た事あるかも」
「ですな、十九年前にお会いしております、ナタリは私の娘のようなもの、頼みますぞ」
昔も爺さんだった気がするが、
今も爺さんだ、この年齢だと十九年経っても変わらねえ、
まあこのあたり、俺の記憶の曖昧さもあるな魔界に居たし。
(そもそも、どこで何のために会ったか記憶に無い)
深く考えたら思い出せそうだが、まあいいや。
「ラスロお兄様」「ハミィ、その魔女さんはさすがにわかる」
「お久しぶりね」「あっはい、これはこれはサティさん、御無沙汰しております」
「妹が、ネリィが迷惑をかけてごめんね」「ま、まあ魔力は確かですから」「今度は娘をよろしく」
正式にお願いされちゃった、
まあヤンデレの妹より実の娘か、
サティさんの方でも完全に切り替えちゃったんだな。
(旦那さんは忙しいらしいです)
いやまあネリィの夫みたいな事は無かったはず、
面識あるし正式な結婚式は絶対来るって伝言貰ったし。
「あっそういえば一時的にネリィの子供を半分預かってくれて」
「数日なら平気だったわ、もういいんでしょう?」「ええっと、まあ」
「だったらこっちも感謝よ、本当はネリィが、あの子、興味無くすと本当に放置だから」
実の子でそれは無いよな、うん。
とか話していたら改めてミオスのお父さん、
グレナダ公爵家ご当主が僕の方へやってきた。
「では勇者殿、改めて皆に、ひとこと貰えるかな?」
あっこれ、
多分この場で確定させたいんだろうな、
俺の選ぶハーレムは、ここに集まった四人だと。
(やはりここは……誤魔化すか)
皆に宣言する。
「魔界から現れ始めようとする新たな魔物、
それを全て封印して、王都に居るごく一部の味方以外は、
完全に打ち滅ぼして、この国を平和にします、ミオス、ロズリ、ナタリ、そしてハミィと共に!!」
盛り上がる会場内、
うん、嘘はついていないぞ!
後は……用意されている、今夜のベッドでその四人を相手に、どうするかだ。




