第139話 そしてナルガとも話を詰める こうなると残りも、となるが本人がいや本魔物が居ないとな!
今日は順番でいって王都の湖ほとりにあるアスト城に泊まる日、
いつのまにか連れて来られていた俺はネリィの子供達との朝食後、
一階の奥にある、まるで『魔王の間』みたいな場所でアストに詰められた。
(そしてある程度、詰め終わって話が一旦終わったと思ったら……)
今度は続いてナルガである。
「ラスロ、それでもう済ませたんだろうねえ?」
「それなんだがなあ、事情が変わった、ハーレムがふたつ、ふたグループになった」
「関係ないさね、約束したはずだよ『初めては残してきた人間と、それが済んだらアタシと子作りする』ってね」
そうだ、ナルガにとって孕む一番相性が良いのが人間、
魔界では俺しか居なかったから事実上、俺だけの仕事となる。
(前も聞いた気がするが、一応確認のため……)
怒られても良いや。
「俺以外の男と、俺以外の人間と」「尻尾でぶつよ?」
「やめてくれ、首が持っていかれる」「アタシは全部、持って帰りたいね」
「まあラミアにはオスが居ないからな」「それでラスロはいつ済ませるんだい?」
……当時、少なくとも魔界では、
誰ともやりさえしなければ逃げ切れると思った、
でもこうして、ある意味いつでも約束を守れる状況となると……
(上手く話して誤魔化そう)
今度はアストがにやにやしていやがる、
ドリアードは……半分くらいどっか行ったな、
アストの件が終われば満足なのか、やはりアルラウネの従者一族だ。
「正直言って、旧ハーレムと新ハーレム、どちらを選ぶか迷っている、
揺れ動いていて葛藤していて、本気でどっちを選んだら良いのか、俺は」
「どうでもいいから早くお決めなさいな、アタシはもう待ちくたびれたわ」
ここで真面目に、
真剣に新旧ハーレムどっちか聞いた所で、
答えは出ないっていうかむしろナルガに決めて欲しくは無い。
「……今更だが、ナルガは子供さえ出来ればそれで良いのか?」
「最低限ね、もちろん本格的に、つがいになるなら大歓迎さね」
「そこまで情念は無いと」「無い訳ないわ、ただカミラを思うと」「それな」
このあたりの説明は、
今は置いといてくれ、って誰にだ。
「魔界でも何度か言ったが人間はデリケートなんだ、
その気になるにも時と場合と気分が」「でもリムリアは」「夢魔は反則だろう」
「アタシが『その気』を今日まで待ってたんだよ」「もうちょっとだけ頼む、逃げはしない」
逃げられもしないだろうし、もう。
「仕方ないさね、アタシは一旦それで良いわ」「ほっ」
「ただ……リムリアやカミラはどうさね」「それはやはり本人いや本魔が居ないと」
「そういえば前に魔界でラスロが死にかけた後、悪夢を見ないようリムリアがさねえ」「もういいな」
それ以上はいけない。
「その気はあるんだね?」「もちろん」
まあナルガの身体はサイズ的な心配は別にしろ、
そういう気がまったく起きない訳でもない、むしろ……
もちろん上半身は人間だし、舌が極端に長いけれどもだな。
(実はあれは隠し玉、第四の剣になるのは秘密だ)
両腕両足そして尻尾と、
三つの剣が防がれて敵に万事休すと思わせて、
鋭い剣にも槍にもなるあの舌、もちろんやわらかくもなるが、というか通常はやわらかい、はず。
「確認が出来て良かったさね」
「よし、ナルガとも話を詰めた」
「今回の所はそれで良しとするとしてだね」「次回はまあ」「帰りさね」
早っ!
アリナ達と再度、打ち合わせしないとな。
「真面目な話さね、本当に『受け』だけで良いのかい?」
「というと、やはり新しい魔王は」「このままだと続々だねえ」
「つまり、魔界に打って出ろと」「その方が、話が早いかも知れないわね」
ドリアードを見る俺、
あいつらは大森林経由で、
魔界のドリアードと定期的に入れ替わっているからな。
「タシカニ、カッパツカシテイルナ」
「対処はしてくれているのか」「アア、フウインハキイテイルガ」
「犠牲者とかは」「オレタチニハマダナイ、タダ、ラスロノゲートミタイニ、オシキラレルカモナ」
元々、最初に俺がこっちへ出てきた魔界ゲートか、
アスト達に塞いで貰うはずだった、それが新魔王候補のせいで……
ふとアストを見ると、なぜか微笑んでいる、そして声をかけてきた。
「やさしいのねラスロ」「えっ」
「ドリアード達の心配をしてくれて」
「まあな、沢山居ても、やはり一体でも欠けると心が痛む」
本当はドリアードがやられれば、
それだけヤバい敵が、新魔王が誕生したって事になる、
心配しているのはそこなんだが、もちろんドリアードの心配は少しはあるぞ。
(ほんのちょこっとな、まあ大丈夫だろう)
ネリィの子供達の恩もあるし、
って感謝すべきはネリィからなんだが、
ちゃんとドリアード達に礼を言ってたっけ???
「じゃあラスロ、今夜はわかっているわね?」
「まあ、また挟まれて眠るのか……あっ、ということは」
「リムリアも来るさね、夢の中だけどね、それでも話は詰められるさ」
これもこれで、
覚悟をしておかないとな。
「それでラスロ、この後どうするの?」
「えっとだな、確か予定は」「私との模擬戦よ」
「あっそうか、アリナ達は忙しそうだから」「自分で言っておいて何よ」
一対一で勝てる訳ないだろう……
仕方ない、呼べるのを呼んでみて、
やるだけやってみよう、良い経験にもなるはずだ。




